サイエンス

「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイすると重度のうつ病が半減することがドイツの研究で判明、専用プログラムや標準治療より高い効果

by othree

ドイツのボン大学病院の研究チームが、任天堂のNintendo Switch用アクションゲーム「スーパーマリオ オデッセイ」を週3回6週間プレイしたうつ病患者のほぼ半分で症状が劇的に改善し、精神障害者向けに開発されたリハビリテーションソフトよりも高い効果を示したと発表しました。

Frontiers | Effects of a video game intervention on symptoms, training motivation, and visuo-spatial memory in depression
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2023.1173652/full

Cognitive trainings using video games might increase subjective well-being of individuals with depression
https://www.psypost.org/2023/12/cognitive-trainings-using-video-games-might-increase-subjective-well-being-of-individuals-with-depression-215084

Super Mario Odyssey reduces symptoms of depression by almost 50%, concludes a German study - Ruetir
https://www.ruetir.com/2023/12/super-mario-odyssey-reduces-symptoms-of-depression-by-almost-50-concludes-a-german-study/

人の心の研究は大きく分けて「世界をどのように感じるか」という感情的な側面と、「世界をどのように知るか」という認知的な側面の2つあります。うつ病に関する伝統的な研究の多くは、患者の感情面に焦点を当てたものでしたが、近年ではうつ病が認知機能にも大きな影響も及ぼしていることが知られるようになりました。


認知機能の研究に関する新たなアプローチとして注目が高まっているのが、ビデオゲームが人の脳に与える肯定的な側面です。ゲームが普及してから行われてきた数々の研究により、ゲームをプレイすると脳の認知能力が改善されることや、長時間ゲームをプレイしている子どもは知能が高くなることなど、ゲームにはさまざまな効果があることが突き止められています。

そこで、ボン大学精神医学・心理療法学科のモーリッツ・バーグマン氏らのチームは、大うつ病性障害(MDD)と診断された18歳~65歳の入院患者またはデイケア患者46人を対象に、ゲームや認知トレーニング、通常のうつ病治療の成果を比較する研究を実施しました。

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研究チームはまず、患者を3つのグループに分け、1つ目のグループに割り当てられたうつ病患者14人に「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイしてもらいました。「スーパーマリオ オデッセイ」が選ばれたのは、脳の海馬を活用しながら3D環境内を移動するというこのゲームの内容が、海馬を介した記憶能力、特に視覚的および空間的な学習のパフォーマンスに影響を与えると期待できるからだとのこと。なお、実験前に「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイしたことがある人は、今回の研究から除外されました。

そして、2つ目のグループに割り当てられた16人には認知トレーニングプログラム「CogPack」でのトレーニングを、3つ目のグループに割り当てられた残りの16人には標準的な治療を受けてもらい、これらの3つのグループの経過を観察しました。いずれのグループも、トレーニングセッションの頻度は週3回、期間は6週間の合計18回で、各セッションは1回45分間でした。

そして、研究開始時と終了時のうつ病患者の症状を「ベック抑うつ質問票(BDI-II)」で評価して比較したところ、「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイしたうつ病患者のほぼ半数で症状が大幅に改善したことがわかりました。

以下は、BDI-IIのスコアが「軽度」にあたる13ポイント以上だった患者の割合を「ゲーム(左)」「CogPack(中央)」「標準的な治療(右)」で比較した図です。「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイしたグループは実験前の100%から57%へと減少しており、3つの中で唯一統計的に有意な差が現れたグループとなりました。


また、ゲームをプレイしたグループは主観的なモチベーション、つまりやる気もトレーニング用ソフトウェアのグループより高かったとのこと。


一方、視空間記憶をテストする「簡易な視空間記憶検査改訂版(BVMT-R)」と「ウェクスラー記憶尺度のブロックタッピングテスト(WMS-block tapping)」を実施した結果、「CogPack」でのトレーニングを受けたグループは両方でスコアの向上を示したのに対し、「スーパーマリオ オデッセイ」をプレイしたグループではBVMT-Rでしか有意な効果が認められないなど、認知能力の改善では専用プログラムに軍配が上がりました。


この結果から研究チームは「ビデオゲームを活用した認知トレーニングは、主観的な幸福感を高め、より高いレベルのトレーニング意欲を示し、うつ病患者の視空間記憶能力の改善にもつながる可能性があることが示唆されています」と結論づけました。

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in サイエンス,   ゲーム, Posted by log1l_ks

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