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アメリカ下院で可決された「あらゆる企業や個人の情報を政府に引き渡す」法律に批判が集まる、元NSA職員のエドワード・スノーデンも「インターネットを乗っ取ろうとしている」と指摘


2024年4月12日にアメリカ下院で可決された外国情報監視法第702条(FISA)の修正案(RISAA)では、アメリカ国家安全保障局(NSA)が主導となって政府が収集できる情報の範囲が大幅に拡大することになります。この法案に対し、電子フロンティア財団やNSA・アメリカ中央情報局(CIA)の元職員でアメリカ政府による国民に対するスパイ行為の実態を明らかにしたエドワード・スノーデン氏も反対の意向を示しています。

Tell the U.S. Senate: STOP RISAA, the FISA Mass Surveillance Expansion | EFF Action Center
https://act.eff.org/action/tell-the-u-s-senate-stop-risaa-the-fisa-mass-surveillance-expansion


従来のFISAは、テロリズムや他国からのスパイ活動の兆候を探るために、政府がアメリカ国内の外国人を監視することを許可する法律です。FISAでは、本来監視対象ではないはずのアメリカ人を意図的に監視することを禁じているはずですが、NSAやFBIは無実のアメリカ人の通信を「偶発的」と称して傍受していることが指摘されています。

さらに、偶発的に傍受したアメリカ人の通信を正当な理由の令状なしに検索することも可能です。電子フロンティア財団は「これまで政府はFISAを悪用し、アメリカ国民の通信をデータベース化してきました。2021年だけでも、FBIはアメリカ国民の識別子を使用して、令状なしで個人情報を約340万件取得しています」と指摘しました。

FISAは2024年4月19日をもって失効する予定でしたが、アメリカ下院では、FISAを修正した第702条再承認法案(RISAA)が賛成多数で可決されています。RISAAの採決に当たっては、一部の議員が「アメリカ人の監視の際には令状が必要」という要件の追加を要求しましたが、この要求が認められることはありませんでした。


FISAでは、政府は通信に直接アクセスできる「電子通信サービスプロバイダー」に対し、NSAによる監視の実施を支援するよう強制することができました。RISAAでは、この「電子通信サービスプロバイダー」の定義が拡大されます。


従来のFISAにおける「電子通信サービスプロバイダー」には、VerizonやGoogleのようなインターネットサービスプロバイダー(ISP)が含まれていましたが、RISAAの下では、ルーターやサーバー、携帯電話基地局など、通信の送信や情報の保存が可能な機器にアクセスできる企業や個人は全て「電子通信サービスプロバイダー」と定義されることになります。


ブレナン司法センターで共同ディレクターを務めるエリザベス・ゴイテイン氏、顧客にWi-Fiを提供し、通信を行う機器にアクセスできる理髪店やコインランドリー、フィットネスセンター、歯科医院といった企業ですらRISAAでは「電子通信サービスプロバイダー」に該当すると指摘しています。


また、ユーザーの自宅を訪れてサービスを行う配管工や修理業者なども「電子通信サービスプロバイダー」に該当することとなるため、自宅を訪れた業者がユーザーのラップトップやルーターにアクセスして「代理スパイ」として働く可能性も指摘されています。


一方でアメリカ下院情報特別委員会(HPSCI)は「政府が新たに追加したいサービスプロバイダーはわずか1種類です。そのサービスプロバイダーに関する情報を知られたくないため、『電子通信サービスプロバイダー』がこのように漠然とした定義になったというわけです」と釈明しています。


しかし、ゴイテイン氏は「政府は一般企業や個人を代理スパイとして働かせるような権力を持つべきではありません。たとえターゲットが外国人に限ったものだとしても、これほど広範囲に及ぶ権力は後々乱用されることになるでしょう」と批判しました。


RISAAにはさまざまな政治家などが反対意見を示しており、オレゴン州選出の上院議員であるロン・ワイデン氏は「この法案は、アメリカの歴史上最も過激で恐ろしい政府監視権限の拡大の一つです。私は上院での可決を阻止するために全力を尽くします」と述べています。


電子フロンティア財団はこの法案に対し「政府は説明責任を果たしていないにもかかわらず、制御不能な大量監視権限を利用して、アメリカを訪れる移民や亡命希望者などをスパイすることを可能にしようとしています。また、この動きはテロリズムやスパイ活動の阻止のためだけのものだという本来の議論を放棄しています」と批判しました。

スノーデン氏は「NSAによってインターネットが乗っ取られる日が訪れようとしているにもかかわらず、どの新聞にもこの情報は掲載されていないため、この法案について誰も気付いていません」と述べています。

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in メモ, Posted by log1r_ut

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