AIによる虚偽のフィッシング詐欺通報でゲーム配信サイト「itch.io」がダウン、公式は「ゴミみたいなAI搭載ソフト」とぶち切れ
itch.ioは、作品を購入するユーザーが支払い金額を任意に選んだり、クリエイターが柔軟に価格設定したりできる自由度の高さにより、特にインディーゲームコミュニティに人気のゲーム配信プラットフォームです。そのitch.ioが、AIを使って多数の通報を行っているサービスによってフィッシング詐欺サイトのぬれぎぬを着せられてしまい、一時サイトがアクセスできなくなっていたことがわかりました。
Bogus Complaint Disables Itch.io, Google Ignored Same Sender For Years * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/bogus-complaint-disables-itch-io-google-ignored-same-sender-for-years-241209/
Itch.io went offline due to a ‘trash AI-powered’ phishing report - The Verge
https://www.theverge.com/2024/12/9/24316882/itch-io-offline-domain-registration-funko-report
itch.ioによると、サイトがダウンしたのは大量のライセンスを保有していることで知られているおもちゃメーカー・Funkoが、AIで著作権侵害を追跡する製品を使って、itch.ioを「フィッシング詐欺サイト」として通報したからだとのこと。
itch.ioの公式X(旧Twitter)アカウントは2024年12月9日に、「冗談抜きで、itch.ioはFunkoによって削除されました。というのも、彼らがBrandShieldとかいうゴミみたいな『AI搭載』ブランド保護ソフトウェアを使い、私たちのレジストラであるIWantMyNameに偽のフィッシング報告書を作成したからです。レジストラは私たちの応答を無視し、ドメインを無効化しました」と投稿しました。
I kid you not, @itchio has been taken down by @OriginalFunko because they use some trash "AI Powered" Brand Protection Software called @BrandShieldltd that created some bogus Phishing report to our registrar, @iwantmyname, who ignored our response and just disabled the domain
— itch.io (@itchio) December 9, 2024
itch.ioの運営者であるLeafo氏は、ソーシャルニュースサイト・Hacker Newsでさらに詳細を説明しています。
Leafo氏によると、問題の発端はFunkoのおもちゃブランドである「Funko Pop!」をテーマにしたゲーム「Funko Fusion」のファンサイトだとのこと。何者かが作成したこのファンサイトには、ゲームのスクリーンショットと公式サイトへのリンクが掲載されており、これを検知したBrandShieldが自動レポートを作成したとLeafo氏は推測しています。
このような場合、一般的にはデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく削除申請が行われますが、BrandShieldはそれよりもさらに悪質な「詐欺とフィッシング」でitch.ioを通報しました。
Leafo氏は、問題発生の5~6日前にitch.ioのホストであるLinodeと、ドメイン登録会社であるIWantMyNameがレポートを転送していることを確認しています。これを受けて、itch.ioが問題とされたページを削除したため、それを確認したLinodeはケースをクローズしましたが、IWantMyNameはitch.ioの対応を無視してサイトを削除してしまいました。
この件でLeafo氏は、DMCA申請ではなくフィッシング詐欺の通報を行うことで問題をエスカレートさせようとしたBrandShieldを非難しており、「正直なところ、私は彼らこそがこの件における『悪意のある行為者』だと考えています」と、Hacker Newsへの書き込みで述べています。
一方、BrandShieldのCEOであるヨアヴ・ケレン氏はメディアへの声明で「当社は侵害を特定して報告し、itch.ioドメイン全体ではなく、問題のURLの削除を要請しました。ウェブサイトの一時的な削除は、BrandShieldではなく、サービスプロバイダーの決定によるものです」と述べて、サイトがダウンしたのはBrandShieldの責任ではなくプロバイダー側の判断の結果であると主張しました。
このいきさつを取り上げたニュースブログのTorrentFreakは、itch.ioの対応を無視したIWantMyNameに落ち度がある可能性を示唆した上で、「いずれにせよ、不正確なツールが不正確な削除メカニズムを作動させたことで、不釣り合いな結果を招いたようです」と結論付けました。
itch.ioは2024年12月10日にサイトが復旧したことを報告しました。
On This Day, We Rise Above Funko Pop
— itch.io (@itchio) December 9, 2024
The site is back up if you haven't noticed
Googleの透明性レポートによると、BrandShieldはこれまでにもGoogleに多数の削除申請を行っていますが、Googleはその大半を無視しているとのこと。
TorrentFreakは「サイトの削除が妥当であったかどうかについては結論が出ていませんが、BrandShieldが商標権侵害の疑惑に対処するためにGoogleの著作権に基づく削除メカニズムを利用しようとしたため、Googleは大半のケースで対応を拒否しているようです。これは便利ですが、商標権侵害の疑いで有効なDMCA削除申請を送ることは不可能です」と指摘しました。
なお、itch.ioは2024年12月10日に入り、運営者の母親の元にFunkoから電話が入ったことを明かしています。
This is not a joke, Funko just called my mom pic.twitter.com/P1ST7DDD2i
— itch.io (@itchio) December 9, 2024
また、FunkoはXで「Funkoはインディーズゲームやゲーマー、開発者に深い尊敬と感謝の念を抱いています。私たちはインディーゲームのファン中のファンであり、インディーゲームコミュニティを定義する創造性と情熱を愛しています。最近、当社のブランド保護パートナーの1社が、itch.ioにFunko Fusionの開発ウェブサイトを模倣したページがあることを確認し、その特定のページに対処するために削除要請がなされました。しかし、Funkoはitch.ioプラットフォームの削除は要請しておらず、今朝までにitch.ioのサイトが復旧したことをうれしく思っています。私たちはitch.ioに連絡を取り、この問題について関与しました」との声明を発表しました。
At Funko, we hold a deep respect and appreciation for indie games, indie gamers, and indie developers. We’re fans of fans, and we love the creativity and passion that define the indie gaming community.
— Funko (@OriginalFunko) December 9, 2024
Recently, one of our brand protection partners identified a page on…
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