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次世代技術「Bluetooth 6.0」のコア仕様が公開される、Appleの「探す」の精度が大幅に向上する可能性


Bluetooth標準の開発やライセンス供与を管理するBluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)が、Bluetooth 6.0のコア仕様を2024年9月3日に発表しました。このBluetooth 6.0によって、Appleのデバイス追跡機能である「探す」の精度が大きく向上するといわれています。

Now Available: New Version of the Bluetooth Core Specification | Bluetooth® Technology Website
https://www.bluetooth.com/blog/now-available-new-version-of-the-bluetooth-core-specification/


Bluetooth® Core Specification version 6.0 Technical Overview | Bluetooth® Technology Website
https://www.bluetooth.com/core-specification-6-feature-overview/

Bluetooth 6.0 could revolutionize one of my favorite iPhone features
https://bgr.com/tech/bluetooth-6-0-could-revolutionize-one-of-my-favorite-iphone-features/

Bluetooth 6.0 will help Apple improve its Find My network
https://9to5mac.com/2024/09/04/bluetooth-6-0-apple-find-my/

Bluetooth 6.0の仕様書では以下の新機能が明らかにされました。

・Bluetooth Channel Sounding
Bluetooth Channel Soundingは、Phase-Based Ranging(PBR)とRound-Trip Timing(RTT)という2つの測定方式を組み合わせることで、より安全で高精度な距離測定を可能にするという技術です。


PBRは異なる周波数の信号を送受信し、その位相差を測定して距離を高精度で算出しますが、約150mという一定距離で精度が落ちるとのこと。一方で、RTTはパケットの往復時間から処理時間を考慮して、実際に信号を送受信するのにかかった時間を算出できるので、PBRの曖昧性を解消できるというわけです。さらに、Bluetooth Channel Soundingでは新たなチャネル選択アルゴリズムが導入され、セキュリティ向上も図られています。

・Decision-Based Advertising Filtering
Bluetooth Low Energy(BLE)対応デバイスが自身の存在や提供するサービスを周囲のデバイスに知らせることを「アドバタイジング」といい、電力効率が高く短距離無線通信に適しているため、IoTデバイス、ウェアラブル、スマートホームアプリケーションなど、幅広い用途で活用されています。

Decision-Based Advertising Filteringは、Bluetooth 5.0で導入された「拡張アドバタイジング」のプロトコルデータユニット(PDU)に、「ADV_DECISION_IND」という新しいタイプのPDUを導入し、アプリケーションがコントローラーの受信パケットフィルタリングをより細かく制御できるようにします。


・Monitoring Advertisers
従来のBLEでは、アドバタイジングのパケットをフィルタリングすることで、ホストへの過剰な通知を防いでいました。しかし、この方法では監視対象のデバイスが範囲内に存在し続けているかどうかを把握することが困難だという問題があります。

Monitoring Advertisersは、指定されたアドバタイザーデバイスの存在を追跡し、そのデバイスが範囲外に出たときや再び範囲内に戻ったときにのみホストに通知する機能です。これにより、ホストは常にアドバタイジングの通知を受け取る必要がなくなり、電力効率が向上し、バッテリー寿命が延長します。また、デバイスの接続管理がより効率的になり、ユーザーエクスペリエンスも向上します。

・Isochronous Adaptation Layer Enhancement(ISOAL) Enhancement
ISOALは上位レイヤーであるホスト側から受け取るサービスデータユニット(SDU)を、リンクレイヤーであるコントローラー側が処理できるPDUに変換する役割を担います。ISOAL Enhancementには「Unsegmented Framed mode」という新しい動作モードが追加されており、プロセスの遅延低減、信頼性の向上が図られています。

特に低遅延が重要とされるオーディオ関連では、このISOAL Enhancementによって音声の遅延を最小限に抑えつつ、高い音質を維持できるようになるとBluetooth SIGは述べています。


・LL Extended Feature Set
従来のBluetoothでは、デバイスの機能を64ビットで説明していましたが、Bluetoothの機能が増えるにつれて、64ビットでは足りなくなってきました。そこで、LL Extended Feature Setの導入によって機能表現が1984ビットにまで拡張されました。この機能は、将来的にBlutoothが進化してさらに機能が増えても対応できるための基盤となるものです。

・Frame Space Update
Frame Space UpdateはBluetoothデバイス間の通信タイミングをより柔軟に調整できるようにする機能です。従来のBluetoothでは、デバイス間で連続してパケットを送受信する際の間隔が150マイクロ秒に固定されていましたが、Frame Space Updateによってこの間隔を変更できるようになりました。

パケット送受信の間隔が短くなると、より多くのデータをより短時間で送受信できるようになります。また、必要に応じて間隔を調整することで、電力消費の最適化を図れます。さらに、性能の異なるデバイスに対して最適な設定を行うことも可能になります。


Bluetooth SIGは、この新機能のうちの「Bluetooth Channel Sounding」について「Appleの『探す』のソリューションが大幅に改善されます」と明記しています。

Appleの「探す」ネットワークはBluetooth技術をベースにしています。「探す」ネットワークがどういう仕組みでAppleデバイスを探すことができるのかについては、以下の記事を読むとわかります。

Appleが発表したオフラインの端末でも位置を突き止められる「Find My」機能の仕組みとは? - GIGAZINE


従来のBluetoothでは信号の出発角度(AoA)と到着角度(AoD)で方向を検知していましたが、Bluetooth 6.0ではBluetooth Channel Soundingの高精度な距離測定能力によって、複数の基準点からの距離による三角測量で位置と方向を特定できるようになります。これによって従来よりも高い精度で位置情報を特定できるというわけです。


Appleデバイスは専用チップによる超広域帯域幅(UWB)通信を利用することで「探す」ネットワークの精度を高く維持しています。この技術にBluetooth Channel Soundingを組み合わせることで、より高い精度でデバイスの位置を特定できる可能性があります。また、UWBチップを搭載していないデバイスでも、「探す」ネットワークのような高い精度でデバイスの位置を特定できるようになることも期待されています。

記事作成時点では、AppleがBluetooth 6.0をいつ採用するかは不明ですが、Apple関連ニュースサイトである9To5Macは「Bluetooth 6.0を採用した最初のAppleデバイスが登場するのは、早くても2025年以降だろう」と予測しました。

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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