AIはわずか2時間の対話で人間の性格をコピーできる
高度な生成AIは設計次第で「振る舞い」を変えることが可能で、人間の友達や恋人になりきって実際の人間のように振る舞うサービスもすでにいくつか誕生しています。新たに、人間と対話することでその人間になりきることができるAIが誕生しました。
[2411.10109] Generative Agent Simulations of 1,000 People
https://arxiv.org/abs/2411.10109
AI can create a reasonable facsimile of a person's personality after two-hour interview
https://techxplore.com/news/2024-11-ai-facsimile-person-personality-hour.html
Scientists teach AI to recreate human personality after a two-hour interview
https://itc.ua/en/news/scientists-teach-ai-to-recreate-human-personality-after-a-two-hour-interview/
OpenAI's GPT-4o Makes AI Clones of Real People With Surprising Ease
https://singularityhub.com/2024/11/29/openais-gpt-4o-makes-ai-clones-of-real-people-with-surprising-ease/
2024年11月、スタンフォード大学のコンピューター科学者であるマイケル・バーンスタイン氏らとGoogleのAI研究チームであるGoogle DeepMindの研究者らが、人間の態度と行動をシミュレートするアーキテクチャを設計し、対話型AIに組み込んで対話相手を模倣することに成功したと発表しました。
このAIは、人間に対して一連の質問をし、その答えを聞くことで機能します。質問はアメリカ人の日常生活を探るために作られた「American Voices Project」を参考にしており、「幼少期から大人になるまでの経験や、家族や人間関係、これまで体験した大きな出来事など、あなたの人生の物語を教えてください」「人種や人種差別、警察の活動へ注目が高まっていることについてどう反応しましたか?」など、主に社会学的に意義のある問いが投げかけられました。
また、あらかじめ設定された質問をするだけでなく、人々の反応に基づいたフォローアップの質問も行われました。このAIは1052人のアメリカ人におよそ2時間にわたるインタビューを行い、AIは対話相手の性格を分析してシミュレートし、対話相手の模擬人格を作り上げました。
これを元にバーンスタイン氏らがAIの模擬人格と元の人間の両方に同じ質問をしたところ、AIは約85%の精度で人間と同じ回答をしたそうです。
バーンスタイン氏らいわく、今回の研究の目的は「社会学研究を簡素化すること」にあるといいます。従来の社会調査では実際の人間を調査するために多大なリソースを必要としますが、実際の人間を模倣したAIを使うことで、リソースを削減した上で実際の人間では不可能な調査やシミュレーションを実行できる可能性があるとのことです。
ただし、この技術を悪用して信頼性の高いディープフェイクを作成したり、何らかの代行サービスでAIが本人になりすましたりするなど倫理的な懸念があることも指摘されています。
顧客の複製体を作成するサービス「Tavus」を運営する企業のCEOを務めるハッサン・ラザ氏は、今回の研究内容を聞いて「最大の驚きは、人間のコピーを作成するのに必要なデータが少ないということです。Tavusでは大量の電子メールやその他の情報を必要とするからです。それほど多くの情報は必要ないかもしれないということを示してくれたことが素晴らしい点です」と語りました。
サルフォード大学のリチャード・ホイットル氏は「人間に忠実なAIレプリカは、政策決定のための強力なツールとなる可能性があります。人間のグループよりもはるかに安価で手早く調査できるからです」と指摘し、今回の研究が社会調査の変革のきっかけとなることを期待しています。
バーンスタイン氏らは「この技術は人間とロボットの相互作用に革命をもたらし、感情や社会的シグナルに自然に反応するロボットを作れるようになる可能性もあります。これにより、AIが人間の生活にとって不可欠になる未来においては、生産性だけでなく感情的なつながりも強化される可能性があります」と指摘しました。
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