サイエンス

惑星以外の宇宙空間で生命を見つけることは可能なのか?


宇宙の中で生命が確認されているのは地球のみなので、生命探査の取り組みは地球のようなハビタブルゾーンに位置する惑星を探すことに偏っていますが、もしそれ以外の場所でも生命が存在できるのであれば、地球外生命体の可能性は一気に広がります。アメリカとスコットランドの天文学者が、生命を育むことができる惑星以外の宇宙環境について検証した論文を発表しました。

Self-Sustaining Living Habitats in Extraterrestrial Environments | Astrobiology
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/ast.2024.0080

Does Life Really Need Planets? Maybe Not - Universe Today
https://www.universetoday.com/170063/does-life-really-need-planets-maybe-not/

ハーバード大学の惑星科学者であるロビン・ワーズワース教授と、エディンバラ大学の宇宙生物学のチャールズ・コッケル教授は、2024年12月16日に学術誌・Astrobiologyで発表した論文で、惑星以外に生命が存続するのに必要な条件がそろうことがあるかどうか検討しました。

地球上で生命が生きられるのは、「液体の水」と厚い大気による「有害な放射線からの保護」があるからです。また、水が凍ったり蒸発したりしない状態を保つには適切な「温度と気圧」が必要です。


これらの条件がそろう場所を惑星や衛星以外で見つけることは困難ですが、生命が自らその環境を宇宙に作り出せる可能性は十分あると、ワーズワース氏らは考えています。

例えば、国際宇宙ステーション(ISS)で行われているたんぽぽ計画では、細菌が保護層を形成して長期にわたって生き延びたことが確認され、地球の生命が宇宙を起源とするというパンスペルミア説の可能性が大きく高まりました。

微生物は宇宙空間でも長時間生存可能と判明、「生命は宇宙からやってきた」説の有力な根拠となるか - GIGAZINE


◆液体の水
宇宙に水があるかどうか考える際、科学者は三重点を検討します。

水の三重点とは、水の3つの相である水蒸気・水・氷が共存する温度と圧力のことで、具体的には「0.01℃(273.16K)の温度と611.6Paの圧力」の組み合わせです。この条件はあくまで液体の水が存在しうる最小圧力なので、温度が15~25度になれば、液体の水を保つのに必要な圧力も数kPaに上昇します。


例えば、光合成を行う細菌のシアノバクテリアは、光や温度などの条件が適当なら10kPaで成育できますが、問題は10kPaが維持できるような密閉されたスペースを生物が作り出せるかどうかです。

実はこの問題はクリア済みで、ワーズワース氏らは論文の中で「10kPa程度の内部圧力差は生物材料によって容易に維持され、事実として地球上のマクロ生物では一般的です。例えば身長が150センチの人間の頭から足までの血圧の差は約15kPaです」と指摘しました。


◆温度
次に考慮しなくてはならないのが温度です。地球では大気の温室効果によって極寒の宇宙よりも温かい環境が維持されていますが、小さな岩石でできた彗星(すいせい)では同じようにはいきません。

そこでワーズワース氏らが注目したのが、エアロゲルのような固体の断熱材です。代表的なエアロゲルには、二酸化ケイ素でできたシリカエアロゲルがあり、一部のケイ藻類は人類が工業的に使うものよりも微細なシリカ粒子を使ってシリカ構造を生成することが可能です。

「このことを考慮すると、生体原料から人工的に、さらには生物学的に高断熱材料を製造できる可能性は十分にあります」とワーズワース氏らは論文に記しました。

ワーズワース氏らの試算によると、エアロゲルのような断熱性の高い素材でできた温室を作れば、288K(約15℃)ほどの温度を維持できるとのこと。

以下はその「エアロゲル型生息地」のイメージ図で、左が球状のもの、右が採光窓があるタイプのものです。また、青色は数センチの厚さの半透明の温室材料で、灰色は厚く不透明で断熱性のある材料です。

by Wordsworth and Cockell, 2024

地球の植物の細胞が頑丈な壁を作っているように、宇宙でも生き物が生体素材でできた壁を形成して自らの生息地を確保することは決して不可能ではないと、ワーズワース氏らは考えています。

◆その他の要素
その他には、有害な放射線への対策が必要ですが、地球上の生物は紫外線の影響を抑えつつ光合成に必要な可視光線を浴びることができるよう進化してきました。また、代謝物を分解する生態系があれば、宇宙の閉ループ生態系の中で地球のような栄養循環が起きる可能性もあります。

こうした点から、ワーズワース氏らは惑星外の宇宙空間で生るために必要な条件をすべて維持できる生命は存在しうるとした上で、「宇宙での生命の進化は地球とはまったく違った道筋をたどる可能性があるので、恒星の周りを周回する従来のような居住可能惑星以外にも生物の生息地が存在する可能性があり、そこでは希少で潜在的に検出可能なバイオシグネチャーを見ることができるでしょう」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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