セキュリティ

太平洋の海底ケーブルが中国の修理船による妨害やスパイ活動を受ける懸念があるとアメリカ当局がGoogleやMetaに警告している


SNSや動画配信サービスなどを含む世界中のインターネットトラフィックは、地球の海底に張り巡らされている海底ケーブルによって支えられています。この海底ケーブルが事故や災害で切断された場合、世界中に20数隻ほど存在する海底ケーブル修理船が復旧作業に当たりますが、アメリカ当局は「太平洋の海底ケーブルは中国の修理船による妨害やスパイ活動に対し脆弱(ぜいじゃく)な可能性がある」と、GoogleやMetaに懸念を伝えているとのことです。

Exclusive | U.S. Fears Undersea Cables Are Vulnerable to Espionage From Chinese Repair Ships - WSJ
https://www.wsj.com/politics/national-security/china-internet-cables-repair-ships-93fd6320


Possible Espionage Threat? US Officials Warn Of Chinese Interference With Undersea Internet Cables In Pacific - Benzinga
https://www.benzinga.com/news/24/05/38909612/possible-espionage-threat-us-officials-warn-of-chinese-interference-with-undersea-internet-cables-in

中国政府はここ数十年、太平洋西部においてアメリカの軍事力に対抗する動きを強めています。もし、台湾を巡る衝突やその他の紛争が発生した場合、アメリカ国防総省の通信やその他の技術的優位性を妨害する可能性があると危険視されています。


アメリカの日刊経済紙であるウォール・ストリート・ジャーナルは、アメリカ当局の動きに詳しい関係者の話として、「アメリカ当局はGoogleやMetaなどの企業に対し、中国企業がアメリカ所有の海底ケーブルの安全性を脅かす可能性があるという懸念を伝えています」と報じました。この関係者によると、いくつかのケースでは中国の上海に拠点を置く国営海底ケーブル修理企業・S.B.Submarine Systems(SBSS)に関する議論も含まれていたとのこと。

太平洋には数十本もの海底ケーブルが張り巡らされており、南北アメリカ大陸やアジア、その他の島々の間を結んでいます。しかし、地震などの自然災害や船舶の過失などで海底ケーブルが切断される事例は年間約200件も起きているそうで、そのたびに海底ケーブル修理船が復旧作業に当たっています。

実際に、東日本大震災で切断された海底ケーブルの修理作業に従事したKDDIケーブルシップの修理船・オーシャンリンクがどのような活動に当たったのかは、以下の記事を読むとよくわかります。

東日本大震災で切断された海底ケーブルの修理に震災直後から従事した日本の海底ケーブル修理船の秘話 - GIGAZINE


海底ケーブル修理船は復旧作業の際、海底ケーブルを海面に巻き上げて壊れた光ファイバーをつなぎ合わせ、再び海底に沈めるという工程を行います。アメリカの当局者は、海底ケーブルは修理のために海面へ引き上げられると改ざんに対して脆弱であり、作業中にケーブルを遠隔操作で無効にする装置を設置したり、信号中継器の技術を研究したりできる可能性があると指摘しています。

特にアメリカ当局が懸念しているのが、1995年に中国とイギリスの合弁会社として設立されたSBSSです。長年にわたり中国の国営通信企業であるチャイナ・テレコムが株式の51%を保有しており、残りをイギリス企業から買収する手続きを進めているとのことで、SBSSは中国共産党の意向に従う可能性が高いと懸念されているわけです。

実際にウォール・ストリート・ジャーナルは、SBSSの海底ケーブル修理船は船舶の位置を知らせる自動船舶識別装置がたびたびオフになっていると指摘しています。商業データプロバイダーであるMarineTrafficの無線および衛星データによると、SBSSの海底ケーブル修理船の位置追跡用トランスポンダは過去5年間で、たびたび機能しなくなっているとのこと。

たとえば、2019年にシンガポールを出航した「Bold Maverick」という海底ケーブル修理船は、数週間にわたり直径1マイル(約1.6km)未満の小さなエリアを移動している間、トランスポンダのスイッチが何度もオンになったりオフになったりしました。また、「Fu Hai」という海底ケーブル修理船は2020年6月上旬に香港付近で約1カ月にわたりトランスポンダがオフになり、再び信号が検出された時は台湾の東海岸沖を日本に向かって航行していたそうです。

もちろん、これらのケースは単にトランスポンダの故障や不調によるものの可能性もあります。しかしアメリカ政府の高官は、「これが繰り返し起きれば、特に軍事通信を運ぶケーブルなど、戦略的に重要なケーブルの近くで運用されている場合は疑惑が生じます」と指摘し、SBSSへの警戒感を強めています。


アメリカの国家安全保障会議は声明で、「海底ケーブルの安全性は、透明性を持った正しい方法で建設・維持・修理する信頼できる機関の能力に根ざしています」と述べ、衛星による海底ケーブル修理船の追跡は安全を支援する手段のひとつだと説明しました。

なお、GoogleやMetaはSBSSに関するアメリカ当局の懸念についてコメントを控えたほか、SBSSもコメント要請に応じなかったとのことです。

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in ネットサービス,   セキュリティ, Posted by log1h_ik

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