約3800万円分・コンテナ2台分の日本製キットカットが輸送途中で行方不明に、一体何が起こった?
ネスレが製造するチョコレート菓子のキットカットは世界中で販売されていますが、その中でも特に日本のキットカットは多種多様にわたるフレーバーが発売されており、海外でも非常に人気が高く定番のお土産品としても知られています。日本製のお菓子を輸入販売する企業が、輸入した日本製キットカット5万5000個を運搬中に奪われて身代金を要求される「戦略的窃盗」事件が発生したと報じられています。
How to Hijack a Quarter of a Million Dollars in Rare Japanese Kit Kats - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/11/08/dining/kit-kats.html
ダニー・テイン氏が経営する「Bokksu」は日本のお菓子を輸入販売する企業で、日本製のキットカットがアメリカのマニアから高い人気を誇っていることから、約25万ドル(約3750万円)の売上を見込んで5万5000個・コンテナ2台分の日本製キットカットを仕入れました。
テイン氏が仕入れたキットカットは無事にカリフォルニアに到着し、Japan Crate Acquisitionという会社が運営する一時保管施設に運ばれました。あとはニュージャージー州にあるBokksuに倉庫に運ばれる予定となっていたとのこと。しかし、キットカットがBokksuの倉庫に予定通り運ばれることはありませんでした。
テイン氏は、保管施設から倉庫にキットカットを輸送するために、Freight Rate Centralという物流管理企業に1万3000ドル(約195万円)で依頼していました。このFreight Rate Centralは経営者のシェーン・ブラック氏が1人で運用している会社で、オンライン上で仕事の募集を行い、問い合わせのあった運転手に仕事を振っていくというシステムを運用しています。今回テイン氏が仕入れたキットカットは、「HCH Trucking」という運送会社に所属するトリスタンという運転手が運ぶ手はずとなっていました。
2023年8月9日に、トリスタンは「コンテナの1台はすでに積み込んで運んでいます。2台目は明日の朝一番に取りに行きます」と、ブラック氏にGmailで連絡していたそうです。しかし、それから2週間が経っても、運ばれているはずのコンテナはニュージャージーに届くことはなかったとのこと。
キットカットはチョコレート菓子なので、真夏の気温で放置されると溶けてしまい、商品価値を失ってしまいます。不安に思ったブラック氏がトリスタンに貨物の状況について問い合わせたところ、「ペンシルバニア州でトラックが故障しました。キットカットは冷蔵されていて無傷ですが、今日中にトラックを修理できなければ保管施設に戻って荷物を降ろさなければなりません」という返事が返ってきたとのこと。
しかし、「カリフォルニアまで3800km以上も走れたトラックがニュージャージーまでの650kmほどの距離を突然走れなくなることがあるのか?」と疑問に思ったブラック氏がHCH Truckingに連絡したところ、なんとトリスタンという名前の運転手はHCH Truckingに所属していなかったことが発覚しました。そして、この衝撃の事実が判明したのとほぼ同タイミングで、トリスタンと名乗る運転手からブラック氏のもとに「私は詐欺師で、HCH Truckingとは関係ありません」と白状するメールが届いたとのこと。
その後の調査で、輸入された日本製キットカットのコンテナの1台がカリフォルニア州ジュルパ・バレーにある冷蔵倉庫に、もう1台がカリフォルニア州オンタリオのAnytime Crossdockという倉庫にあることが判明しました。このうち、Anytime Crossdockは2週間放置されているコンテナ荷物に対して、3830ドル(約58万円)の保管料を請求。ブラック氏はそのうち2000ドル(約30万円)を支払い、残りは後日支払うと述べ、再び貨物運送の仕事をオンラインで募集しました。
しかし、次に請け負ったMVK Transport Inc.に所属するマニーという運転手も、トリスタンと同じように偽の運転手でした。ブラック氏によると、マニーは荷物を運ぶ途中で連絡が取れなくなり、そのまま行方がわからなくなってしまったとのこと。
さらにジュルパバレーの倉庫にある残りのコンテナについては、倉庫の管理会社から「ハリー・センタ」という男との契約でコンテナを預かっているという連絡がありました。ハリー・センタは実在する人物で、オハイオ州で運送業を営んでいますが、ニューヨークタイムズの取材に対して「これは完全に詐欺で、(契約しているのは)私ではありません。頑張ってキットカットが見つかるといいですね」と回答しています。
もちろん荷物の正当な所有者はBokksuなのですが、倉庫の管理会社は「Bokksuが正当な所有者である証拠と保管料の支払いがなければ、荷物を渡すことはできません」と回答。ブラック氏は保安局にも連絡しましたが、司法管轄上の問題で関与できず、解決できなかったとのこと。
結局、テイン氏はブラック氏との契約を解除して報酬の支払いを拒否し、保険の名目でロサンゼルス郡保安局に報告書を提出。しかし、2週間以上も放置されていたキットカットには衛生面で不安が残るため、テイン氏はこのキットカットを廃棄することに決めたとのこと。問題となったキットカットは記事作成時点でも倉庫に保管されており、Bokksuのケビン・サカラスCEOは「私たちはもうこのキットカットに用はないので、適切な所有権を証明し、保管料を支払う人に喜んで進呈します」と述べています。
ニューヨークタイムズによると、キットカットがBokksuの手に届かなかったのは「戦略的窃盗」というサプライチェーンを狙った犯罪であり、近年増加しているとのこと。その目的は個人情報の窃取や恐喝で、要求が満たされない場合は荷物そのものの行方がわからなくなってしまう可能性もあるとのこと。FBIによれば、この戦略的窃盗は年間約300億ドル(約4兆5000億円)の損失を生んでおり、特に食料品がしばしばターゲットになっているそうです。
Bokksuは、トリスタンがGmailで連絡を行っていたことに危機感を持つべきだったと述べ、トリスタンとやりとりをしていたブラック氏の責任を追及しています。しかし、ブラック氏はトラック運転手が常に会社ドメインのメールアドレスを使用するとは限らないと主張。さらに、責任はキットカットのコンテナを偽の運転手に引き渡したJapan Crate Acquisitionにあると主張しました。
しかし、このJapan Crate Acquisitionは、2023年6月の時点でBokkusによって買収されていたため、トリスタンと名乗る男のトラックにキットカットのコンテナを渡したのは、そのコンテナの所有者であるBokkusの子会社だったといえます。この事実を受けて、ブラック氏は「私はこれまで20年以上のこの仕事をしてきましたが、今回ほどおかしな出来事に出くわしたことはありません。私はだまされたと思っていますが、結局誰がだましたのかはわかりません」とコメントしています。
・関連記事
名古屋港をハッキングしたとみられる「LockBit」が今度はボーイングをハッキングし50GB分のデータを流出させたと発表 - GIGAZINE
空輸の方が海上輸送よりも得になるケースがなぜ生まれているのか? - GIGAZINE
Amazonが2024年までに労働力を使い果たす可能性が指摘される - GIGAZINE
中国が世界中の海運データを掌握しつつあるという懸念 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in メモ, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article What happened when about 38 million yen ….