大手テクノロジー企業以外ではAIへの投資による経済的利益がほとんど得られていないとの指摘

近年では多くの企業がAIツールやAIエージェントを導入し、生産性や収益性を向上させようと取り組んでいます。ところがアメリカの投資会社・Apolloのチーフエコノミストであるトルステン・スロク氏は、「AIはテクノロジー業界以外のアメリカ企業に何の経済的利益ももたらしていない」とするレポートを発表しました。
No Signs of AI Payoff Outside the Tech Sector | The Daily Spark
https://www.apollo.com/wealth/insights-news/insights/daily-spark/no-signs-of-ai-payoff-outside-the-tech-sector
トルステン氏は新たなレポートで、AIに対する巨額の投資と広範な宣伝にもかかわらず、この技術はテクノロジー業界以外のアメリカ企業に何の経済的利益ももたらしていないと指摘しています。
以下のグラフは、アメリカを代表するAlphabet(Googleの親会社)・Apple・Meta・Amazon・Microsoft・テスラ・NVIDIAの7社からなる「マグニフィセント・セブン」と、アメリカ株価指数を代表する代表的な500社であるS&P500からマグニフィセント・セブンを抜いた「S&P493」について、従業員1人あたりの利益を比較したもの。横軸は四半期、縦軸は従業員1人あたりの利益を1000ドル(約15万7000円)単位で示しており、緑色がマグニフィセント・セブン、茶色がS&P493です。2022~2023年時点では両者の差が小さくなっていましたが、その後はマグニフィセント・セブンが上昇傾向を示す一方で、S&P493は停滞していることがわかります。

以下は企業の利益率をマグニフィセント・セブン(緑色)とS&P493(茶色)で比較したグラフで、横軸が四半期、縦軸が利益率(%)です。こちらもマグニフィセント・セブンが上昇する一方、S&P493は停滞を続けています。

資本や労働といった量的な生産要素の増加以外の質的な成長要因を除く、技術進歩や生産の効率化などの成長要因である全要素生産性(TFP)の推移を緑色で、従業員の1時間あたりの生産性を茶色で示したグラフが以下。横軸が年、縦軸がパーセンテージを示しているこのグラフを見ても、2023年以降のAIブームによってTFPが増加したという証拠はみられません。

すでにアメリカの大手企業はAIが最終的な利益に影響をもたらさないと理解しつつあり、AIへの投資を縮小し始めているとのこと。トルステン氏は、「アメリカの大手企業はAIトークンへの支出を成長の源泉ではなく、利益率を圧迫するコストセンターと見なし始めています」と述べています。
ベンチャーキャピタルが出資するような一部のテクノロジー企業はAIトークンへの支出を増やし始めていますが、大手企業の多くにとって最先端AIモデルは必要ではなく、そのコストを負担する意思もありません。そのためAIエージェントやAIトークンへの支出に関与する経済圏は小さく、AIのマクロ経済への影響は限定的なものになるとの見方をトルステン氏は示しました。
トルステン氏は今後のAI業界が、最先端AIモデルと代替可能な競合製品がますます増え、それに伴ってAIモデルの価値が下がっていくコモディティ化に直面するだろうと考えています。これにあらがってAI業界が成長し続けるには、アメリカの大手企業がAIモデルをより高い収益成長率と利益率に結びつけられるかどうかが鍵となります。
しかし、ビジネスにおける知的作業の多くは決断にかかわるものであり、ビジネス上の決断はどのAIモデルに尋ねるのかで容易に変わってしまいます。また、AIモデルは説明責任や信頼、倫理的なトレードオフといったものを人間ほどには理解できないという点も問題です。ビジネス上の決断をAIに任せた結果、企業の評判が傾いてしまい、ルーチン業務の生産性向上ではカバーできないほどの損失を出す危険性もあります。
トルステン氏は、「結論としてAIの動向はS&P493で決まるのであり、マグニフィセント・セブンの指数で決まるのではありません。そして今のところ、テクノロジー業界以外でAIによって成長率や利益率が改善しているという証拠はありません」と述べました。

トルステン氏のレポートはソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも話題になっています。
No signs of AI payoff outside the tech sector | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=50224463
あるユーザーは、テクノロジー業界は他のあらゆる企業に比べてソフトウェア主導であり、そのためにAIによる影響が早く生じているだけだと指摘。AIのメリットと限界を踏まえた上で、AIを中心に据えた設備投資や工場建設が進めば、他の業界でもAIによる恩恵が得られるようになるだろうと主張しています。

これに対し別のユーザーは、ソフトウェア開発ツールは人間のプログラマーが犯すミスをできる限り減らすために長い年月をかけて開発されたものであり、大規模言語モデルをベースとしたAIエージェントの有用性が最も発揮されるのがテクノロジー分野かもしれないと指摘。そのため、AIはその他の分野でもある程度は役に立つものの、テクノロジー業界と同程度のメリットは得られないかもしれないと述べました。

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in AI, Posted by log1h_ik
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