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アニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」途中までレビュー、さまざまな「逃亡」を助ける「逃げアニメ」


2022年4月から「エスタブライフ グレイトエスケープ」の放送が始まりました。「魔改造された東京」を舞台に、「逃げたい」と思っている人を「逃がし屋」が逃がす姿を描くアクションアニメで、原案・クリエイティブ統括を谷口悟朗さんが担当しています。原作がないオリジナルアニメであることに加えて、かなりスピーディに展開する作品なので「なにが起きているんだ……」と振り落とされてしまいそうな人もいるかもしれません。以下、細かいネタバレは省きつつ、視聴の一助となるかもしれないレビューをまとめてみました。

アニメ「エスタブライフ」公式サイト
https://establife.tokyo/


ネット上でよくある言説として「嫌なことがあればすぐに逃げるべき」というのがあります。「無理してその場にいる必要はなく、我慢せずに逃げるべき」というもので、たとえばブラック企業で朝から深夜まで一切の休憩もなく働かされ、自宅に戻ることもできずに過労状態となっている場合、「辞めたい」といっても辞めさせてもらえない、みたいなものがまさに「すぐに逃げろ」ということになる事例です。

が、このような「すぐ逃げるべき」言説で大きく見落とされている要素として、「そもそもそんなにすぐ逃げることができるのであればとっくの昔に逃げている」というものがあります。すでに追い詰められている以上、肉体的にも精神的にもギリギリの状態であり、とても自力で脱走できるだけの気力や体力、手段などが失われているという場合が実際にはほとんど。つまり「逃げたくても自分一人ではもうどうすることもできない」というわけです。

「エスタブライフ」の第1話はこの「自分一人では逃げることができない」「でも逃げたい」という一種のジレンマに対し、いくつもある正解の中から「逃げる」ことに特化し、その逃亡を手助けするのが主人公たちであるというのを描いています。




ゲームで、一見すると丁寧なチュートリアルが始まるかのような形に見せかけて、実際には即座に本編に突入して「とにかく操作してみるか~」というタイプの導入がありますが、「エスタブライフ」第1話はまさにそれ。各登場人物が一体どういうバックグラウンドを持っているのか、なぜこんなことをしているのか、一体どういう理由でこんなお仕事をしているのか、そもそもこの世界はどうなっているのか、なぜ頭が爆発して吹っ飛んでも無事なのか、このロボは一体何なのか、日本の東京のように見えるし実際に「○区」みたいな言い方をしているがその割にやたら物騒でまるで「国境を越えて逃亡する」ように見えているのはどういうことなのか……と、次々とSF的な情報を「これでもか!これでもか!」とぶつけられるかのようで、1回見ただけではそのあたりについて「何もわからない……」となってしまう可能性大ですが、それでOK。第1話で理解すべきことはたった1つ、「とにかく助けを求めれば、ここから逃がしてくれるんだな」という点のみ。ここさえわかれば、あとは好きなように見ることが可能なように作られています。


もともとのコンセプトアートを見るとかなり仰々しい世界観に見えるものの実際に第1話を見ると「こういう解釈になるのだな」というわかりみがあります。


実際に監督や脚本も以下のようにツイートしているので、かなり気楽に見ることができるように作られています。



なお、「魔改造された東京」なので、御『茶』ノ水なだけに茶畑があります。


この異様なまでの解釈の自由度と幅を確保していることがはっきりわかるのが第2話と第3話。第2話ではただ逃げるのではなく、「自分の好きなことをするために人生をやり直す」という明確な目的のため、かなりポジティブに逃亡する様子が描かれており、なおかつ主人公側の登場人物の背景がそれぞれ、ほんの少しずつだけわかるようになっています。


なおかつ、第1話でなんとなーく「もしかしてこのアニメは……メチャクチャなことを大真面目な顔をしてやるのではないか?」と予感していたものが早速形になり、尋常ならざる意味不明描写が連続します。ここで、あまりの馬鹿馬鹿しさにウンザリしてしまい「これ以上はついていけない」と感じる人も出るかもしれませんが、あと1話、第3話までは1つの塊として見て欲しいところ。






なぜかというと、次の第3話が、これまでの第1話と第2話を受け、「逃げたその先にあるもの」の一端を描き始めるからです。加えて、第1話と第2話でなんとなく判明してきた各登場人物の癖の強さが一体何なのか、どういう役割分担なのか、「逃がす」といってもどのあたりまでが可能なのか、何より「この主人公は一体何なのか?」というのが大いなる謎として立ち上がってくる回でもあります。





馬鹿馬鹿しさとシリアスさとアクション満点具合が渾然一体となった第3話Bパート後半の勢いは圧倒的。本作は全編がCGで描かれているわけですがその長所を遺憾なく発揮しており、「このアクションシーンはこのCGでの表現があればこそなのだな~」というのがよくわかります。最後のエンディングを見終える頃にはそのオチと同時に「何が何だか未だにわからない部分が多いが……でもこれ、もしかしたら面白いの……か?いや、まだ断定はできない……しかし可能性は感じる……」というようにして「次の話が気になる」という状態になるはず。


その予感のすべてが第4話冒頭で結実します。




本当に「意味不明」としかいえない導入、ここまでの矛盾のすべてがこの作品の面白さの神髄なのだと言わんばかりのメチャクチャさ。Aパートもそのメチャクチャさは続行しており、「やっぱりこいつ、主人公を延々と狙い続けてたんじゃねーか!ま、これまでも百合展開みたいになりかけてたのでなんとなくわかってたけどな!!」という感じで、これまでうっすらと、いや、むしろ「これはそういう意味なんだろ?」というようにしてあちこちにちりばめられていた要素がじりじりと集まっていく展開になります。


全体的に本作は「はっきりと1から10までは言わない、しかし映像としてはちゃんとわかるように見せる」というのが徹底しており、見ながら「コレはつまり……こういうこと?」というようにして「感じた」ことをその先の展開で答え合わせしつつも、新たな謎が同時に出てくる、というのを繰り返していきます。どうでもいい小さな「?」から、もっと大きな「?」まで、手を替え品を替え出てくるので、常に脳に刺激がいくという状態になっており、それが「飽きさせない」感覚を引き起こしています。第4話Bパートの戦闘シーンはこれまでの話の中でも突出してかっこよく迫力もありアクション的にも素晴らしいできばえなのですが、作中でも「むちゃくちゃだ!!」と言われるぐらい、マジでむちゃくちゃです。事ここに至り、「ああ、『エスタブライフ』っていうのは……こういう作品なんだな?」という確信が持てるはず。


1話からその片鱗は見えてはいたし、2話・3話と積み重ねていたので「今更何をいっているんだ?」という感じはするものの、この第4話で確実に「レベルアップ」しているのが誰の目にも明らかになります。それぐらい良くできているので、ここまでは一気に見るべきでしょう。ここまでの勢いがとにかくすごい。そして相変わらず肝心なことはうっすらぼんやりとしかわからないわけですが「でも大体わかった」となります。



なお、第4話の舞台となる上野には超巨大な西郷隆盛銅像が建っています。


そしてフジテレビほかで2022年5月4日(水)に放送される第5話はまさかの「パンツ禁止」。この文言だけだと「何言ってるんだコイツ」という話ですが、温泉の街・お台場が舞台なので、嘘偽りなくそういう話です。


第4話が「自分自身から逃げるのはありか」というような感じだったのに対し、第5話は「郷に入っては郷に従う」であるとか「常識」とは何か、何を信じるべきなのか、そういうものすべてを捨て去って逃げようとする、という選択。よくよく考えれば、これまでもそれぞれの「常識」とか「当たり前」があり、そこからの逃走であったわけなので、やはり基本的な部分はずーっと芯として作品の真ん中を貫いていることを感じます。この芯のおかげで安定感があり、意味不明・無茶苦茶・支離滅裂に感じるような展開でも問題なく思えるのですが、ここまで来て最後に「これまでとは違うのでは?」という違和感がやってきます。その予感が正しいのかどうかはさらにここから先まで突っ走ればわかるはずです。


……と、ここまではストーリーラインを中心に語っていますが、ストーリーやアニメーションがハチャメチャで面白いだけではなく、キャラクターの個性の強さも興味を引かれるポイントです。

たとえば、「逃がし屋」にいるウルラは狼の獣人。この世界は生態系の管理にAIが導入されていて、「人類の多様化」として遺伝子改造によって常人のほかに獣人や魔族も生み出されているので、獣人がいるのはごくごく普通の光景というわけですが、獣人キャラクターがいる作品としては珍しく、ウルラは「わん」としかしゃべりません。しかもウルラを演じているのは「機動戦士ガンダム00」ロックオン・ストラトス役や「<物語>シリーズ」貝木泥舟役、「銀魂」坂本辰馬役、「鬼滅の刃」竈門炭十郎役など多くの役で活躍する三木眞一郎さん。なんという「三木眞一郎の無駄遣い」という感じですが、台本では「わん」がどういう意図の「わん」なのかという説明が入っているので、三木さんがどういう意図をのせて「わん」と言っているのかというのは聞き所の1つ。


AIロボット・アルガも戦術サポートなどを担当してくれる「逃がし屋」のキーキャラクターですが、ロボットなのにおっさんくさいのが特徴的。「ヒプノシスマイク」神宮寺寂雷役や「Fate/Zero」遠坂時臣役、「マクロス」シリーズのマクシミリアン・ジーナス役など天才や冷静なイメージのキャラクターによく合う声で知られる速水奨さんが、「一番ガラ悪く演じたつもり」という珍しい役どころで、こちらもどのような演技になっているか実際に耳で確認してみてください。


アニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」はフジテレビ「+Ultra」枠で毎週水曜日24時55分から放送中。ほか、東海テレビ、関西テレビ、北海道文化放送、テレビ西日本、BSフジでも放送があります。

また、毎週1週間限定の無料見逃し配信がFOD・TVer・GYAO!で行われているほか、FODでは第12話までの先行独占配信が行われています。

TVアニメ『エスタブライフ』本PV/OPテーマ:めいちゃん「ラナ」 - YouTube

©SSF/エスタブライフ製作委員会

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in 動画,   アニメ,   広告, Posted by logc_nt

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