魚介類の5種に1種は「誤った名前」で売られているという研究結果
魚介類は、手元に届くまでに複数の国を通過していることが多く、その過程で本来の種名とは異なる種名で流通してしまっている場合もあります。カナダのアンブローズ大学で生物学の准教授を務めマシュー・RJ・モリス氏によると、普段口にしている魚介類の5分の1は誤表示された別の魚介類であり、中には知らないうちに絶滅危惧種を食べている可能性もあるそうです。
Mislabeled and ambiguous market names in invertebrate and finfish seafood conceal species of conservation concern in Calgary, Alberta, Canada [PeerJ]
https://peerj.com/articles/18113/
What are you really eating? 1 in 5 seafood products in our study were mislabelled
https://theconversation.com/what-are-you-really-eating-1-in-5-seafood-products-in-our-study-were-mislabelled-240891
モリス氏らが2024年9月に発表した論文では、2014年から2020年にかけてカナダ西部にあるアルバータ州の国際都市・カルガリーで、無脊椎動物と魚類の食品を調査し、誤った表示とあいまいな市場名について集計しました。モリス氏によると、魚介類がどのように扱われているかを比較したのは、カナダでは初めての研究となるそうです。
研究では、カルガリーのレストランや食料品店から、エビやタコ、カキなどを含む魚類347点と貝類109点のサンプルを採取し、それらをDNAの配列から種を特定するDNAバーコーディングという方法で検査しました。DNA検査の結果は、カナダ食品検査庁が管理している魚介類の名称表示リストに照らした上で、レストランや食料品店の表示が一致しているかを確認しています。たとえば、「ベニザケ」を「サーモン」と表示して販売している場合は、研究では不当表示とみなしています。
結果として、カナダの食料品店や飲食店で提供されている魚類の5分の1と貝類の5分の1が表示と実態が異なっていることが判明しました。モリス氏によると、5分の1という数字は世界的に予測される魚介類の偽装表示率の範囲内であるそうです。調査の中で特に顕著だったのがタイおよびマダイと表記された食品で、そのうち79%がティラピア、21%がメバルや別のタイの一種であり、調査したものの100%が誤った表記になっていたとのこと。さらに、とある2種のウナギ製品は、絶滅が深刻に危惧されているヨーロッパウナギであると判定されました。
モリス氏は「魚介類の誤表示は、公衆衛生、自然保護、経済に広範囲にわたる影響を及ぼしています。絶滅危惧種の捕獲のほか、消化に影響を及ぼす脂肪酸を含む魚がそれと知らずに提供されていたせいで入院した人もいます。また、より安価な魚介類を高価な魚介類と誤認させて提供するケースはときおり罰せられることもありますが、漁業は世界規模で行われているため、法的措置は難しいです」と述べています。誤った魚介類を購入しない対策として、モリス氏は「偽装表示されにくい頭付きの魚を購入する」「国ごとの認証を受けたものを選択する」「購入する種が正確に明記されている製品を購入する」などを挙げています。
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