ネットでの誤報・偽情報抑制に失敗した企業に罰金を科す法案が廃案に
インターネット上で護法や偽情報が広がるのを防ぐことを目的として、拡散を防げなかった場合はSNS運営企業に世界の売上高の最大5%の罰金を科すという内容を盛り込んだ「誤報と偽情報との戦い」に関する通信法の改正案が廃案になったことを、オーストラリアのミシェル・ローランド通信大臣が明らかにしました。この法案はローランド大臣が1年以上かけて取り組んできた課題でしたが、上院で多数派の保守連合や第三勢力のグリーンズが反対し、成立のめどが立ちませんでした。
Communications Legislation Amendment (Combatting Misinformation and Disinformation) Bill 2024 | Ministers for the Department of Infrastructure
https://minister.infrastructure.gov.au/rowland/media-release/communications-legislation-amendment-combatting-misinformation-and-disinformation-bill-2024
Albanese government abandons controversial misinformation bill amid widespread opposition | Sky News Australia
https://www.skynews.com.au/australia-news/politics/albanese-government-abandons-controversial-misinformation-bill-amid-widespread-opposition/news-story/419011dcb06b58838316a82537eef4e4
Australia dumps plan for fines for social media giants enabling misinformation | Reuters
https://www.reuters.com/technology/australia-dumps-plan-fines-social-media-giants-enabling-misinformation-2024-11-23/
Crushing blow for Anthony Albanese as hugely controversial misinformation bill is SCRAPPED | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/news/article-14118879/misinformation-bill-scrapped-Anthony-Albanese.html
通信法改正案は、ネット上に有害な誤報や偽情報が出回り、国民の80%が行動を求めているとして、労働党のアンソニー・アルバニージー政権が提出したもの。労働党にとっては政策アジェンダの中心であり、ローランド通信大臣の主導で1年以上かけて協議が進められてきたもので、2023年の初回提出時は規制当局の権限が強くなりすぎると批判を浴びたため、今回の新法案が作成されました。
Government to introduce legislation to combat seriously harmful misinformation and disinformation | Ministers for the Department of Infrastructure
https://minister.infrastructure.gov.au/rowland/media-release/government-introduce-legislation-combat-seriously-harmful-misinformation-and-disinformation
法案は、SNSなどのプラットフォームを運営する企業に対して誤報・偽情報を検出して、削除やペナルティを与えるよう求めており、もし情報拡散の抑制に失敗した場合、運営企業には最大で年間売上高の5%の罰金が科されます。
定員151議席のうち過半数の78議席を与党・労働党が占める下院は通過したものの、上院は定員76議席のうち労働党は26議席に過ぎず、31議席を持つ保守連合や11議席を持つグリーンズ、ほか8議席の無所属などの議員が法案に反対。
たとえば、無所属のデビッド・ポーコック上院議員は法案を「言論の自由に反するもの」「国による検閲」と批判しています。
Mis & Dis Information Bill - my position. - YouTube
こうした状況を受けて、ローランド通信大臣が「法案を成立させるための道が存在しない」と認め、通信法改正案は廃案となりました。
なお、法案への反対意見は野党議員からだけではなく、専門家からも寄せられており、地元ニュース局・Sky newsの取材に対して弁護士のジャスティン・クイル氏は「そもそもが、言説を政府がコントロールしようとする異常な試み」であり「こんなことが検討されたこと自体が尋常ではなく、さらに真剣に法案として提出されたというのも異様なことです」と述べています。
ちなみにアルバジーニー政権は、16歳未満のSNSの利用を禁止する法案も推し進めています。
オーストラリアが16歳未満のSNS利用を禁止する見込み - GIGAZINE
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