TwitterのCEOがディック・コストロ氏からジャック・ドーシー氏に交代したばかりの2015年~2016年頃、Twitterは経営上の問題に直面しており、外部の人々が考えている以上にTwitter閉鎖の危機が間近に迫っていたとのこと。
当時のKrenzel氏はソフトウェアエンジニアとして、新興市場の人々がTwitterをより使いやすくするために、帯域幅・メモリ使用量・バッテリー消費量の削減といったタスクに取り組んでいました。
Twitterのモバイルアプリでユーザーの操作ログをアップロードする方法を改善することで、モバイル帯域幅の消費量を大幅に削減することに成功したKrenzel氏は、Twitterアプリのモバイルログ担当者として認知されるようになったとのこと。
そんな中、Twitterはある大手通信会社からの「北米で信号強度データを送信してほしい」という依頼を受けました。場所ごとの信号強度データを収集・送信するサービス開発に取り組んだKrenzel氏は、他のデータソースと組み合わせた場合でも匿名性を維持できる範囲を見つけました。
ところが、通信会社は「このデータは役に立たない」と不満を表明し、今度は「競合他社の店舗にユーザーが入ったかどうかを知りたい」と言い出したとのこと。Krenzel氏はプライバシーを尊重する方法で要望された機能を実装しましたが、やはり通信会社は不満を感じていました。そこでKrenzel氏が通信会社のディレクターとミーティングを行ったところ、ディレクターは「ユーザーが家を出る時、通勤する時、1日中どこにいてもわかるようにしておくべきです。それ以下では意味がありません。他のハイテク企業からはそれ以上のデータを得ています」と述べたそうです。
ユーザープライバシーを軽視し、識別可能なユーザーの位置データ販売を求める通信会社に対し、Krenzel氏は「そんなことやるわけがない」という内容をえん曲的に伝えたとのこと。Twitterの内部で行われた会議では、法務部はユーザーの利用規約に照らし合わせても問題ないと主張しました。しかし、Krenzel氏のチーム全体がプライバシーの問題があると認識しており、Twitterも大規模なレイオフを実行したばかりであったため、代わりにユーザープライバシーを損なうような機能を開発するために割ける人員はいませんでした。
Krenzel氏のチームはレイオフの影響を受けていませんでしたが、人材の流出は止まらなかったとのこと。Krenzel氏自身も「もはやTwitterは良い仕事ができる場所ではない」と感じたために退職を決意し、その過程で通信会社とのプロジェクトを中止させるための行動にも従事したそうです。Krenzel氏は、ある新任マネージャーに「ダンプカーにお金を積んで君にあげたら、Twitterに残ってこの製品を作ってくれるか?」と言われたことが忘れられないと述べています。
Krenzel氏がTwitterで最後に書いたメールは、当時のCEOだったドーシー氏に宛てたものでした。通信会社とのプロジェクトについて記したメールに対し、ドーシー氏はすぐに「誤解がないかどうか調べさせてください。これは正しいことではありません。そんなことはやりたくないのです」と返信してきたとのこと。その後、Krenzel氏の知る限りプロジェクトは停止されたとのことで、ドーシー氏は実際にこのプロジェクトに不満を持っていたとKrenzel氏は述べています。しかし、「この考え方がTwitterの新しい所有者に当てはまるかどうかはわかりません。私はイーロンがデータを使ってさらに悪いことをすると思います」と述べ、今後のTwitterにおけるユーザープライバシーに懸念を示しています。
スレッドのまとめとして、Krenzel氏は「まだTwitterにいる従業員は、自分が持っているポケットビート(大統領が行使できる拒否権のこと)の力を過小評価しないでください。うまくいかないこともあれば、エスカレートして逆風にさらされるリスクもありますが、良いポケットビートは使って学ぶものです」と、Twitterの従業員に呼びかけました。