なぜ「ドル離れ」が起きているのか?ドルの支配的地位は失われつつあるのか?

アメリカのドルは世界における主要な通貨であり、貿易やその他の国際取引で最も広く使用される通貨です。ところが、近年は国家や企業によるドルへの需要が低下しつつあるとして、その理由をJPモルガンが解説しています。
De-dollarization: The end of dollar dominance? | J.P. Morgan
https://www.jpmorgan.com/insights/global-research/currencies/de-dollarization
JPモルガンは、「端的に言えば、ドル離れとは世界貿易や金融取引におけるドル使用の大幅な減少を意味し、国家・機関・企業による米ドルへの需要が低下する現象である」と説明。外国為替取引や商品取引、負債の通貨建て、中央銀行の外貨準備におけるシェアなどで、ドルの支配力が弱まる状態などを指すと付け加えました。
ドルの地位を損なう主な要因は2つ。1つは、ドルの安全性と安定性に対する認識を損なう悪材料、具体的には世界有数の経済・政治・軍事大国としてのアメリカの地位を揺るがす事象です。例えばアメリカにおいて進行する二極化が招く「安全な避難先としてのアメリカ」という地位、そして投資家に対する信頼を失墜させかねないアメリカの関税政策です。
2つ目の要因は、アメリカ国外で代替通貨の信頼性を高めるような前向きな動き、例えば中国における経済・政治改革などです。過去30年間でアメリカの世界輸出・生産に占める割合は低下した一方、中国は大幅に増加しました。

それでもなお、ドルの取引支配力は外国為替取引量や貿易、国境を越えた負債の通貨建て、外貨建て債務発行において依然として顕著です。国際決済銀行のデータによると、2025年4月に取引された外国為替取引量ではドルが89.2%を占めており、中国人民元はシェアを伸ばしているもののわずか8.5%でした。同様に、貿易決済におけるドルの衰退兆候もほとんど見られないそうです。
一方、中央銀行の外貨準備ではドル離れが進み、ドルのシェアは20年ぶりの低水準に落ち込んでいます。ただし1990年代初頭には外貨準備におけるドルのシェアはさらに低かったため、JPモルガンのグローバル外国為替戦略共同責任者ミーラ・チャンドン氏いわく「完全に異常とは言えない」とのこと。外貨準備の再配分の大部分は元やその他の通貨に向けられているものの、ドルとユーロが依然として水準を維持。元は成長しているとはいえ依然として非常に小さいといいます。
外貨準備における脱ドル化の主因は「金」への需要拡大にあります。法定通貨に代わる資産として人気の金は、外貨準備に占める割合が新興国中央銀行を中心に増加。過去10年間で最大の買い手は中国、ロシア、トルコでした。全体として、新興国における外貨準備に占める金の割合は9%と依然低いものの、この数値は10年前の4%から倍以上に増加しており、先進国における割合は20%とさらに大きい値。この需要増加が金相場の上昇を部分的に牽引しており、価格は2026年半ばまでに1オンスあたり4000ドル(約63万円)に向けて上昇すると予測されています。

先進国国債市場でも米国債の相対的な魅力は低下しており、外国投資家は依然として米国債市場最大の構成要素であるものの、その保有比率は2025年初頭時点で世界金融危機時のピーク時50%超から30%まで低下しているとのこと。
JPモルガンのグローバル金利戦略責任者ジェイ・バリー氏は「海外からの需要は10年以上にわたり国債市場の成長に追いついていませんが、より積極的な行動が何を意味するか考慮すべきです。日本は最大の外国債権国であり、市場全体の約4%を占めているため、アメリカ以外の国による大規模な売却が影響が大きく出ます」と分析しました。
また、ドル離れは商品市場で最も顕著です。価格決定におけるドルの影響力は低下していて、特にエネルギーなどは大きな割合が非ドル建て契約で設定されており、その割合は増加傾向にあるとのこと。例えば、欧米の制裁により、ロシアが輸出する石油製品は買い手の現地通貨、あるいはロシアが友好国と見なす国の通貨で販売されています。買い手側ではインド、中国、トルコがいずれもドルの代替手段を利用しているか模索中で、サウジアラビアも自国産原油の価格設定モデルに元建て先物契約を追加することを検討しているとのことです。
元は石油以外にも石炭や原子力分野で支配力を強めており、これによりドルや米国債、石油の予防的備蓄の必要性が減少しているといいます。
一方で預金のドル化、つまり銀行預金の大部分が自国通貨ではなくドル建てで計上される現象は多くの新興国市場で依然として顕著。新興市場におけるドル建て預金は過去10年間ほぼ途切れることなく増加し、特にラテンアメリカが最もドル化が進んだ地域だとのこと。中国は例外で、2017年以降ドル化率が持続的に低下しています。これは、米中関係の悪化が影響していると考えられます。
JPモルガンの長期戦略を担当するアレクサンダー・ワイズ氏は、「準備通貨というものは、安全で安定していると認識され、増大する世界的な需要を満たすのに十分な流動性の供給源を提供しなければなりません。ドル離れは国家間の勢力均衡に変化をもたらし、それがひいては世界経済と市場の再構築につながる可能性があります。その影響はアメリカで最も顕著に感じられるでしょう。ドル離れは米国金融資産の広範な減価と、他の地域に対するパフォーマンスの低下につながる可能性が高いからです。株式については、米国市場からの投資撤退や資産再配分、そして信頼の深刻な低下により、絶対的および相対的なリターンはマイナスの影響を受けるでしょう。また、投資家による米国債券の一部売却、あるいは国際準備資産の分散化・削減により、実質利回りに上昇圧力がかかる可能性が高いです」と述べました。
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