光子を正確に検出して「暗闇でもノイズ皆無な写真」「ピコ秒クラスの超スロー映像」「脳のリアルタイムスキャン」などの撮影を可能にする40万画素のフォトンカウンティングセンサーが開発される
センサー内の画素に入ってくる光子を正確に数えることで「超低照度での撮影」や「ピコ秒クラスのスローモーション撮影」などを実現できる「フォトンカウンティング」と呼ばれる技術の開発が進んでいます。新たにアメリカ国立標準技術研究所(NIST)の研究チームが超電導ナノワイヤを用いた40万画素のフォトンカウンティングセンサーの開発に成功したことを発表しました。
A superconducting-nanowire single-photon camera with 400,000 pixels
https://doi.org/10.48550/arXiv.2306.09473
At Last, Single-Photon Cameras Could Peer Into Your Brain - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/single-photon-camera
従来のCMOSセンサーなどのデジタルカメラ向けセンサーでは、ノイズの影響によって光子を正しく検出できない場合があり、「写真にノイズが出る」などの問題が発生してしまいます。世界中で研究が進められているフォトンカウンティングセンサーは、何らかの手法で光子を正確に検出することで「超低照度でもノイズのない鮮明な写真を撮影」「ピコ秒クラスのスロー映像を撮影」「可視光ではない光を検出することで、脳などの器官をリアルタイムで観察」といった既存のセンサーでは不可能な撮影を実現できることが期待されています。
NISTの研究チームは超電導ナノワイヤを用いたフォトンカウンティングセンサーの開発に取り組んでいます。超電導ナノワイヤは「光子が衝突すると電導性が消失する」という特徴を備えており、センサーの各画素に超電導ナノワイヤを組み込むことで「どの画素に光子が当たったか」を正確に検出できるようになります。
超電導ナノワイヤを用いたフォトンカウンティングセンサーはこれまでにも開発されていましたが、超電導を維持するための極低温状態を維持することが困難であったため、画素数を増やすことが難しいという問題がありました。研究チームは複数のデバイスが1本のバスを共有する「共有バス」の仕組みにインスピレーションを受け、1列に並んだ画素から1度に情報を読み取る手法を開発したとのこと。これにより、センサー内に40万画素というこれまでより多くの画素を詰め込むことに成功しました。
フォトンカウンティングセンサーでは「ノイズ皆無な撮影」や「超スロー映像の撮影」などに役立つことが期待されている他、体内に反射した赤外線をとらえることで「リアルタイムでの脳スキャン」などの医療分野での活躍も期待されています。
なお、超電導ナノワイヤ以外の手法を用いたフォトンカウンティングセンサーも世界中で進んでおり、キヤノンは「単一の光子を増幅する」という手法で光子の正確な検出を可能とする「SPADイメージセンサー」の開発に取り組んでいます。キヤノンは2023年4月に320万画素のSPADイメージセンサーを開発したことを発表しており、当該センサーを搭載したカメラ「MS-500」を2023年中に発売予定としています。
世界初SPADセンサー搭載のレンズ交換式超高感度カメラを開発 数km先の暗闇でも被写体を鮮明に捉えるカラー撮影で高度監視に貢献 | キヤノングローバル
https://global.canon/ja/news/2023/20230403.html
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