ネットサービス

Spotifyで「アーティストの楽曲に見せかけたAI生成音楽」が配信されているという報告


Spotifyでは著名なアーティストに限らず、無名の個人でも楽曲のアップロード・配信を行うことが可能です。しかし、この仕組みを悪用する形で、まるで有名アーティストの楽曲のように見せかけたAI生成音楽が配信されていることを、ニュースサイトのThe Vergeが報告しています。

Not even Spotify is safe from AI slop - The Verge
https://www.theverge.com/2024/11/14/24294995/spotify-ai-fake-albums-scam-distributors-metadata


The Vergeのエリザベス・ロパット氏はロックバンド・HEALTHの新作アルバムが出たという通知を受け取り、見てみるとHEALTHの新しいアルバムとは思えないようなデザインのジャケットで、音楽もまったく別物だったそうです。調べてみると、これは偽アルバムだったとのこと。

たとえばHEALTHの6枚目のアルバム「RAT WARS」のアートワークはこんな感じ。


ライブのお知らせも同じテイストが感じられます。


ところが、偽アルバムはイメージ写真のような背景にバンド名の文字を重ねたもので、まったくこれまでのイメージとは似ても似つかないものでした。バンド側も2024年10月の時点で偽アルバムの存在を認識していて、「もしそのアルバムからHEALTHの音楽に入るとしたら」というフローチャートを作ってネタにしています。以下の投稿のうち、「health(2024)」となっている2枚が偽アルバムです。


さらに、生産されたアルバムをチェックしている人が「アンビエント・ヒーリング音楽のアルバム?あのカムメタルバンドが?変なの!ジョニー・ヘルスに聞いてみないと!」と反応する画像も投稿されています。


ロパット氏の調査では、こうした偽アルバムはノルウェー出身の歌手・アニー、パンクバンドのSwans、2ピースバンド・Standardsなどでも確認されていて、傾向としてはメタルコアバンドを標的としたものが多かったとのこと。また、単語一文字のバンドも目立ったそうです。偽アルバムは数日すると削除されるものから、アーティストが嫌がっているのに削除されないものまで、さまざまだったとのこと。


なぜこのような偽アルバムが登録されるのかについて、ロパット氏は、Spotifyの収益化の仕組みにあると指摘しました。

Spotifyでは、楽曲のデータや情報、ライセンスなど一式をディストリビューターから受け取って配信し、再生回数に応じたロイヤリティをディストリビューターに支払う仕組みになっています。たとえば、前述のStandardsの場合、正規のディストリビューターはTopshelf Recordsで、Standardsの楽曲が再生された分だけお金がTopshelf Recordsに支払われ、Topshelf RecordsからStandardsにお金が渡ることになります。

ところが、Standardsの偽アルバムは「Gupta Music」というディストリビューターが提供したもので、再生分のロイヤリティはGupta Musicに支払われるようになっていたとのこと。ロパット氏は、Gupta Musicが似たようなアートワークのアルバムを700枚以上登録していることを確認しています。


なお、ディズニーやリパブリックレコードなどのレーベルを担当する同名の「Gupta Music」というディストリビューターがあり、広報担当のカーリー・カリオリ氏は「ご指摘の動きに関しては一切関与していません」と、偽アルバムのアップロードを行っているのは同じ名前を冠した無関係な別のディストリビューターである旨をロパット氏に説明したとのこと。

このほかにディストリビューターとして偽アルバム配信に携わったAmeritz Musicはコメント依頼に応じなかったそうです。

こうした問題に対する1つの解決策は「AI生成音楽のアップロード・配信禁止」ですが、一方で、音楽シーンではAI生成音楽を楽しむ人がいるのもまた事実。

AIで作った「AI音楽」が流行、Discord上には2万人超が集まる人気サーバーも - GIGAZINE


ロパット氏の取材に対し、ストリーミング詐欺検出サービスを展開するBeatdappのアンドリュー・バーティCEOは、AIはあくまで以前からSpotifyに存在している詐欺行為を加速させているだけであると指摘しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
AI生成音楽を使って著作権使用料を荒稼ぎした男が逮捕される - GIGAZINE

「AIが生成した数万もの楽曲」を音楽ストリーミングサービスのSpotifyが削除、不正な再生数の水増しが原因か - GIGAZINE

人気歌手が「AIで自分の声から曲を作ってもOKでペナルティなし」と発表 - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.