サイエンス

モカエキスプレスやバリグラインダー(コーヒーミル)などさまざまなコーヒー用品をCTスキャンして内部構造を調べた結果は?


アラビアにルーツを持つコーヒーは17世紀になるとヨーロッパでも流行し、20世紀以降は喫茶店だけでなく家庭でもコーヒーが飲まれるようになりました。コーヒーの大衆化に大きな役割を果たしたさまざまなコーヒー用品をCTスキャンで調べた結果を、Nintendo SwitchAirPodsなどのCTスキャン画像を公開するウェブサイト「scanofthemonth.com」が公開しました。

Coffee evolution from the Moka Express to the AeroPress and Fellow Stagg EKG Ket
https://www.scanofthemonth.com/scans/coffee

モカエキスプレス
1933年にイタリア人のアルフォンソ・ビアレッティ氏が開発したモカエキスプレスは、沸騰した水の蒸気圧を利用してコーヒーを抽出する器具です。アルフォンソの息子であるレナートは当初のモカエキスプレスをさらに洗練させ、現代でも見慣れた八角形のデザインや樹脂製のハンドルを採用し、効果的な広告戦略も相まってビアレッティ製のモカエキスプレスは全世界に広まりました。


モカエキスプレスは一番下にある「水を入れるチャンバー」、中央にある「コーヒーの粉を入れるフィルター付きバスケット」、上部にある「淹れたてのコーヒーを収めるチャンバー」の3つの主要なアルミニウム部品で構成されています。


下部のチャンバーに入った水が沸騰して蒸気が発生すると、蒸気圧によってお湯がフィルター付きバスケットを通って上部に押し上げられ、その際にバスケット内部のコーヒー粉を通過します。粉を通って抽出されたコーヒーは、上部のチャンバー内にたまるという仕組みです。CTスキャンの画像からは、バスケットに水が通る小さな穴がたくさん空いているのがわかりました。


なお、scanofthemonth.comがAmazonで購入した新しいモカエキスプレスを古いビアレッティ製モカエキスプレスと比較したところ、新しいモカエキスプレスは鋳造の品質が劣っており、アルミニウム内部に空洞が多数あることがわかったとのこと。これはビアレッティがイタリア国外に製造拠点を移したことが影響しているとscanofthemonth.comは推測しています。


エアロプレス
エアロプレスは元工学教授のアラン・アドラー氏が2005年に発明したコーヒー抽出器具であり、短時間で手軽にコーヒーを抽出できる上に携帯性にも優れているため、アウトドアでコーヒーを飲みたいという人から支持を集めています。


エアロプレスは「円筒形のチャンバー」と「ゴム製シール付きのプランジャー」という2つの主要部品で構成されており、チャンバーにコーヒー粉とお湯を注いで混ぜ、しばらく浸してからプランジャーを押し下げることで空気圧が発生し、コーヒーを抽出する仕組みです。


7年前のエアロプレスをCTスキャンで細かく調べたところ、シリコンシールのガスケットは側面と0.5mmの隙間が存在していました。scanofthemonth.comは、使用後はコーヒーかすを取り除いてプランジャーをチャンバーに完全に押し込んだ状態で保管すれば、ガスケットの摩擦を抑えて寿命を延ばすことができるだろうと述べています。


新しいエアロプレスは古いエアロプレスと比較してプラスチックの密度が低くなっており、CTスキャン画像では暗い色に見えています。この材料の変更により、プランジャーの経時的な摩耗が抑えられるだろうとscanofthemonth.comは推測しました。なお、エアロプレスで水漏れに困っているという人は、「熱すぎるお湯を使わないこと」「フィルターやキャップが緩んでいないか確かめること」「少しコーヒー豆を粗くひいてみること」などに気をつけるといいそうです。


◆グースネックケトル
ドリッパーやフィルターを利用してコーヒーを抽出する際、お湯をコーヒー豆に対して均等に注いで抽出ムラを防ぐため、お湯の注ぎ口が細くなったグースネックのケトルを使用するコーヒー愛好家は多いはず。scanofthemonth.comは、シリコンバレーに本拠を置くFELLOW製の電気ケトルをCTスキャンしています。


注ぎ口には水の流れを制御しやすくするために小さな溝があるほか、ハンドル部分に高密度の重りが埋め込まれていることがわかります。ハンドル部分の重量を増すことにより、お湯を注ぐ際の安定度を増し、お湯の精密なコントロールが可能になるというわけです。また、ケトルの底部分がやや内側に向かってへこんでいるのは、発熱体にさらされる表面積を増して対流の形成を促進し、ケトル全体に熱が行き渡りやすくするためだとのこと。


下部のコイルは1200Wの発熱体であり、ケトルのお湯はわずか3分以内に最適な温度に到達します。また、温度が一定の値を超えた時に電流を遮断し、火災を防ぐためのサーマルカットオフスイッチも備わっていました。


コーヒーミル
コーヒーミルといえばやや縦長の箱に大きなハンドルが付いたものを想像する人もいるかもしれませんが、近年は円筒形のコンパクトなタイプのコーヒーミルが人気です。scanofthemonth.comは、日本のコーヒー用品メーカーであるポーレックスのコーヒーミルをCTスキャンしました。


ポーレックスのコーヒーミルは「バリグラインダー」というタイプで、大きなブレードでコーヒー豆をひくのではなく、「バリ」と呼ばれるのこぎり状の歯でコーヒー豆をひく仕組みです。


バリの部分を拡大するとこんな感じ。下部に向かって逆円錐形に細かい歯が並んでおり、広い表面積でゆっくりとコーヒー豆をひけるようになっています。


角度を変えると、歯がらせんを描くように並んでいるのがわかります。円錐形のバリによってより均一な粒度のコーヒー粉を作ることが可能で、抽出時の詰まりを軽減できるとのこと。また、ポーレックスのコーヒーミルはセラミック製のため熱容量が高く、さびることもない上に粉砕中にコーヒー粉に余計な熱が加わるのも避けることができるとscanofthemonth.comは述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
レゴをCTスキャンで透視、中は一体どうなっているのか? - GIGAZINE

アルカリ乾電池やリチウムイオンバッテリーをCTスキャンした画像が圧巻 - GIGAZINE

歴代AirPodsの中身をCTスキャンでよく見てわかる進化の軌跡 - GIGAZINE

スマートホームの室温調節器を各世代ごとにCTスキャンしてみた結果とは? - GIGAZINE

およそ3500年前のミイラ「アメンホテプ1世」をデジタルで開封して中身をスキャンするとこんな感じ - GIGAZINE

世界で初めて医療現場で使われたMRIスキャナー「Mark-1」 - GIGAZINE

マルウェアを使ってCTスキャンやMRIの画像に「偽のガン腫瘍」を追加したり腫瘍を削除したりすることができる - GIGAZINE

写真フィルムは空港のCTスキャン1回でどれほどダメージを受けるのか? - GIGAZINE

in ハードウェア,   サイエンス,   , Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.