「椅子に座る時の姿勢」によってリスクを取るかどうかが変化する可能性

狭いスペースに小さく縮こまっている時と開放的な空間で体を伸ばしている時では、気の持ちようも変わってきます。2026年の研究では、テーブルの高さを変えることで被験者の姿勢をそれとなく誘導すると、「リスクを取る行動」への意欲に変化が生じることがわかりました。
Manipulating posture implicitly through environmental constraints influences mood and risk‐taking behaviour - Wainio‐Theberge - 2026 - British Journal of Psychology - Wiley Online Library
https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjop.70083
Desk setups that encourage an expansive posture may boost risk-taking
https://www.psypost.org/desk-setups-that-encourage-an-expansive-posture-may-boost-risk-taking/
人間の体と心は密接につながっていると考えられており、1884年には感情が出来事によって引き起こされるだけでなく、身体の状態によって感情が誘発される場合もあるとするジェームズ=ランゲ説が提唱されました。ジェームズ=ランゲ説では、涙ぐむポーズをすれば悲しいという感情が誘発され、心拍数が不規則になれば不安感が喚起されると考えられています。
近年は、「人の姿勢」が行動に及ぼす影響について複数の研究が行われています。2010年の研究では、意図的に堂々とした姿勢をとることで優越感が高まり、よりリスクの高い決断につながるとの結果が報告されました。しかし2015年の再現実験では、姿勢とリスクを取る行動との関連性は認められませんでした。
今回、カナダのマギル大学の研究チームは、「物理的な制約によって誘導された姿勢」がリスクを取る行動に与える影響を調べました。実験には若い女性被験者198人が参加し、高さが調節可能なテーブルに自由な姿勢で座り、テーブルの上に置いたタブレット端末でコンピュータータスクを行いました。
被験者は、テーブルを高くしてタブレット端末を目線より少し高い場所に設置し、背筋を伸ばして座るように設計された「拡張グループ」と、テーブルを低くしてタブレット端末を膝より少し高い程度の場所に設置し、前かがみになって座るように設計された「収縮グループ」にランダムで割り当てられました。
被験者らはそれぞれの状態で、リスクを取る行動を評価する「バルーンアナログリスクタスク」に取り組みました。このタスクは画面上の風船を膨らませていき、膨らみが大きくなるにつれて仮想のコインが得られるものの、風船を破裂させてしまうとためたコイン(収益)がすべて失われるというもの。被験者はどこで風船の膨張を止めてそのラウンドで得た収益を確定させるのか、あるいはさらに風船を膨らませるリスクを取って収益を増やすのかを判断する必要があります。

研究チームは被験者の様子を撮影して首の角度を測定し、狙った通りの姿勢になっているかどうかを評価しました。その結果、拡張グループの被験者は首や背筋を伸ばした姿勢で座り、収縮グループの被験者は猫背になって座る傾向があったことが確認されました。また、ほとんどの被験者らは自分の姿勢が操作されていることに気付いていなかったとのこと。
データを分析したところ、背筋を伸ばして座った拡張グループはバルーンアナログリスクタスクにおいて、より高いリスクを取ったことがわかりました。拡張グループの被験者は収縮グループの被験者よりも風船を大きく膨らませ、実際に風船を割ってしまう回数を増やすことなく、全体的により多い収益を獲得しました。拡張グループの平均獲得額は701ドル(11万700円)で、収縮グループの平均獲得額は645ドル(約10万1900円)でした。
標準的な机の上でタスクを行った対照群と比較すると、拡張グループと収縮グループの差は「拡張グループがより多くのリスクを取った」ことで生じていることが判明。拡張グループは対照群よりも大きなリスクを取った一方で、収縮グループは対照群と同程度のリスクを取っていました。また、タスクの後に被験者の感情を調査したところ、首の角度が垂直に近いほどプライドの感覚が強くなる傾向がみられました。
過去の研究では、意図的に体を大きく見せる「パワーポーズ」を取ることは、現実世界のリスクを取る行動に影響を与えないことが示されていました。今回の研究結果はこれと矛盾するものですが、被験者は自分の姿勢が誘導されていると気付いていなかったため、行動に違いが生じた可能性があります。
今回の研究は主に西欧諸国の若い女子大学生を対象としたため、高齢者や男性、文化が異なる国や地域では異なる結果になるかもしれません。また、姿勢は被験者によってばらつきがあったことから、今後の研究では身体の動きをより詳細に追跡する必要があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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