若者の「SNS教育」は規制よりはるかに有益と専門家、「SNS規制は脊髄反射的」との厳しい批判
2024年11月に、オーストラリアで16歳未満のソーシャルメディア利用を禁止する法案が提出されたほか、日本でもちょうど11月17日に行われた兵庫県知事選挙でSNSが大きな存在感を示したことを受けてテレビ番組がSNSの規制を訴えるなど、にわかにSNS規制論が過熱しています。こうした動きに対し、専門家が「反射的な対応(kneejerk reaction)」と鋭く批判しました。
Educating young people about social media would be far more effective than a ban - Finland can show us how
https://theconversation.com/educating-young-people-about-social-media-would-be-far-more-effective-than-a-ban-finland-can-show-us-how-244304
オーストラリアのグリフィス大学の講師であるスーザン・グランサム氏と、サザンクロス大学の講師のアイーダ・ヒュレム氏は、16歳未満のSNS利用を禁止する新法について「この禁止措置の背景には、オンライン上の危害から子どもたちを守る狙いがありますが、むしろ票を得るための反射的な反応にしか見えません。テクノロジーの進歩が加速し、オンラインコミュニケーションが日常生活の一部となっている世界では、子どもたちにインターネットの利用を禁止するよりも安全な使用法を教える方が、技術的な知識を身につけさせつつ危害から守る上でより効果的な方法なのです」と提唱しました。
批判の声は議会からも上がっており、無所属のゾーイ・ダニエル下院議員は、SNSから若者を完全に閉め出すことは難しいことを指摘した上で、子どもからのアクセスを禁止することでSNSがさらに野放図で危険な場所になることを懸念していると述べました。
また、ファティマ・ペイマン上院議員は、若者が「議会に声が届かない」と考えるようになってきていると訴えています。
専門家がSNSの規制に反対しているのは、社会生活の多くをオンラインで営んでいる若者同士がつながりを断たれてしまうことで、社会的な幸福に影響が出るからです。
このことは、家族や友人と離れて暮らすことが特に多い留学生を対象とした調査で実証されているとのこと。孤立や孤独にさいなまれるリスクがあるのは留学生でもそうでなくても同様であると、グランサム氏らは強調しました。
また、16歳になった途端にソーシャルメディアを使い始めることで、SNS上で注目を集めるような危険な行動や有害なコンテンツへの接触といった、まさに規制論者が懸念している問題が激化する危険性もあります。
例えば、オーストラリアでは性的コンテンツを扱うSNSであるOnlyFansで、18歳の若者を男優として募集しようとした女性インフルエンサーのビザが取り消される事件が発生し、オーストラリア社会を動揺させたことがあります。募集のタイミングが、高校卒業後の長期休暇である「Schoolies」であったことも物議を醸しました。
事件後、OnlyFansの投稿者らは、自分たちに会うために若い男性たちが長蛇の列を作っている様子をTikTokに投稿しました。
@kay.manuel.schoolies Schoolies day 1 is now complete! #schoolies #goldcoast #kaymanuel ♬ original sound - Kay Manuel Schoolies
これは、「教育や支援体制が不十分なばかりに、過激なコンテンツに免疫がない若者が搾取に直面した事例である」と受け止められています。
SNS規制論とは対照的に、フィンランドではデジタルリテラシーが教育カリキュラムに組み込まれており、すべての学年でデジタルツールやテクノロジーの使い方について学ぶようになっているとのこと。
また、「デジタル能力は市民のスキル」という理念の下、図書館やコミュニティセンターでも大人向けのスキル向上プログラムの講座が催されるなど、学校教育の枠組みを超えた生涯学習としてデジタルリテラシー教育が奨励されています。
このように、規制よりも教育に重点を置くアプローチを長年続けたことにより、フィンランドは「メディアリテラシー指数」で6年連続1位で獲得するなど、世界で最もフェイクニュースに強い国のひとつとなりました。
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オーストラリアでも、1990年代から始まったタバコの健康被害についての長期的な教育改革により、喫煙経験のある14歳以上のオーストラリア人を大幅に減らすことに成功するなどの先例があります。
こうした点から、専門家らは「議会に提出された規制法案は、非常に複雑な問題を単純化し過ぎています。若者を守る上で必要なのは、急ごしらえの大げさで近視眼的な対策ではなく、デジタルリテラシーや十分な情報に基づく選択、強力な保護体制の確立といった長期的な解決策です」と提言しました。
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