幼児が「頭の中だけで言葉を使う」ようになる時期の目安が日本の研究で判明

声に出さずに頭の中で言葉を使って考え事をしたり自分に語りかけたりすることを「内言」と言います。筑波大学の研究員である大谷康太氏や助教の桑水隆多氏、京都大学大学院の教授である森口佑介氏らの研究チームが、幼児期にこうした内言がどのように発達するのかを「頭の中で数字を数える課題」を使って調べました。
The developmental origin of inner speech: Evidence from a mental counting task in 3- to 6-year-old children - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001691826015179
1から5まで数えることで、幼児の「頭の中の言葉」が測れる | 医療・健康 - TSUKUBA JOURNAL
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20260909140000.html

1から5まで数えることで、幼児の「頭の中の言葉」が測れる - 筑波大学プレスリリース
(PDFファイル)https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20260909140000.pdf
内言は自分の行動や感情をコントロールする働きなどに関わると考えられています。研究チームによると、幼い子どもが遊びながら自分に話しかけるような独り言が次第に声に出さない形へ変わることで内言が生まれるという考え方が以前から支持されてきたとのこと。しかし、頭の中の言葉は外から観察できず、幼児自身も心の中で起きていることを十分に説明できないため発達の過程を確かめるのは困難でした。
そこで研究チームは、3~6歳の幼児77人と成人25人に、1から5まで数える課題に取り組んでもらいました。実験参加者全員がまず声に出して数える「外言条件」を5回行い、続いて頭の中で数える「内言条件」を5回行いました。初回は自然で無理のない速さで数え、以降は内言条件も含め、できるだけその速さを保つよう求められました。下の図の左側が外言条件、右側が内言条件を示しています。

研究チームは、頭の中で数えるのにかかる時間が毎回ほぼ同じであれば内言を安定して使えていると考え、5回の所要時間のばらつきを比較しました。なお、計測には秒数が見えないようにしたタブレット端末のストップウォッチを使い、参加者に数え始める前と「5」まで数えた直後にボタンを押してもらいました。
また、幼児が内言条件で声を出したり唇を動かしたり、指を使って数えたりしていないかは、実験中の観察と録画した映像で確かめました。指示どおりに課題をこなすことが難しかった子どもなどを除き、所要時間の分析対象となった幼児は58人でした。
分析の結果、幼児は成人よりも数える時間のばらつきが大きく、幼児も成人も声に出すより頭の中で数える方がばらつきが大きくなったと研究チームは報告しています。下のグラフは横軸が成人と幼児の区分、白い棒が外言条件、黒い棒が内言条件です。縦軸は所要時間のばらつきを表す「相対標準偏差(RSD)」で、値が小さいほど毎回同じような時間で数えられたことを示します。

幼児の中では、月齢が高いほど頭の中で数える時間のばらつきが小さくなる傾向も見られました。一方、声に出して数える場合には、月齢とばらつきの間にはっきりした関係は確認されませんでした。下のグラフは左のAが内言条件、右のBが外言条件で、横軸が幼児の月齢、縦軸が数える時間のばらつきを表すRSDです。それぞれの点は幼児1人分のデータを示しています。

また、声を出したり指や唇を動かしたりせず、指示どおり頭の中だけで数えられたかどうかにも年齢による違いがありました。頭の中だけで数えられた幼児の年齢の中央値は5歳6カ月、難しかった幼児では4歳5カ月でした。後者では、指を使って数えたり唇を動かしたりする様子も観察されたとのことです。こうした結果から、幼児期を通じて内言が徐々に安定し、声や指の動きに頼らず頭の中だけで数えられるようになる目安が5歳ごろにあると研究チームは考えています。
さらに研究チームは内言への理解を確かめる質問も行い、幼児32人のうちすべての質問に同じ回答をした3人を除く幼児29人と、成人25人の回答を分析しました。「人は頭の中で自分に語りかけられるか」という質問に「はい」と答えた割合は、幼児では65.5%、成人では92%でした。
幼児では質問への回答と、数を数える課題の成績との間に明確な関係は確認されず、研究チームは「頭の中で言葉を使えるようになることと、そのことを理解して説明できるようになることは必ずしも同時に進むわけではない可能性がある」と指摘しています。
ただし、研究チームが今回調べたのは実験者から求められて頭の中で数を数える場合の内言です。日常生活で自然に浮かぶ言葉について、いつから生じるのかを特定したものではありません。
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in サイエンス, Posted by log1b_ok
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