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中国船・伊鵬3号がバルト海の海底ケーブルを切断するために故意に160km以上も錨を引きずったと捜査当局は疑っている、ロシアの命令である可能性も


バルト海に敷設された海底ケーブルを切断した容疑でデンマーク海軍に拿捕(だほ)された中国籍の貨物船「伊鵬3号」は、故意に錨を下した状態で100マイル(約160km)を航行したと、捜査当局は疑っていることが報道により明らかになっています。

Exclusive | Chinese Ship’s Crew Suspected of Deliberately Dragging Anchor for 100 Miles to Cut Baltic Cables - WSJ
https://www.wsj.com/world/europe/chinese-ship-suspected-of-deliberately-dragging-anchor-for-100-miles-to-cut-baltic-cables-395f65d1


Investigators say a Chinese ship’s crew deliberately dragged its anchor to cut undersea data cables
https://www.engadget.com/transportation/investigators-say-a-chinese-ships-crew-deliberately-dragged-its-anchor-to-cut-undersea-data-cables-195052047.html

A Chinese ship is suspected of sabotaging undersea cables - The Verge
https://www.theverge.com/2024/11/27/24307498/chinese-ship-undersea-cables-severed-russia-baltic-seabed

捜査当局は、ロシアの肥料を積んだ全長225メートル、幅32メートルの貨物船「伊鵬3号」が、錨を下ろした状態でバルト海を100マイル航行することで、故意に2本の海底ケーブルを切断したと疑っています。


ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、捜査の焦点となっているのは2024年11月15日にロシアのバトル海沿岸にあるウスチ・ルーガ港を出港した伊鵬3号の船長が、ロシアの情報機関にそそのかされて海底ケーブル切断という破壊工作を実行したかどうかです。

ロシア主導の破壊工作であれば、今回の海底ケーブル切断も、法執行機関や情報機関の関係者が「ロシアが画策した」と主張している「ヨーロッパの重要インフラに対する一連の攻撃」の最新事例となります。


海底ケーブル切断事件に携わる匿名の上級捜査官は、「船長が船が錨を引きずり、何時間も速度を落としたまま航行し、海底ケーブルの切断にも気づかないとは考えづらいです」と語りました。

捜査に詳しい関係者によると、伊鵬3号の所有者である寧波伊鵬海運は捜査に協力しており、国際水域における伊鵬3号の停泊も許可しています。ただし、ウォール・ストリート・ジャーナルのコメント要請に同社は応えていません。

切断された海底ケーブルはスウェーデンとリトアニアを結ぶ、スウェーデン領海に敷設された「C-Lion 1」です。以下の図は(1)の青線が「伊鵬3号が錨を引きずって航行したルート」、(2)のオレンジ色線が切断された「C-Lion 1」の敷設位置、(3)が「NATO艦艇に伊鵬3号が拿捕された位置」です。


1本目の海底ケーブルを切断した時、伊鵬3号に積載された船の動きを記録する自動識別システムのトランスポンダは停止しており、海上交通の専門用語で「ダークインシデント」と呼ばれる状態に陥っていたことも明らかになりました。捜査官は衛星データなどを用いてダークインシデント時の伊鵬3号の状態を検証しており、錨を下ろしていたため航行速度は大幅に低下しているものの、同船は航行を続けています。

その後、伊鵬3号は現地時間の2024年11月18日3時頃に、ドイツとフィンランドを結ぶ海底ケーブルを切断。さらに、伊鵬3号はジグザグに航行を続けたそうです。捜査関係者によると、伊鵬3号の船体と錨を調べたところ、錨から海底を引きずった跡と、海底ケーブルを切断したことを示す損傷が確認できました。

国際海運に関するリアルタイムデータを提供する分析会社のKplerは、「穏やかな気象条件と制御可能な波の高さを考慮すると、偶発的に錨が引きずられてしまった可能性はほぼ皆無と思われます」とウォール・ストリート・ジャーナルに語っています。

捜査関係者によると、船長を含む中国人およびロシア人の船員は、記事作成時点では捜査当局による尋問を受けていないそうです。ただし、伊鵬3号がカテガット海峡に停泊する前に、デンマークの水先案内船の乗組員が短時間だけ伊鵬3号に乗り込んだ模様。


法執行機関や情報機関の関係者は、今回の事件に中国政府が関与しているとは考えていない模様。中国外務省の毛寧報道官も、「国際法に従い、国際海底ケーブルやその他のインフラの安全維持に向け、すべての国と協力することを中国は一貫して支持していることを改めて強調したい」と語り、捜査に協力すると明言しています。

一方、法執行機関や情報機関の関係者はロシアの情報機関が破壊工作の背後にいる可能性を疑っています。しかし、ロシア政府の広報担当者はウォール・ストリート・ジャーナルに対して「(ロシアの関与を疑うことは)馬鹿げた根拠のない非難です」と語り、事件への関与を否定しました。

国際海洋法では、NATOの船舶は伊鵬3号を自国の港に強制入港させることができません。そのため、スウェーデンとドイツの当局は、伊鵬3号の乗組員を尋問するために所有者である寧波伊鵬海運と交渉を進めている最中だそうです。ドイツ警察は巡視船を派遣し、水中ドローンを用いて事故現場を調査しており、スウェーデンおよびデンマークの船舶も海底の現場を調査しています。なお、複数の政治家によると、EUは国際海洋法の順守を約束しているため、慎重に行動せざるを得ない状況だそうです。

ペンシルベニア大学クラインマンエネルギー政策センターの上級研究員であるベンジャミン・L・シュミット氏によると、伊鵬3号は2019年12月から2024年3月初旬まで中国海域でのみ活動していたものの、その後突然活動パターンを変更し、ロシアの石炭やその他の貨物をヨーロッパで運び始めたそうです。ヨーロッパ以外に、日本海のナホトカなどの港に寄港したり、バレンツ海のムルマンスク港に数回航海したりしたそうです。

シュミット氏は「これだけではロシアの関与の証拠としては不十分ですが、長年中国海域のみで航行していた伊鵬3号の航行地域が、ロシアの港へと根本的に変わったことは欧州当局にとって捜査の重要要素となるはずです」と語りました。

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in メモ, Posted by logu_ii

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