生物学者が選ぶ「最も狩りが上手な動物」と「最も狩りが下手くそな動物」とは?
弱肉強食という言葉がある通り、動物界には捕食者と被食者があふれています。その中でも特に狩りがうまい動物はどれかという質問を、科学系ニュースサイト・Live Scienceが2人の専門家にぶつけました。
Which animal is the best hunter? (And which is the worst?) | Live Science
https://www.livescience.com/animals/which-animal-is-the-best-hunter-and-which-is-the-worst
「どの動物が最も優れたハンターなのか」という疑問は一見するとシンプルですが、その答えは非常に複雑です。アメリカにあるブリガムヤング大学生物学部のマーク・ベルク教授はLive Scienceに、「この単純な問いには、非常に興味深い生態学と進化生物学が絡んできます。なぜなら、捕食はすべての生き物を結びつける接着剤であり、エネルギーが生態系を通過する方法そのものだからです」と話しました。
狩りの腕前を問う上で最も明快なアプローチのひとつは、ハンティングの成功率です。この基準に照らすと、ライオンやトラなど、多くの人が真っ先に思い浮かべる肉食動物たちは選外になってしまいます。というのも、ライオンの狩りの成功率は約30%、トラに至っては10%程度しかないからです。
名だたる肉食獣に代わって狩りの達人の名をほしいままにしているのが、トンボです。その狩りの成功率は最高で97%に達し、1日に数百匹の蚊を仕留めることが可能とのこと。
トンボの強みは並外れた視力で、トンボやその仲間が持つ複眼はほぼ360度の視界を誇り、脳は視覚情報を極めて高速に処理して獲物が次の瞬間にはどこにいるのかを予測することができます。また、トンボは前後の翅を独立して動かせるので飛行が巧みで、後ろ向きに飛ぶことさえ可能です。
しかし、狩りの成功の定義は他にもあると、ベルク氏は話します。獲物を追い回して捕らえる成功率はトンボが最有力候補ですが、エネルギーを使わずに獲物を待ち伏せする狩りの「効率性」では、ニシキヘビのような大型のヘビに軍配が上がるかもしれません。
「ヘビは1カ所にじっととどまって待ち続けることが可能で、そのうち目当ての動物が通りかかるとそれを捕らえて殺します。大蛇の場合、そのようなことは年に2~3回しかないこともあります」とベルク氏は話しました。
一方、カナダ・ビクトリア大学の生物学者であるジェイソン・フィッシャー氏は、「適応能力」という別の尺度から、コヨーテをチャンピオンに推薦しています。コヨーテは群れでも単独でも狩りができ、ヘラジカの子どもからネズミまで幅広い獲物をエサにすることができるのがその理由です。
この柔軟性により、コヨーテは人間の都市を含むあらゆる生息地で繁栄してきました。「コヨーテは利用できる資源を理解し、それを活用することで驚くべき捕食者となります」とフィッシャー氏は語ります。
水中にも、優れた技能で一流の狩人となっている動物がいます。英語圏では「アーチャーフィッシュ(射手魚)」と呼ばれている東南アジアの熱帯魚のテッポウウオは、水中から水面の向こうにいる昆虫との距離を正確に測定し、水を噴射して獲物を撃ち落とすことが可能で、その精度は2フィート(約65cm)以内ならほぼ100%とのこと。また、タコは有名なカモフラージュ能力に加えて、短時間であれば獲物を追跡して陸上まで追い詰めることが可能です。
反対に、「どの動物が最悪のハンターなのか?」というのは、ある意味では最も優れたハンターを決めるより難しい質問だとフィッシャー氏は話します。というのも、現存している動物はすべて厳しい生存競争を勝ち抜くことができているからです。
それでもあえて最も狩りが下手な動物を決めるとなると、クズリが候補になるとのこと。フィッシャー氏は、まず獲物の前に飛び出て大きな声で脅すというクズリの狩りのスタイルを紹介して、「彼らは基本的に、首尾よくいけばもうけもの、うまくいかなければ仕方ないという感じなのです」と話しました。
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