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Appleのドロドロの社内政治を暴露した「複合現実ヘッドセット」の開発関係者のインタビューが公開される


2015年に開発が始まって以来さまざまな課題に見舞われ、幾度となく発売の予定が延期されてきたというAppleの「複合現実(MR)ヘッドセット」の内情について、Appleの内部関係者から聞き取った結果をまとめたレポートを、海外メディアのThe Informationが公開しました。

The Inside Story of Why Apple Bet Big on a Mixed-Reality Headset — The Information
https://www.theinformation.com/articles/the-inside-story-of-why-apple-bet-big-on-a-mixed-reality-headset

Apple’s mixed reality headset project challenges explained - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2022/05/17/apple-headset-challenges-explained/

Apple's Struggles With Long-Rumored AR/VR Headset Detailed in New Report - MacRumors
https://www.macrumors.com/2022/05/17/apple-ar-vr-headset-technical-challenges/

The Informationは、AppleでMRヘッドセットプロジェクトに携わっていた人を含む関係者10人にインタビューを行いました。その話によると、Appleの社内では開発が始まった直後の2016年に、取締役会向けに初期のプロトタイプのデモンストレーションが行われたとのこと。アメリカの元副大統領のアル・ゴア氏、ディズニーのCEOでもあったロバート・アイガー氏を含むAppleの重役らは、部屋から部屋へと移動しながら、試作品のヘッドセットを試しました。

Appleが当時取り組んでいたのはMRヘッドセットではなく、完全にコンピューターが合成した世界を見る仮想現実(VR)のものや、現実世界の映像にVRの映像を重ねる拡張現実(AR)のもので、デモの1つは机の上にミニチュアサイズのサイを登場させるというものだったとのこと。


サイがミニチュアサイズから実物大になったり、殺風景な室内が緑豊かな森の中に変わったりするデモは、ARよりもさらに高度に現実世界とVRを統合するMRのアイデアに通じるものがあったものの、お世辞にも洗練されているとは言いがたいものでした。例えば、試作品の中にはWindowsを搭載した急ごしらえのものもあれば、HTCのVRデバイスであるVIVEを改造しただけのものもありました。また、重すぎて首に負担がかかるので、小さなクレーンでつり下げながら着用しなければならないものもあったそうです。

それでも、Appleの取締役会は先行するMeta(当時Facebook)への焦りなどからヘッドセットのプロジェクトにゴーサインを出しましたが、プロジェクトはすぐに難航しました。その原因の1つは、ティム・クックCEOの消極的な姿勢です。


スティーブ・ジョブズがiPhone開発に積極的に関与したのとは対照的に、クックCEOはヘッドセットを口では支持しつつも関与には乗り気ではないため、Appleのメインキャンパスから離れた場所にある開発グループのオフィスにもほとんど足を運ばないとのこと。そのため、ヘッドセットの開発チームはiPhoneやMacとは違って豊富な人員や技術リソースにアクセスすることが難しいと、関係者は語っています。

その象徴となるのが、2018年初頭の出来事です。当時、ヘッドセット開発チームは「T100」と呼ばれるAppleのトップ社員100人への重要なデモでPRするために、ヘッドセットの試作品のカメラ機能を高速化させたいと考えていました。そこで、開発チームはAppleでカメラ関連を担当するエンジニアリンググループに、カメラの映像処理速度を向上させるファームウェア機能を追加してほしいと依頼しましたが、「ヘッドセットは優先順位が低いので、年末にiPhone XSが出荷されるまで待って」と言われてしまったそうです。


もう1つの問題は、元最高デザイン責任者のジョナサン・アイブ氏の存在です。VRヘッドセット開発への協力を取り付けるために、Apple社内を奔走していたチームリーダーのマイク・ロックウェル氏を、アイブ氏は「VRは外界から遮断されるのでユーザーに疎外感を与えるし、不格好で実用的な用途に欠ける。消費者がそんなヘッドセットを長時間装着したがるとは思えない」と突き放したとのこと。

これを受けて、ロックウェル氏らはVRからMRへとかじを切りましたが、そのコンセプトは迷走を重ねました。例えば、開発チームは解決案として、ヘッドセットの前面にカメラを取り付けてユーザーが周囲を確認できるようにしましたが、最終的にデザイナー陣が納得したのは、「ヘッドセットの外側に画面をつけて装着者の目や表情が周囲の人に見えるようにする」というものだったとのこと。また、ベースステーションデバイスを使うとのアイデアにもアイブ氏は渋い顔をしたので、開発チームは単体で動作するものの性能は落ちるヘッドセットに軸足を移さざるを得ませんでした。

試行錯誤を繰り返しながらも、Appleは2023年にMRヘッドセットを2000ドル(約25万円)から3000ドル(約38万円)の価格で発表する可能性があると報じられています。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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