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AI規制法案は「現状の課題に対処せず競争力を損ねるだけだ」と欧州企業150社以上が公開書簡に署名して猛抗議


EU内で検討されている「AIを管理するための画期的な法案」に対して、自動車メーカーのルノーやビール醸造会社のハイネケン、航空宇宙企業のエアバスなどヨーロッパの150社以上の企業が「ヨーロッパにおける競争力と生産性を脅かす可能性がある」と主張する公開書簡に署名して抗議活動を行っています。

AI Law Draws Pushback From Big Brands in Europe - WSJ
https://www.wsj.com/articles/ai-law-draws-pushback-from-big-brands-in-europe-9a703f2


European VCs and tech firms sign open letter warning against over-regulation of AI in draft EU laws | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/06/30/european-vcs-tech-firms-sign-open-letter-warning-against-over-regulation-of-ai-in-draft-eu-laws/

European companies slam the EU’s incoming AI regulations in open letter - The Verge
https://www.theverge.com/2023/6/30/23779611/eu-ai-act-open-letter-artificial-intelligence-regulation-renault-siemens

European companies hate the EU's new AI rules — here's why
https://thenextweb.com/news/open-letter-eu-ai-act-regulation-stifle-innovation-artificial-intelligence

EUで導入が検討されている「AIの使用を規制する法案」について欧州議会は「この法案はリスクベースのアプローチに従っており、AIが生み出す可能性のあるリスクのレベルに応じて、プロバイダーとユーザーの義務を定めています。また、許容できないレベルのリスクを伴うAIシステムを禁止します」と述べています。

この法案では、社会におけるAIの使用が規制され、AIの使用によってもたらされるリスクが「許容できないリスク」「高いリスク」「限定的」「最小限」という4段階に分類されます。また、分類されたリスクの段階に基づいて、AIの使用禁止や一定の監査要件の下での監視、最小限の透明性の確保が求められます。

EUが「AIの使用を規制する法案」を2023年内に承認へ、いったいどんな法律なのか? - GIGAZINE


一方でシーメンスやエアバスなど、ヨーロッパの150社以上の企業幹部やAI研究者が署名した公開書簡では、「提案された法案は、ユースケースに関係なく、基本的なAIモデルを過剰に規制する可能性があります」と主張されています。

公開書簡では、この法案によって企業のコンプライアンス順守のためのコストと責任へのリスクのバランスが崩れ、企業や投資家が新しいAIイノベーションを開発する際にヨーロッパを離れることが危惧されています。また、「この法案は、私たちが直面している、そしてこれから直面するであろう課題に対処せず、ヨーロッパの競争力と技術的な主導権を脅かすでしょう」と記されており、ヨーロッパがAI開発においてアメリカにさらに遅れを取ることになる可能性が指摘されています。さらに大規模言語モデルが検索エンジンからAIアシスタントにまで組み込まれていることに言及して、「この法案の影響は経済から文化にまで及びます」と述べています。

書簡の署名者の1人であるジャンネット・ツー・フュルステンベルク氏は「EUにおけるAIの規制法は、現在の形ではヨーロッパの競争力に壊滅的な影響を与えるという結論に達しました」と述べています。


さらに公開書簡では「ヨーロッパは傍観者のままでいるわけにはいかない」という決意表明のもと、EU議員に対して、生成AIモデルに対する厳しいコンプライアンス義務を撤回するように要求。代わりに「リスクベースのアプローチにおける幅広い原則」に対応できるものに焦点を当てるよう提案しています。具体的には、AIテクノロジーが進歩するにつれて法律が正しく運用されているか監視するために、業界専門家による規制機関を設立するようにEUに対して求めています。規制機関の設立によって、AIテクノロジーのさらなる進歩とリスクに適応することが可能になるとのこと。

また、EUで検討中の法案に盛り込まれた、新しいAIシステムの安全性テストの義務化やAI生成コンテンツの標準ラベル付け、AIモデル開発における注意義務を支持することを表明しています。


一方でAI規制法の起草を共同で主導したドラゴス・トゥドラッシュ議員は「書簡に署名した企業や人々はテキストを注意深く読まずに、このトピックに既得権益を持っている少数の人によるたき付けに反応したと私は確信しています」と批判しています。また、EUの法案は「基準を定義するための業界主導のプロセスや業界とのガバナンス、透明性を追及するために少々の規制を行うにすぎず、EUの競争力を低下させるための法案ではありません」と述べています。

この法案は今後欧州委員会や欧州議会、加盟国での承認を受ける必要があり、海外メディアのThe Next Webは、「この法案は少なくとも2026年までに施行される予定はありません」と述べています。

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in ソフトウェア, Posted by log1r_ut

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