サイエンス

音痴の正体である「失音楽症」とは医学的にどんな症状なのか?


カラオケに行くと、歌がうまい人もそうではない人もいますが、世の中には音程がまったく合わない「音痴」の人もいます。そもそも「音痴」とは具体的にどんな現象なのかについて、科学系ニュースサイトのLive Scienceが専門家の話を元に分かりやすくまとめました。

Are some people actually tone deaf? | Live Science
https://www.livescience.com/human-behavior/are-some-people-actually-tone-deaf

Live Scienceによると音痴はれっきとした神経疾患で、専門用語では「失音楽症(amusia)」というとのこと。しかし、音楽の才能がないからといって失音楽症であるとは限らず、失音楽症の人の割合は人口の4%程度だと推定されています。

失音楽症の程度は人それぞれで、メロディーの認識に手間取るといった軽度のものから、異なる音符の区別ができない重度のものまで分かれます。失音楽症の発生メカニズムについて、音楽と神経認知の関係を専門とするモントリオール大学の心理学教授のイザベル・ペレッツ氏は、「大半の患者は遺伝性です。つまり、ほとんどは生まれつきだということです。先天性失音楽症は遺伝するものなので、失音楽症の患者の兄弟姉妹も半分は失音楽症になります」と話しました。


ペレッツ氏によると、失音楽症は音楽が豊かな環境で育ったかどうかとは関係ないとのこと。なぜなら、8歳の子どもにも失音楽症が見られることが分かっており、症状も大人の失音楽症と同じだからです。

また、中には生まれつきではなく、脳卒中や脳外傷の結果として失音楽症になる人もいます。しかし、この後天的失音楽症は非常にまれで、一般的な症状ではないとのこと。


先天性失音楽症の場合、症状もさまざまです。ロンドンにあるギルドホール音楽演劇学校の研究員であるカレン・ワイズ氏は「先天性失音楽症の主な影響のひとつは、歌詞の助けを借りないと前に聞いたことがある音楽をほとんど認識できないことです。とはいえ、失音楽症の症状は人によって異なるので、経験する問題もさまざまです」と話します。

失音楽症の最も一般的な形態は音程によるもので、失音楽症を持つ成人11人を対象とした2002年の研究では「先天性失音楽症は音程、つまりピッチの変動の処理における重大な欠陥」と結論付けられています。


ワイズ氏によると、失音楽症の多くはピッチ知覚に問題があるため、ピッチの差が大きくなければ違いを認識できないとのこと。また、ピッチの上昇とピッチの下降の変化の違いを区別するのが困難で、一連の音符によって作られたパターンが認識できないケースもあります。

多くの場合こうした問題は音楽に特有のもので、失音楽症の人でも一般的な環境音や人の声、スピーチのリズムといった音楽的性質を処理して認識することができたと前述の研究の著者らは記しています。これは、人の声のイントネーションが半オクターブ以上のピッチの変化を用いて情報を伝達するものなのに対して、音楽のメロディーはピッチの間隔が小さいからだと考えられています。

場合によっては、失音楽症により人が話す声の音階を処理するのも困難なケースもありますが、会話で使われるコミュニケーションの手がかりはイントネーションだけではないので、日常生活の中ではそれほど目立つ問題にはならないだろうと、ワイズ氏は話しました。


失音楽症の人の中には、そのことを自覚している人もいますが、長年気づかなかった人や、場合によっては気づくことなく生涯を終える人もいます。これは、失音楽症の形態も重症度も人によって大きく異なるからです。例えば、歌を歌うときにも音程を合わせるのが難しい人がいれば、メロディーを感じ取るのが難しい人もいます。

また、ピッチの変化を正確に認識できなくても、歌詞やリズムなど他の手がかりを頼りにして歌を歌うことで、知らず知らずのうちに失音楽症の症状を補えるようになる人もいると考えられています。

ペレッツ氏は、「失読症の人が字を読めるようになるのと同様に、失音楽症の人も早い時期から努力を始めれば、音程を認識する能力を向上させることができるはずです」と話しました。

自分が失音楽症なのかどうかを確認したい場合は、以下のサイトにアクセスすると、2つの音が同じかどうかをクリックするだけで診断を受けることができます。

ToneDeafTest.com - Find out if you are tone deaf or not
http://tonedeaftest.com/


簡単なテストとのことなので、実際にやってみるべく「Start」をクリックします。


楽器を演奏している場合は「Yes」、していない場合は「No」をクリックします。ここでの選択はテスト結果には影響しません。


まずは、2つの音が同じか違うかを聞き比べる問題です。同じ場合と違う場合のサンプルが表示されているので、再生して音を確かめてから「OK」をクリック。


左2つの再生ボタンを押して音を聞き比べて、同じ場合は「same」を、違う場合は「different」をクリックします。


2種類目のテストは、音が上昇するか下降するかを答える問題。サンプルの音が上に抜けていく場合は「up」を、逆なら「down」を選びます。


3種類目には、AとBの音を聞いて、Bの方が高いか低いかを選択する問題も出ました。


ボタンをクリックしていくだけで、自分が失音楽症なのかどうかが診断できました。今回チャレンジした編集部員の場合は、失音楽症ではなかったようです。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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