3Dプリンターで作った銃パーツと銃の買い戻しプログラムを悪用して300万円以上を荒稼ぎした人物が現れる
アメリカ・ニューヨーク州の司法長官が、銃の買い戻しプログラムのルールを一部変更しました。これは、3Dプリンターを用いて銃の部品を大量に作成し、2万1000ドル(約310万円)を荒稼ぎした人物が現れたためと報じられています。
New York changes gun buyback after seller gets $21,000 for 3D-printed parts | New York | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2022/oct/11/new-york-gun-buyback-rules-3d-printed-parts
The Guardianは銃の買い戻しプログラムを悪用した人物と連絡を取り、匿名で「どのようにして銃の買い戻しプログラムを悪用したか」を聞き出すことに成功しています。この人物は2022年8月27日にニューヨーク州ユティカで開催された銃の買い戻しイベントに、ウェストバージニア州から参加したそうです。
イベントに参加したこの人物は、3Dプリンターで出力された60個の自動シアー(逆鉤)用パーツを銃の買い戻しプログラムに提出。イベントはニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官と市警が主催しており、買い戻しルールには「シリアルナンバーがない銃は『ゴーストガン』とみなされ、パーツ1つにつき350ドルを受け取る権利がある」とされていたため、60個のパーツを提出して2万1000ドル分のギフトカードを受け取ることができたそうです。
銃の買い戻しプログラムを悪用した人物は、イベントに参加した理由について「金儲けの要素もあるものの、大きな理由はメッセージを送るためだった」「イベントの運営側は、銃、銃犯罪、銃規制を取り巻く法律についてまったく教育を受けていないかのようだ」と語っています。
ジェームズ司法長官は事務所の担当者に「買い戻し銃器の価値を判断する裁量」を与えていました。担当者は、3Dプリンターで作成された銃に「2回以上銃弾を発射できる必要がある」という軽い基準しか設けていなかったため、買い戻しプログラムを悪用されることになったとThe Guardianは指摘しています。
なお、ジェームズ司法長官はプログラムの悪用を受けてルールを一部変更し、その後、2022年9月17日にニューヨーク州シラキュース郊外で再び買い戻しイベントを実施。司法長官事務所は「我々のコミュニティで実施されている、銃による暴力から人々を守るための買い戻しプログラムを悪用する人物が現れたということは、本当に恥ずべきことです」「我々は州全体の地元警察と提携し、3500丁以上の銃を回収してきました。1人の個人による貪欲な行動が、すべてのニューヨーカーの公共の安全を守るための戦いを止めることはありません」と述べ、プログラムを今後も継続するとしました。
銃の買い戻しプログラムは政府関係者が一般市民の所有する銃器を減らすために行う定番のイベントのひとつで、同イベントでは「違法な銃器を提出した人物には細かな質問などを行わずに恩赦を与える」というのが一般的だそうです。買い戻しプログラムで提出される銃器の中には合法的なものもありますが、銃器の所有を許可されていない人物による銃の提出や、違法に改造された銃器が提出されるケースもあります。
なお、アメリカではジョー・バイデン大統領が2022年4月に連邦法の下での銃器の定義を変更し、3Dプリンターで作成されたものを含む、未完成のパーツも銃器に含むとしました。
ニューヨーク州の司法長官事務所は2013年から銃の買い戻しプログラムを行っており、ジェームズ司法長官はゴーストガンが「銃による暴力のまん延を助長している」と警告し、買い戻しプログラムがその解決策の一部として役立っていると主張しています。
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