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イギリス国立美術館の改装で切られた模擬柱の中からパトロンの書いた「切ってくれてうれしい」という手紙が登場


イギリス国立美術館(ロンドン・ナショナル・ギャラリー)で「セインズベリー・ウイング」の拡張のために通路端にあった柱を解体していた作業員が、柱の中に隠されていた手紙を発見しました。手紙は美術館の大口支援者で、通路の名称の由来にもなったジョン・セインズベリー卿の署名入りで、日付は1990年6月26日付けとなっており、手紙を見つけた人に向けて「不要な柱の列を切る決断をしてくれて、建物の寄付者の1人はとても喜んでいることをお知らせします」と呼びかけていました。

Sainsbury Wing contractors find 1990 letter from donor anticipating their demolition of false columns
https://www.theartnewspaper.com/2024/08/27/sainsbury-wing-contractors-find-1990-letter-from-donor-anticipating-their-demolition-of-false-columns


National Gallery donor's secret letter decrying building design found as pillar demolished
https://www.telegraph.co.uk/news/2024/08/27/national-gallery-donor-secret-letter-found-in-pillar/

Thank God you're knocking down the building I paid for - I hated it, says millionaire National Gallery donor in letter he insisted was hidden in columns he loathed | Daily Mail Online
https://www.dailymail.co.uk/news/article-13786271/Builders-demolishing-column-National-Gallery-letter-rich-donor-paid-hated-pillar.html

ジョン・セインズベリー卿はイギリスのスーパーマーケットチェーン「セインズベリー」の創業者一族で、プレストン・キャンドバーのセインズベリー男爵という称号を持つ貴族でもあり、慈善事業に取り組んだ篤志家としても知られます。


1985年にセインズベリー卿は2人の兄弟とともに国立美術館におよそ5000万ポンド(約95億5000万円)を寄付。1991年、寄付金で「セインズベリー・ウイング」が作られました。

今回の手紙は、その「セインズベリー・ウイング」にあった柱の中から見つかったもの。ウイングの設計はアメリカのポストモダニズム建築家であるロバート・ベンチューリとその妻で同じく建築家のデニス・スコット・ブラウンが行っており、セインズベリー卿は全体的にはデザインに満足していたものの、唯一、構造上の役割がなにもない2本の「偽の柱」だけは不要だと考えていたようです。

手紙の中でセインズベリー卿は「私は、偽の柱は建築家の過ちであり、設計のこの細部を受け入れたことを我々は後悔することになると確信しています」と述べた上で「あなた方の世代が不必要な柱をなくすと決めたことを、建物の寄贈者の1人は心から喜んでいるとお知らせします」と結んでいます。

なお、今回のデザインは建築家のアナベル・セルドルフが担当しており、「セインズベリー・ウイング」に手を入れるべきではないと考えるグループや、オリジナルの設計を手がけたブラウン、王立建築家協会などから反対の声が上がっています。

セインズベリー卿は、嫌っていた偽の柱が取り除かれるのを見届けることなく2022年に亡くなっていますが、見つかった手紙を受け取ったセインズベリー卿の妻・アーニャさんは「長い年月を経てジョンの手紙が再発見されたことをうれしく思いますし、ジョンはギャラリーが改築されて新たな空間が作られることを安心して喜んでいると思います」と語ったとのことです。

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in メモ,   アート, Posted by logc_nt

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