顔認識技術により強盗犯として一度は訴えられた女性が不当逮捕として市を提訴
顔認識技術が万能ではないことを証明する事例はいくつも存在していて、特に、有色人種の認識では誤りが起きやすいことがわかっています。アメリカでは無実の男性が顔認識システムの誤りのせいで1週間拘束される事態が起きていますが、今度は妊娠8カ月の女性を強盗犯であると判断。訴訟は証拠不十分で取り下げとなり、女性が不当逮捕だったとして市を提訴する事態になっています。
Eight Months Pregnant and Arrested After False Facial Recognition Match - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/08/06/business/facial-recognition-false-arrest.html
Detroit woman sues city after being falsely arrested while pregnant due to facial recognition technology
https://www.nbcnews.com/news/us-news/detroit-woman-sues-city-falsely-arrested-8-months-pregnant-due-facial-rcna98447
Woman files lawsuit, claims 'faulty' DPD facial recognition hit prompted her false arrest
https://www.detroitnews.com/story/news/local/detroit-city/2023/08/06/woman-files-lawsuit-claims-faulty-dpd-facial-recognition-hit-prompted-her-false-arrest/70523848007/
そもそもの問題となった強盗事件は、2023年1月29日に発生したものです。被害者はシボレー・マリブに乗っていた25歳の男性で、その日の未明に通りで見かけた女性を車に乗せたとのこと。2人は車内で一緒に酒を飲んだのち、酒屋の駐車場で性行為を行い、10分ほど離れたBPのガソリンスタンドへ移動。ガソリンスタンドで女性を降ろしたところ、女性を迎えに来た男が拳銃を取り出し、被害者男性の財布と電話を奪ったうえ、車まで奪って逃走しました。
2月2日、盗まれたシボレー・マリブに乗っていた男が逮捕されました。また、警察はBPのガソリンスタンドから監視カメラの映像を手に入れ、顔認識技術による女性の特定を開始しました。その結果、浮かび上がったのがポーチャ・ウッドラフさんでした。このとき、警察が顔認識に用いた顔写真は、ウッドラフさんが2015年に免許の期限切れで逮捕されたときに撮影された写真でした。警察が、ウッドラフさんのものを含めた6枚組の写真を被害者に見せたところ、被害者は一緒にいた女性はウッドラフさんだったと答えたそうです。
以下が、デトロイト警察の用いた6枚組写真。上段中央が2015年に撮影されたウッドラフさんの写真です。
この結果を受けて2月16日、デトロイト警察は6人の警察官をウッドラフさんの家に向かわせました。2人の娘を学校に行かせるための準備をしていたところに警察官の訪問を受けたウッドラフさんは、強盗とカージャックの容疑がかかっていることを聞いて「冗談ですか?私は妊娠8カ月で、とてもそんなことはできません」と大きくなったお腹を示したものの、警察官はウッドラフさんを逮捕。デトロイト警察で、ウッドラフさんは11時間にわたり尋問を受け、iPhoneも証拠として押収されたとのこと。
ウェイン郡検察がウッドラフさんを起訴した日、ウッドラフさんは保釈金10万ドル(約1400万円)を支払って釈放され、その足で病院に行って脱水症と診断されました。
ウェイン郡検察は3月6日、「証拠不十分」として訴えを取り下げました。ウッドラフさんは不当逮捕だったとして、ミシガン州東部地区連邦裁判所にデトロイト市を提訴しました。被告には事件を担当するラショーンティア・オリバー刑事も名が上がっています。オリバー刑事はウッドラフさんを容疑者として絞り込むにあたり、2023年現在の免許証の写真が利用可能であったはずにも関わらず、2015年の写真を利用していたことが指摘されています。
訴えに対して、ウェイン郡のキム・ワーシー検事は逮捕状発行を「事実に基づいて適切だった」と述べているとのことです。
The New York Timesは、民間監視団体・デトロイト警察委員会への報告として、デトロイト警察が年に平均125件、ほぼ黒人男性のみを対象として顔認識技術を使用している事実があると述べています。また、顔認証技術を用いた誤認逮捕としてウッドラフさんの事例は6件目で、これまでの5例もすべて黒人だったと指摘しています。
・関連記事
無実の男性が顔認識システムの誤りのせいで1週間投獄される - GIGAZINE
顔認識技術のせいで無実なのに間違って逮捕された男性 - GIGAZINE
顔認識技術の利用は司法捜査・犯罪防止を除き当面不許可とイタリア規制当局が表明 - GIGAZINE
顔識別技術でガールスカウトの母親が「裁判中の弁護士事務所の弁護士」だと判明しイベント会場から追い出されてしまう - GIGAZINE
・関連コンテンツ