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中国の軍事機関・国営AI研究機関・大学などがアメリカから禁止されているNVIDIA製半導体を少しずつ購入していた実態が判明


中国への輸出が禁止されているNVIDIAの半導体のうちいくつかを、中国の軍事機関や研究機関が小規模なサプライヤーを通じてひそかに入手していたことが明らかになりました。

Exclusive: China's military and government acquire Nvidia chips despite U.S. ban | Reuters
https://www.reuters.com/technology/chinas-military-government-acquire-nvidia-chips-despite-us-ban-2024-01-14/

アメリカ政府は、アメリカに拠点を置く半導体企業の製品が他国で軍事目的に使用されることを恐れており、2022年頃から半導体大手のNVIDIAやAMDに対して中国やロシアへの製品輸出を規制し始めています。

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半導体はスマートフォンなどの精密機器や一般的な家電の製造に必須の部品であり、特に近年の技術進歩が著しいAI分野では高性能な半導体が多数求められます。半導体需要が増加する中国を締め付けるようにアメリカは規制を強めていて、AI特化のNVIDIA主力製品「H100」「A100」の輸出を真っ先に規制したほか、NVIDIAが規制を回避するためにわざわざ製造した中国向け製品「A800」なども最終的に輸出を制限しました。

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これにより、中国は性能の低い半導体を輸入するか、自らの技術で半導体を製造するほかなくなったのですが、半導体の製造技術すらも輸出が規制されているため、中国が世界の最先端を行くプロセスに追いつけていない状況にあることも伝えられています。

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ところが、ロイターの調べにより、アメリカ政府が規制しているはずの半導体を中国がひっそりと入手していることが判明。数十の中国企業により、H100およびA100、A800など、本来であれば手に入らないはずの半導体が中国に持ち込まれているという実態が明かされました。

ロイターによると、軍事機関への関与が疑われているハルビン工業大学と電子科技大学のほか、清華大学、重慶大学、山東省人工知能研究所、無名の人民解放軍組織などが、アメリカの規制が本格化して以降、何らかの手段で半導体を入手していることがわかったそうです。

アメリカから中国へ半導体を持ち込む業者は、NVIDIAでも、NVIDIAが承認した小売業者でもない小規模な業者であり、アメリカの大手企業に大量に出荷された半導体の余剰在庫を引き抜いたり、インド、台湾、シンガポールなどの現地法人を通じて輸入したりしていると見られるとのこと。


この件に対して取材を受けたNVIDIAは「私たちはすべての輸出管理法を順守し、顧客にも同じことを求めています。顧客が第三者に違法な転売を行ったことが判明した場合、直ちに適切な措置を取ります」とコメント。アメリカの商務省はコメントを控えました。

ロイターによると、中国が手に入れた半導体は数個からせいぜい数百個と非常に少なく、たとえばOpenAIのGPTモデルと同様のモデルを構築するにしても3万個のA100が必要となるため、洗練されたモデルをゼロから構築するにはほど遠いと考えられるとのこと。

この件に詳しいタフツ大学のクリス・ミラー教授は「半導体は小さく、簡単に密輸できることを考えると、アメリカの輸出規制が完璧であると考えるのは非現実的です。そうではなく、この規制は中国の技術構築を阻害するものなのです」と語りました。

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in ハードウェア, Posted by log1p_kr

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