ネットサービス

Google検索のアルゴリズム変更でトラフィックの90%超を失ったウェブサイトが窮状を訴える


空気清浄機のテストやレビューを行う独立系メディアのHouseFreshが、「Google検索の検索結果ページから、HouseFreshが事実上消えてしまった」と報告しています。

HouseFresh disappeared from Google Search results. Now what?
https://housefresh.com/how-google-decimated-housefresh/


2024年2月、HouseFreshは「Google検索の検索結果上位に表示される有名メディアの商品レビュー記事を信用しないように」という警告記事を公開しました。この記事が公開されてから10週間以上が経過してからも、ソーシャルメディア経由で多くの反響メッセージが届くそうです。

問題の記事を公開してから数日後、HouseFreshはデジタルメディア・Dotdash Meredithの元従業員から、「Dotdash Meredithでは『キーワードスウォーミング』と呼ばれるSEO戦略を実施していた」という情報を入手します。

キーワードスウォーミングとは、特定のワードやトピックでGoogleの検索結果ページの上位にランクインしている小規模サイトを特定し、同じトピックに関するコンテンツを大量に投稿することで、その小規模サイトのランキングを下げるという戦略です。


Dotdash Meredithの元従業員は「『スウォーミング』は、競合相手を圧倒することを意味します。基本的に、特定のトピックに関する記事を10本ほど公開することで、Dotdash MeredithのGoogle検索におけるランキングを強化し、ランキング上位に位置していた小規模サイトを蹴落とします」と説明しました。

HouseFreshは空気清浄機のレビューに特化したサイトですが、Dotdash Meredithは空気清浄機以外のカテゴリに対しても、キーワードスウォーミングを実施しています。以下のスクリーンショットは左から空気清浄機・スロークッカー・姿勢矯正器具について検索した際に、検索結果ページ上位に表示されるDotdash Meredith関連サイトのコンテンツ(青色)をまとめたもの。


「Dotdash Meredithが関連サイトネットワークを使って大量のコンテンツを投稿し、Googleの検索結果ページ上でより良い位置に自社コンテンツが表示されるようにしていることは非難されるべきでしょうか?」とHouseFreshは指摘しています。続けて、「個人的にはインターネットにとって良いことではないと思いますが、Dotdash Meredithの経営陣が株主のための金儲けの手段として採用したものだとすれば、理解できる判断です」と述べました。

キーワードスウォーミングを採用しているのはDotdash Meredithだけではありません。経済メディアとして世界的に名高いフォーブスも、専門分野からかけ離れたトピックにおいてキーワードスウォーミングを採用しています。フォーブスと言えば経済メディアですが、専門分野とはかけ離れた「puppies(子犬)」関連の記事を多数投稿しています。


他にも、フォーブスはここ数年で「犬」「猫」「子猫」に関する記事を何千本も投稿している模様。


これらの記事のほとんどが「forbes.com/advisor/pet-insurance/」というディレクトリをURLに含んでいるそうです。これはフォーブスがペット保険関連のアフィリエイトコンテンツを公開しているディレクトリであるとHouseFreshは指摘。


さらに、HouseFreshは「フォーブスのアフィリエイトコンテンツチームが猫や犬に関するコンテンツを大量に公開しているのは、DogsterCanine Journalといったペット専門メディアとフォーブスが対抗するべく、この分野での地位を確立する必要があったためです」と指摘しました。

加えて、「2020年以前のフォーブス上のペット関連コンテンツの大部分は、ペットの専門知識をベースに書かれたものではなく、収益化可能なトラフィックを生み出す検索頻度の高いキーワードとも結びついていませんでした」と述べ、2020年以降にフォーブスがペット関連コンテンツから収益を生み出すための取り組みをスタートしたと主張しています。


前述の通り、フォーブスが大量に投稿しているペット関連コンテンツはペット保険関連アフィリエイトコンテンツの収益性を最大限に高めるためです。しかし、ソースにリンクを張るとリンク先のページランクを上げることになるため、フォーブスはソースにリンクを張らない記事を多数掲載しています。


これらの結果、フォーブスのペット保険アフィリエイトコンテンツには毎月推定で110万人ものユーザーに閲覧されるようになっているそうです。これについてHouseFreshは「フォーブスがペット保険のアフィリエイトコンテンツで儲けることを決めたことで、長年にわたりペット関連コンテンツを制作してきたあらゆるサイトが犠牲になりました」と指摘してます。


このような「Google検索の検索結果ページで上位に表示されることだけを目指して作成されたコンテンツ」と激しい戦いを繰り広げてきたHouseFreshですが、2024年3月にはGoogleがそのような低品質なウェブページの検索ランキングを下げるために、検索ランキングシステムのアルゴリズムを変更すると発表しました。

Googleが「人間のためではなくGoogle検索で上位に並ぶために作られた低品質なページ」の検索ランキングを下げる変更を発表 - GIGAZINE


しかし、これにより悪影響を受けたのは、低品質なコンテンツを作成している大手メディアの方ではなく、HouseFreshだったそうです。

例えば、2023年5月以降にGoogle検索で「best budget air purifiers(ベスト 予算 空気清浄機)」と検索した場合、検索結果ページの上から2番目に表示されていたHouseFreshの記事は、Googleによる検索ランキングシステムアルゴリズムの変更が行われたのち、スポンサー付きの記事や大手メディアの記事、Googleショッピングの商品リストなどの下に深く埋もれてしまったそうです。

以下は「ベスト 予算 空気清浄機」と検索した場合、どういったメディアのコンテンツが検索結果ページの上位に表示されるかを示した画像。最上位に表示されるのはソーシャルメディアサイト・RedditやQ&Aサイト・Quoraのコンテンツ(オレンジ色)で、続いて大手メディア(紫色)やYouTubeのコンテンツ(黄色)、その下にはGoogleショッピングのコンテンツ(赤色)が大量に並びます。HouseFreshのコンテンツはこれらよりも下に表示されるため、Google検索経由のトラフィックは激減してしまったというわけ。なお、これは生成AIによる検索体験でも同様だそうです。


この結果、Google検索経由のHouseFreshへのトラフィックは91%も減少しました。なお、HouseFreshでは2023年10月以降、Google検索から毎日4000人近いユーザーが同サイトを訪問していたそうですが、アルゴリズムの変更に伴いその数はわずか200人にまで減少したと言及しています。また、この200人のうちほとんどが検索ワードに「HouseFresh」を入れることで、意図的にHouseFreshのコンテンツを探していたそうです。


Google検索の検索結果ページ上部にほとんど自社コンテンツが表示されなくなってしまったHouseFreshですが、Google検索がYouTubeやRedditなどの人気プラットフォームを重視していることを利用することで、自社コンテンツを多くのユーザーに見てもらえるように施策を講じています。

具体的には、YouTube、X(旧Twitter)、TikTok、Instagramといったソーシャルメディアに動画を投稿するだけでなく、コンテンツをReddit上に投稿するなどして、「Google検索からHouseFreshのコンテンツへの流入増加」を狙うのではなく、「Google検索からソーシャルメディア経由でHouseFreshのコンテンツへの流入増加」を狙っているそうです。

その成果を示したスクリーンショットが以下。Google検索で上位に表示されるYouTubeやRedditに、HouseFreshが投稿したコンテンツ(青色)が表示されるようになった模様。


なお、これ以外にも記事中にアフィリエイトリンクを追加するなど、Google以外の収益源を確保する策をHouseFreshは講じています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Googleが間違いだらけのAI検索を手動で修正中との報道、AI検索を回避する個人開発サービスも登場 - GIGAZINE

Google検索の品質悪化はリーダーが変わったことの影響だという指摘 - GIGAZINE

Googleが「生成AIを使った検索機能」の有料化を検討している - GIGAZINE

Googleが「人間のためではなくGoogle検索で上位に並ぶために作られた低品質なページ」の検索ランキングを下げる変更を発表 - GIGAZINE

検索結果ページでのキャッシュ提供が終了したGoogleでもキャッシュを閲覧できる便利なブラウザ拡張機能「Web Archives」 - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.