サイエンス

幼児期の脳活動から18歳時点でのIQを予測できるという研究結果


人間の脳は複雑な認知タスクをこなしていない時でも何かしらの活動を行っており、そういう時の脳活動は「安静時脳活動」と呼ばれます。そんな安静時脳活動と子どもの認知発達に関する新たな研究では、「幼児期の安静時脳活動から18歳時点でのIQを予測できる」という結果が示されました。

Resting brain activity in early childhood predicts IQ at 18 years - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1878929323000920


Brain Activity as a Toddler May Predict IQ at Age 18, Decades-Long Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/brain-activity-as-a-toddler-may-predict-iq-at-age-18-decades-long-study-finds

New study finds theta brainwave activity in childhood predicts IQ at age 18
https://www.psypost.org/2023/08/new-study-finds-theta-brainwave-activity-in-childhood-predicts-iq-at-age-18-168068

人間が生まれてからの数年間は生涯で最も脳の発達が早い時期であり、その時期の子どもが置かれた環境は脳の発達に大きな影響を及ぼすと考えられます。人間の安静時脳活動は成人になると比較的安定すると考えられていますが、乳幼児期に安静時脳活動がどのように発達するのか、そして後年の認知機能にどう影響するのかはよくわかっていません。


そこでアメリカとドイツの国際的研究チームは、ルーマニアで行われたBucharest Early Intervention Project(ブカレスト早期介入プロジェクト)という研究のデータを用いて、子どもたちの認知能力の発達を追跡しました。

ブカレスト早期介入プロジェクトはアメリカの大学などがルーマニアで実施した研究プロジェクトであり、乳児期の社会心理的悪影響が子どもの発達に及ぼす影響や、児童養護施設を経験した子どもたちへの介入、里親養育の潜在的な利点などを調べることが目的でした。プロジェクトは2000年頃に開始され、被験者の子どもたちは幼児期から成人期まで発達段階が追跡され、幼児期の脳活動と後年の認知的発達の関連が調査されたとのこと。

これまでの研究では、ずっと児童養護施設で育てられた子どもたちと比較して、里親に育てられた子どもたちの方が成長段階および18歳時点でのIQが高いことがわかっています。また、里親に出される時期が早ければ早いほどIQも向上したとのことで、育つ環境がIQに影響を及ぼす可能性が示唆されています。


今回の研究では、児童養護施設で育てられた子どもたちと里親の下で育てられた子どもたち、そして一度も施設に入らず家庭で育てられた合計202人の子どもたちを対象に、幼児期の安静時脳活動と後年のIQの関連が調査されました。

安静時脳活動は子どもたちが回転するビンゴホイールを見ている最中に測定され、生後20カ月前後(ベースライン)・生後30カ月・生後42カ月の3つの時点の記録が取られました。また、被験者のIQはベースライン・生後30カ月・生後42カ月と18歳時点で測定されたとのこと。

研究チームが幼児期の安静時脳活動と18歳時点のIQについて分析した結果、幼児期の安静時脳活動から18歳時点のIQを予測できることが判明。具体的には、ベースライン・生後30カ月・生後42カ月の安静時脳活動における周波数が4Hz~8Hzのシータ波の量が、18歳時点のIQと有意に相関していたと報告されています。

シータ波は比較的低周波の脳波であり、過去の研究では貧困や社会分化的な不利益といった環境要因に敏感であることが示されています。しかし、今回の研究は幼児期のシータ波を若年成人の認知機能に結びつけた初の研究だそうです。


シータ波は覚醒および睡眠、記憶といった脳活動のほか、不要な神経接続の刈り込み(シナプス刈り込み)にも関連しているとみられています。シナプス刈り込みは精神的なタスクに取り組む際の効率を向上させ、子どもの認知発達の洗練における重要なステップだとのこと。

論文の筆頭著者でメリーランド大学の神経科学者であるエンダ・タン氏は、安静時の脳活動が14年以上後の認知機能を予測したことは、その間に経験する多くの要因を考慮すると驚きだと指摘しています。

その上でタン氏は、「私たちの調査結果は、安静時の脳活動における初期の個人差が、成人期のIQに関連している可能性があることを示唆しています」「この研究はまた、施設での養育と里親養育の介入が人生の早い段階で安静時脳活動に影響を与え、それが成人期までの認知結果を予測したという証拠を提供します」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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