「本物の戦争とゲーム動画の見分け方」を戦争の映像としてフェイクによく使われるゲーム「Arma 3」開発者自らがYouTubeで公開
軍事シミュレーションゲーム「Arma 3」の映像が現実に撮影された映像であるかのように流通していることについて、開発元のBohemia Interactiveがフェイクニュースの拡散をやめるよう求めました。2013年に発売されたこのゲームはMODを使ってあらゆる紛争を詳細に再現できるため、フェイクニュースとして拡散される可能性が高いとのことです。
Arma 3 footage being used as Fake News | Blog | Bohemia Interactive
https://www.bohemia.net/blog/arma-3-footage-being-used-as-fake-news
Military Sim Developer Tired of Its Game Being Used to Fake War Footage
https://www.vice.com/en/article/g5vnkq/military-sim-developer-tired-of-its-game-being-used-to-fake-war-footage
2022年11月28日、チェコに拠点を置くBohemia Interactiveが声明を発表し、Arma 3から引用された映像が主にロシア・ウクライナ戦争など現実の紛争のものとして流通していることについて、対応したいと考えていることを明らかにしました。
Arma 3から引用された動画はFacebookやTwitter、YouTubeなどで広く拡散されており、現実のものだと勘違いされることもあるとのこと。一例として挙げられる以下の動画には「ウクライナの無人攻撃機がロシアの軍艦を攻撃した」というタイトルが付けられていますが、実際はArma 3の映像です。投稿者は動画の概要欄にて「ゲームの映像である」と明記していますが、この動画の一部を切り取られたものが、現実の映像としてFacebookにアップロードされました。
In Odessa (Ukraine) Bayraktar TB2 Drone massacred Russian Cruiser Frigate Warships Admiral Makarov - YouTube
また、2022年7月20日に別の人物が投稿した以下のArma 3の動画も、投稿者の意図に反する形でTwitterに再投稿されました。
Ukraine NLAW Anti-Tank Missile Destroyed 2 Russian Tanks - Arma 3 Game (Military Simultaion) - YouTube
Arma 3の舞台は2035年の近未来的な世界ですが、Armaシリーズはユーザー制作のMODファイルにより自由にカスタマイズできるようになっているため、ユーザーの手によって作られたさまざまな武器、装備、シナリオが数多く作られています。そのため、過去・現在・未来を問わず現実のあらゆる紛争を詳細に再現し、シミュレートできるそうです。
Bohemia Interactiveは「現代の戦争紛争をリアルにシミュレートできるのは喜ばしいことですが、実際の戦闘映像と間違われ、戦争のプロパガンダとして利用されることは、喜ばしいことではありません」と苦言を呈しました。
過去にはArmaシリーズの映像をロシアのテレビ局がシリア内戦のものと取り違えたり、イギリスのテレビ局がIRAのテロ攻撃と間違えたりする事例も見受けられました。Bohemia Interactiveは動画が投稿される各プラットフォームにフラグを立てることで対抗しようとしていますが、動画が1本削除されるごとに別の10本がアップロードされているため、ほとんど効果がないそうです。
そのため、より優れた影響力と能力を持つ大手メディアやファクトチェッカー団体と積極的に協力することが最善の方法だとして、今後に向けて対応していくとの考えを明らかにしました。また、Bohemia Interactiveは「開発者からのアドバイス」として、ゲーム内の映像と現実の映像の見分け方を以下の通り示しました。
◆非常に低い解像度
時代遅れのスマートフォンでもHD画質で動画を共有することができますが、フェイク動画はゲームの映像であることを隠すために、意図的に画質が落とされ、ぼやけています。
◆手ぶれ
ドラマチックな演出のために、フェイク動画はゲームをそのままキャプチャするのではなく、モニターなどに写したものを撮影したものが使われることがあります。
◆暗い場所や夜間の動画
ディテールをごまかすために、映像は暗いことが多いとのこと。
◆音声がないことが多い
ゲーム内の効果音は現実と区別がつきやすいため、フェイク動画は無音であることが多いそうです。
◆動いている人間が出てこない
Armaは軍用車両の動きは比較的リアルに再現できますが、自然な人間の動きを再現することは非常に困難だとのこと。そのため、フェイク動画には動く人間が登場しないそうです。
◆HUD要素が見える
フェイク動画にはゲーム特有の武器選択画面、残弾数、車両の状態、ゲーム内メッセージなどが見えることがあります。これらは通常、映像の端や隅に表示されます。
◆不自然なパーティクル(粒子)エフェクト
最新のゲームでも、爆発や煙、炎、塵の状態を自然に描写することは依然として大きな課題です。Armaでも例外ではなく、このような描写から見分けることができます。
◆非現実的な車両、制服、装備
Bohemia Interactiveいわく、高度な軍事装備の知識を持つ人は、紛争にふさわしくない装備が使用されていることに気づくことができるそうです。例えば、広く流布しているフェイク動画では、アメリカの防空システム「Counter-RAM」がアメリカの地上攻撃機「A-10」を撃墜している様子が映っているとのこと。
実際にBohemia Interactiveが用意した比較動画が以下のもの。Arma 3の動画に手振れが加わったものがフェイク動画として編集されており、この動画は低画質かつ無音で、人間が登場しないことが分かります。
Arma 3 footage being used as Fake News - YouTube
Bohemia Interactiveは「Arma 3のプレイヤーおよびコンテンツ制作者の皆様には、ゲーム映像を責任を持って使用していただくようお願いいたします。そのような素材を共有する際には、『釣り』要素を含むタイトルの使用は控え、必ずビデオゲームに由来する映像であり、現実の出来事を描いたものではないことを明記してください」と述べました。
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