新たなエルニーニョ現象が発見される
エルニーニョ現象は赤道付近における太平洋の海面水温が通常よりも高くなることで気象パターンが乱れる気候現象で、世界各地に干ばつや豪雨などの異常気象を引き起こします。このエルニーニョ現象とよく似た気候現象が、ニュージーランドとオーストラリア付近の一部で発生していることが新たにわかったと、イギリスのレディング大学の研究チームが報告しています。
Southern Hemisphere Circumpolar Wavenumber‐4 Pattern Simulated in SINTEX‐F2 Coupled Model - Senapati - 2024 - Journal of Geophysical Research: Oceans - Wiley Online Library
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2023JC020801
New El Nino discovered south of equator - University of Reading
https://www.reading.ac.uk/news/2024/Research-News/New-El-Nino-discovered-south-of-equator
Mysterious 'New El Niño' Was Just Discovered South of The Equator : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/mysterious-new-el-nio-was-just-discovered-south-of-the-equator
この新型エルニーニョ現象では、南半球を一周する海面温度が変動を繰り返し、交互に温暖と冷涼な領域を4つ形成します。最初はニュージーランドとオーストラリア付近にある狭い海洋で始まりますが、大気中に波状のパターンを作り出し、やがて強い西風によって南半球全体に伝播するとのこと。
新型エルニーニョ現象は「海面温度の変動が大気を介して広域の気象に影響を与える」という点ではエルニーニョ現象と似ていますが、エルニーニョ現象は低緯度の熱帯で発生するのに対し、この新型エルニーニョ現象は中緯度で発生する点が異なります。研究チームはこの新型エルニーニョ現象を「Southern Hemisphere Circumpolar Wavenumber-4 Pattern」と名付けています。
研究チームは、300年分の気候条件をシミュレートする高度な気候モデルを使用し、このSouthern Hemisphere Circumpolar Wavenumber-4 Patternを追跡したとのこと。このモデルは大気、海洋、海氷の要素を組み合わせて地球の気候システムを包括的に表現することが可能で、このモデルでシミュレートしたデータを分析することで、南半球を巡る海面温度の変動の繰り返しパターンを特定することに成功したと研究チームは報告しています。
Southern Hemisphere Circumpolar Wavenumber-4 Patternは南半球における夏、すなわち12月から2月にかけて起こるそうですが、数カ月間にどのような変化が展開されるのかについてはまだ解明されていないとのこと。しかし、南半球全体の気候パターンはすでに観測されていることから、Southern Hemisphere Circumpolar Wavenumber-4 Patternがその気候パターンを説明するのに役立つと考えられます。
論文の筆頭著者であるバラジ・セナパティ氏は「この発見は地球の気象に変化をもたらす新たなスイッチを見つけたようなものです。これは、比較的狭い範囲の海洋が地球の天候や気候パターンに広範囲にわたる影響を及ぼす可能性があることを示しています」とコメントしています。
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