乗り物

ロボットや自動運転車が周囲を把握するためのツール「LiDAR」の仕組みとは?

Source: Waymo

周囲の状況を把握するために役立つスキャンシステム「LiDAR」は、周囲の状況に応じた処理が必要となる自動運転技術を始め、自律型ロボットや周囲をスキャンする3Dアプリなどさまざまな分野に使用されています。そんなLiDARの仕組みがどうなっているのかについて、エンジニアリングが専門のヴィクラム・セカール氏が解説しました。

A Short Introduction to Automotive Lidar Technology
https://www.viksnewsletter.com/p/short-intro-to-automotive-lidar


LiDARはLight Detection And Ranging(光検出と測距)の略で、赤外線レーザー光を使って離れた物体までの距離を測定する方法です。この技術は新しいものではなく、長年にわたり植生研究や都市地形、隠された遺跡、建築物、拡張現実の画像化など多岐にわたり使われてきました。

LiDARが特に優れているのは、既存のレーダー技術よりもはるかに優れた高解像度の画像を生成できる点です。LiDARとレーダーは基本的に似たような動作をしますが、レーダーがマイクロ波(波長1cm~1m)を使用するのに対し、LiDARはレーザー光(波長380nm~750nm)を使用するという違いがあります。


LiDARは主に電磁スペクトルの赤外線領域を使用し、905nm(近赤外線)または1550nm(短波赤外線)のいずれかの波長で動作するよう設計されています。どちらを使うかはレーザー光源の出力強度や検出器の感度、同じスペクトル内の自然光や人工光源からの干渉によって決まります。特に太陽光の干渉が強いとされています。

905nmの波長は網膜に吸収されやすく、長時間の照射で損傷を引き起こすという懸念があるため、安全性には厳格な基準が設けられています。こうした波長は太陽光や車のヘッドランプなどと干渉する可能性が高いのですが、とはいえ短い波長ほど一般的に光検出器の感度が高く、光源はより強力で安価なものが使用できるため、905nm帯が好まれる傾向にあります。例えばOusterという企業は湿った環境下での視認性を向上させる特許を取得しており、太陽光の干渉が強いにもかかわらず、850nmを採用したLiDARを開発しています。

一方で1550nmの波長はいくつかの問題を軽減します。太陽放射からの干渉が少なく、この波長は角膜までしか透過しないため目を傷つける可能性が低いとされています。これはつまり、より長い時間、より大きなパワーを使用できることを意味し、より長い範囲で検出することも可能にします。波長1550nmの欠点は、水蒸気による吸収が高いため、湿った環境での使用が難しいことです。

Source: Waymo

LiDARの性能は光源に加えて検出器の精度にも左右されます。

最も一般的に使用される検出器は「アバランシェフォトダイオード(APD)」というものです。APDはシリコン、ゲルマニウム、インジウム・ガリウム・ヒ素といった素材で作られることが多く、素材ごとに波長に対する応答が異なります。例えばシリコン製のAPDは近赤外線によく反応し、安価に製造できるという特徴があり、インジウム・ガリウム・ヒ素製は短波赤外線によく反応する一方で高価です。


LiDARを使った物体距離の検出は測距(レンジング)と呼ばれ、よく使われる2つのアプローチがあります。

1つ目は「直接飛行時間法(dToF)」と呼ばれる手法で、コウモリのエコーロケーションと同じように、信号を発射してから反射した信号が返ってくるまでの時間を測定する方法です。測定可能な最大距離は送信パワーや検出器の感度によって決まりますが、市販のdToFシステムの最大測定範囲はおおよそ100~200メートルです。一般的に、ほとんどのLiDARシステムはこのdToFを採用しています。

2つ目が「周波数変調連続波(FMCW)」です。これは送信する信号の周波数を変調する方法で、同じく信号を送信し、反射した信号を検出するところまではdToFと同じですが、時間ではなく信号の周波数差を検出して距離を測定するというものです。

FMCWを採用したLiDARシステムは、変調するための周波数可変レーザー光源と、送受信信号から情報を抽出するための追加電子回路が必要なため、実装が複雑という欠点があります。しかし、発信する信号の周波数を好きに変えることができるため、別のLiDARシステムからの干渉が少ないというメリットや、dToFに比べてレーザーの最大パワーが低く、特に905nmでは人の目を保護するというメリットがあります。


実際に自動運転車に搭載されるLiDARシステムの1つが、「メカニカル・ライダーシステム」と呼ばれるものです。これは、赤外線レーザーをモーターに搭載し、センサーを回転させることで水平方向に360度の視野を確保し、死角をなくして周囲の状況をスキャンするというもの。Google傘下の自動運転タクシー「Waymo」がこれを採用していますが、モーターを作るのに精密部品が必要で、繰り返し回転させることによる摩耗や損傷の影響を受けるため、高価だという欠点があります。


もう1つ、「MEMSミラー・ライダー」というシステムがあります。これは小さな鏡にレーザー光を反射させて周囲の状況をスキャンするもので、メカニカル・ライダーシステムより低コストで実装できるのが特徴です。


LiDARは高レベルの自動運転に有効な技術であることが証明されており、WaymoとCruiseの自動運転タクシーで使用されていますが、両社が採用するメカニカル・ライダーシステムには数千ドル(数十万円)の費用がかかるため、コストを引き下げようとする試みが少なくとも140社を超えるスタートアップにより行われているとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Google発の自動運転車メーカー・Waymoがコスト削減しながらより高性能に仕上がった第6世代「Waymo Driver」を発表 - GIGAZINE

自動運転車の実現で大きな位置を占める「LIDAR」が抱えている問題とは - GIGAZINE

独自AIやLiDARセンサー搭載で軽快な動作が可能なヒューマノイド型ロボット「Unitree G1」が発売される、価格は250万円から - GIGAZINE

死体が埋められた場所をLIDARで検出する技術が登場、殺人事件の捜査への活用が期待される - GIGAZINE

マヤ文明の古代都市遺跡がLiDAR調査で見つかる、きっかけは「Google検索の16ページ目ぐらいで偶然データを発見」したこと - GIGAZINE

in 乗り物, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article here.