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Twitchは「人気配信者が脅迫やストーカーに遭遇しやすい問題」の対策を迫られている


ゲーム配信プラットフォームのTwitchは当初ゲームと関係ないコンテンツに制限をかけていましたが、その後規制を緩和したことで、ゲームプレイだけではなく雑談やお絵描きなどの配信活動も可能になり、さまざまな人気配信者を輩出しました。しかし、そういった人気配信者は常にごく一部の視聴者から嫌がらせやストーキングの被害に遭っており、Twitchはこうした被害を増やさないための対策を迫られています。

Does Twitch Fame Have to Come With a Stalker? - The New York Times
https://www.nytimes.com/2022/07/29/technology/twitch-stalking.html

Twitch配信者のAmouranthことKaitlyn Siragusaさんは、基本的に水着や露出度の高い服、ゲームのキャラクターのコスチュームを着て、エクササイズをしながら視聴者と雑談をするのが配信活動のメインとなっています。Twitchは「泳ぐ予定がないのであれば、水着を着て配信することはおすすめしない」と述べていますが、Siragusaさんはビキニで配信し、月に約12万ドル(約1600万円)を稼いでいるとのこと。また、Siragusaさんは性的なコンテンツが多く投稿されるOnlyFansでも毎月100万ドル(約1億3000万円)以上を稼いでいます。

しかし、そうした配信をTwitchで行っているため、Siragusaさんに対する嫌がらせや脅迫、ストーカー行為が続いているとのこと。Siragusaさんは番犬や銃を購入し、防犯カメラを設置。「あとはワニのいる堀を作る以外に何をすべきなのかわかりません」とSiragusaさんは述べています。

I have a stalker who has been in my area since may 8th.

He literally watches my stream all day and badly mimics everything I do (does ASMR badly, takes a shower on his twitch stream when I’m in the hot tub). In the past I have reported him for RE-streaming me but

— Kaitlyn (@wildkait)


Twitchは「嫌がらせや脅迫はTwitchでは絶対に許されません。私たちは自由に使えるあらゆる手段を使って、危害のリスクを最小限に抑え、コミュニティに引き起こされた危害に対応します」と述べています。

ゲームコミュニティのメンタルヘルス対策を目的とした非営利団体・Take Thisのリサーチディレクターで心理学者でもあるRachel Kowert氏は、Twitchの配信者とファンは「半相互的なパラソーシャル関係」だと述べています。パラソーシャル関係とは、直接面識のない著名人に対してメディアを通じてつながることで抱いてしまう一方的で想像上の関係のことです。例えば、テレビでいつも見ているアイドルを好きになってしまい、プライベートではまったく接点がないにもかかわらず、勝手に相手と親しい関係にあるように感じてしまうのは「パラソーシャル関係を築いてしまっている」といえます。


しかし、Twitchの場合は完全に一方通行であるテレビと異なり、ファンのコメントに対して配信者が反応を示すことがあります。ライブ配信を介して本質的に「同じ時間に同じ場所にいる」ということも働いて、ファンが配信者に対してより親密さを感じやすくなります。さらに、新型コロナウイルスのパンデミックによって外出が規制されたため、ライブ配信で孤独や憂うつをまぎらわす人が増えたことも、こうした半相互的なパラソーシャル関係が構築される一因となったと、Kowert氏は指摘しました。

Twitch配信者のBrookeABことBrooke Bondさんは、大学在学中にゲーム配信者として活動を始め、eスポーツ団体からロサンゼルスにある配信者用物件への引っ越し費用の負担を提案されるほどの人気を得ました。しかし、なぜかこの提案をきっかけに、「Bondさんの人生は俺のもの」といわんばかりに執着するファンが現れ、SNSにBondさんやBondさんの家族の住所がさらされ、殺害予告の脅迫状を送りつけられたこともあったそうです。

Bondさんによると、Twitchは協力的でプラットフォームから問題のアカウントをBANした上で、警察への通報やインターネットから個人情報を削除する方法をアドバイスしてくれましたが、具体的な解決法はわからないまま。Bondさんは私立探偵に何百万円も支払い、FBIも巻き込んで嫌がらせをする人を特定することで対応してきたとのこと。状況は比較的マシにはなったそうですが、今でも脅迫は続いているそうです。


Bondさんは「Twitchは助けようとしてくれていますが、ただ何をしたらいいのかわからないだけなのです」と語っています。一方で、多くの配信者のマネジメントを行うDavid Huntzinger氏は「ライブ配信者はちょっとした会話から個人情報が特定されてしまうリスクがあります。18歳で一夜にして有名人になった人が、こうした問題をすべて熟考しているとは思えません」と述べました。

Twitchの広報担当者は、今後数カ月以内に現実世界で起こるリスクを配信者に説明するセッションをライブ配信で行う予定だと述べています。また、Twitchの最高製品責任者であるTom Verrilli氏は設定ページで連絡先情報を隠すことで、配信上でうっかり自分の住所や電話番号をさらしてしまう危険性を減らすなど、プラットフォームに安全性を組み込む取り組みを強化していると述べています。

Twitchのトラスト&セーフティ部門のグローバルヴァイスプレジデントを務めるAngela Hession氏は、Twitchと現実で自分自身を守る方法について、個人情報のさらし上げやストーキング、スワッティングを防止するためのヒントを記載したセーフティセンターを用意しているものの、「安全な環境を作ろうとしましたが、できることは限られています。会社が法執行機関から有効な要求を受けない限り、問題のある人物の身元を特定するような情報を提供することはできません」と述べています。

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in ネットサービス,   セキュリティ, Posted by log1i_yk

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