ハードウェア

Microsoftが10年以内に量子スーパーコンピューターを構築すると宣言


Microsoftが現地時間2023年6月21日に量子コンピューティングに関するロードマップを公開しました。公開したロードマップの中でMicrosoftは、AIと量子コンピューターなどを組み合わせた「Azure Quantum Elements」や量子シミュレーションなどに特化した生成AI「Copilot in Azure Quantum」などの新サービスや機能を発表するとともに、量子スーパーコンピューターの構築について「数十年ではなく数年の規模で考えています」と発言しています。

Accelerating scientific discovery with Azure Quantum - The Official Microsoft Blog
https://blogs.microsoft.com/blog/2023/06/21/accelerating-scientific-discovery-with-azure-quantum/


Microsoft expects to build a quantum supercomputer within 10 years | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/06/21/microsoft-expects-to-build-a-quantum-supercomputer-within-10-years/


Microsoft Says It Will Build a Quantum Supercomputer Within Ten Years | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/news/microsoft-says-it-will-build-a-quantum-supercomputer-within-ten-years

Microsoftが公開した新サービス「Azure Quantum Elements」は、同社の量子コンピューティングのプラットフォーム「Azure Quantum」に追加された研究者向けのサービスで、高性能計算(HPC)に最適化されたシミュレーションやAIを用いた推論、既存の量子コンピューターによる計算などをAzureのプラットフォーム上で実行できます。

Microsoftによると、「Azure Quantum Elements」を用いることで、研究規模の大幅な拡大や化学シミュレーションの約50万倍の高速化、AIを利用する事による精度向上などが可能とのこと。特に、速度向上についてMicrosoftは「50万倍の高速化は、1年を1分に圧縮するようなものです」と語っています。

また、Microsoftのサティア・ナデラCEOは「私たちはAIと量子コンピューティングを統合したAzure Quantum Elementsを用いて、科学的発見における新時代の幕開けを目指しています。私たちの目標は、化学と材料工学の分野で250年かかる研究を25年に圧縮することです」と述べています。

Today, we are bringing together AI and quantum with Azure Quantum Elements, ushering in a new era of scientific discovery. Our goal is to compress the next 250 years of chemistry and materials science progress into the next 25. https://t.co/UIkIZpqkXg

— Satya Nadella (@satyanadella)


量子関連の計算やシミュレーションの支援に特化して訓練されたAIが「Copilot in Azure Quantum」です。量子シミュレーションなどを実行する際に、「Copilot in Azure Quantum」を利用する事で、コード作成の補助やデータの視覚化、複雑な概念に対するガイド付きの回答などを得ることができるとされています。Microsoftは「Microsoft 365 Copilot」や「Microsoft Security Copilot」などのAIがアシストするサービスを相次いで発表しており、「他のMicrosoft製品のCopilotがソフトウェア開発や生産性、検索を変革しているように、Copilot in Azure Quantumではより安全で持続可能な製品の開発や薬品開発の活発化、環境問題の解決など、科学的発見を変革できる可能性があります」と述べています。

「Azure Quantum Elements」や「Copilot in Azure Quantum」などの量子コンピューティングの技術発展を受けて、Microsoftの先端量子開発担当副社長であるクリスタ・スヴォア氏は「達成すべき中間的なマイルストーンはまだまだ山積みですが、私たちは、量子スーパーコンピューターの構築にかかる期間を数十年単位ではなく、数年単位で考えています」と主張しています。


2022年にMicrosoftは優れた量子コンピューターの実用化の鍵を握るとされる「マヨラナ粒子」を用いた量子ビットを作成する能力があることを発表し、2023年には量子スーパーコンピューターの構築に必要なマヨラナ量子ビットの作成に成功したことを示す査読付き論文が公開されています。

スヴォア氏は「私たちはようやく基礎的な実装レベルに到達したところです。現在の量子マシンを実用化するには信頼性が不足しています。そのため、私たちが目指すべき次の段階は、信頼性の向上です。物理的な量子ビットだけでなく、論理的な量子ビットを使用して、信頼性の高い量子演算を毎秒100万回実行し、1兆回の計算で失敗が1回という高い精度の量子コンピューターを開発する必要があります」と述べています。

Microsoftによると、量子スーパーコンピューターの構築に向けた次のステップに「ハードウェアで保護された量子ビットの作成」があるとのこと。作成された量子ビットは、1辺が10ミクロン以下という微細な量子ビットで、1回の演算にかかる時間が1マイクロ秒以内という超高速な計算ができるとされています。量子コンピューターの開発には、より小さなマルチ量子ビットのシステムを構築し、完全な量子システムの実証が必要です。


Microsoftは「量子コンピューティングの発展によって、科学者や企業には日常のさまざまな要素に革命を起こす数多くのチャンスが到来しています。量子コンピューティング技術は、イノベーションと経済的な成長の新時代を切り開くことができるでしょう」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
量子コンピューターに関する論文が続々と撤回されている理由を「マヨラナ粒子」の研究者が解説 - GIGAZINE

「量子コンピューターのロードマップ」をIBMが公開、2023年にはついに1000量子ビットの大台に乗る計画 - GIGAZINE

Googleが1万年かかる計算問題を3分20秒で解き終える量子コンピューターを完成させる - GIGAZINE

量子コンピューターの内部では一体何が起こっているのか? - GIGAZINE

Microsoftの量子コンピューター構築のカギだった「マヨラナ粒子」を観測したという論文が撤回される - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.