メモ

アマゾンジャパンが独禁法違反の疑いで立ち入り検査を受けた理由とこれまでの経緯まとめ


2024年11月26日、Amazonの日本法人であるアマゾンジャパンが、出品者に対して値下げやサービスの利用を強いた疑いで公正取引委員会による立ち入り検査を受けました。Amazonが出品者を軽視している疑いについては海外でも何度も問題視されており、Amazonがこれまでどのような調査を受けてきたのかについて海外メディアのTechCrunchがまとめています。

Japan competition authorities raid Amazon Japan, source says | Reuters
https://www.reuters.com/technology/japan-authorities-raid-amazon-japan-possible-anti-competitive-practices-nikkei-2024-11-26/

Amazon Japan raided by anti-monopoly authorities | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/11/26/amazon-japan-raided-by-anti-monopoly-authorities/

Amazonのプラットフォームには、Amazonが販売する商品とAmazon以外の「マーケットプレイス」の出品者が販売する商品があります。この違いは商品ページの「販売元」をチェックすることで確認でき、表記が「Amazon」以外になっているものはマーケットプレイスの出品者です。


マーケットプレイスで販売される商品には、商品ごとに優先的に表示される出品者の枠「カートボックス」が1つだけ存在するのですが、朝日新聞などによると、アマゾンジャパンはこの枠に掲載する出品者を選ぶ条件として「他の通販サイトと比べて『競争力のある価格』にすること」「在庫管理や発送などにアマゾンジャパンが代行する物流サービスを利用すること」などを要求していた疑いがあるとのことです。

こうした行為について、公正取引委員会は独占禁止法で禁止されている「優越的地位の乱用」などにあたる疑いがあるとみています。


カートボックスは、英語圏では「Buy Box」と呼ばれており、海外でも日本と同じように独占禁止法違反の疑いで調査を受けた例があります。

2020年11月、EUの執行機関である欧州委員会は、Buy Boxの表示がAmazonの決定に委ねられているため、恣意(しい)的な表示が行われていないかを確認するという目的で調査を行うことを発表しました。

2022年7月に、イギリスの競争市場庁も、マーケットプレイスの出品者と自社商品の扱いに差をつけているという疑いがあるとしてAmazonに対する調査を始めました。

Amazonが新たに反競争的慣行の疑いでイギリス競争・市場庁の調査を受ける - GIGAZINE


2022年10月には、イギリスの消費者保護団体・Consumer&Public Interest Networkの議長であるジュリー・ハンター氏らが、Amazonは自社が販売する商品やAmazonに多額の金銭を払っている出品者の商品を優先的にBuy Boxを表示しているとして、Amazonに9億ポンド(約1700億円)の支払いを求めて訴えを起こしました。

ハンター氏らは、同じ商品をより安く、良い条件で販売している出品者がいるにもかかわらず、多くの出品者がBuy Boxから除外されてしまっていると指摘し、ユーザーの80%以上がBuy Boxを見て購入しているという情報も合わせて、「イギリスの数千万人のユーザーが、Amazonのせいで必要以上にお金を支払ったことになる」と訴えていました。

Amazonが1500億円規模の訴訟に直面、自社製品の優遇で独禁法に違反か - GIGAZINE


なお、上記訴訟については、2023年6月に消費者保護団体のロバート・ハモンド氏という人物がほとんど同じ内容の訴訟を提起した結果、裁判所によって「ハモンド氏側の主張の方がハンター氏側の主張より適格」と判断され、ハンター氏の訴訟は一時差し止められ、ハモンド氏の訴訟が進行されることになりました。ハモンド氏の訴訟が不成立となった場合にハンター氏の訴訟が再開されることになります。

消費者団体の訴訟は進行中ですが、一方で規制当局による調査はAmazonの譲歩で終わりを迎えています。

2020年の欧州委員会による調査は、Amazonが「Amazonの物流サービスに料金を支払っているかどうかに関係なく、すべての出品者を平等に扱う」などと約束し、欧州委員会がこれを認めました。

2022年の競争市場庁の調査は、Amazonが「Buy Boxの枠を選択する上で、客観的に検証可能かつ差別のない条件と基準を適用する」と約束したことで終了しています。


EUでは罰則を免れたAmazonですが、本国アメリカでも危機が迫りつつあります。2023年9月、アメリカの連邦取引委員会と17州の司法長官が「Amazonが商品価格に介入するなどして違法に競争を阻害している」との疑いで提訴しており、正式な裁判を2026年10月に控えています。

日本に話を戻すと、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いでアマゾンジャパンを調査するのは今回で3回目となります。1回目は2016年で、商品の価格を他のサイトよりも高くならないよう要求していた疑いが、2回目は2018年で、自社サイトで取り扱う商品を業者から仕入れた際、納入業者に対して値引き販売した額の一部を補てんさせていた疑いが持たれていました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
AmazonとFlipkartがSamsungやXiaomiなどのスマホメーカーを優遇することで独占禁止法に違反しているとインドの規制当局が指摘 - GIGAZINE

AmazonのAWSとMicrosoftのAzureが「クラウド間の切り替えをわざと困難にしている」という訴えでイギリスの政府機関から独禁法違反の調査を受けていることが発覚 - GIGAZINE

Amazonユーザーは「顧客ではなく商品」、送料無料などの特典で集めたユーザーをマケプレ業者に提供する仕組みとは? - GIGAZINE

Amazonが書籍販売業界を独占しているとの指摘、一方でAmazonは自社の倉庫から発送を行う事業者に対して2%の手数料を要求 - GIGAZINE

Amazonに対する独占禁止法訴訟が前進、FTCによる追及の継続を裁判所が認める - GIGAZINE

日本の公正取引委員会がMicrosoftのActivision Blizzard買収は「競争を阻害しない」として審査を終了、その理由とは? - GIGAZINE

in Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article here.