心臓は発作を起こした後に毛細血管から独自の「バイパス」を作るとの研究結果

心臓発作(心筋梗塞)が起きると冠動脈が詰まり、その先の心筋へ酸素や栄養が届かなくなります。中国科学院と香港中文大学の研究チームが、心筋梗塞を起こした心臓では毛細血管から独自の「バイパス」が作られる可能性があると報告しました。
Tracing the origins of de novo coronary collateral formation in cardiac repair | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.ady3027
Your Heart Can Actually Build Its Own Bypass After a Heart Attack : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/your-heart-can-actually-build-its-own-bypass-after-a-heart-attack

心筋梗塞を起こした心臓では、冠動脈同士をつないで詰まった部分の先へ別の経路から血液を送る「冠動脈側副血行路」が作られることがあります。この迂回路を構成する側副動脈は、いわば心臓が作る「天然のバイパス」です。従来、側副動脈は既存の細い動脈が太くなったり、既存の動脈内皮細胞が移動して別の場所で集まり直したりして作られると考えられていました。しかし従来の追跡法では、もともと動脈にあった細胞と後から動脈の性質を獲得した毛細血管由来の細胞を区別できない可能性がありました。
そこで研究チームは、既存の動脈内皮細胞と毛細血管内皮細胞に異なる遺伝的な目印を付け、心筋梗塞後の側副動脈を構成する細胞がどちらに由来するのかを調べました。
研究チームが細胞を追跡した結果、新しい側副動脈を構成する細胞のうち既存の動脈に由来するものは少数にとどまり、大部分は毛細血管内皮細胞に由来することが分かりました。また、これらの毛細血管内皮細胞は動脈内皮細胞の性質を獲得する「動脈化」を経て、側副動脈の内側を覆うようになったとのこと。研究チームは仕組みの異なる複数の追跡法でも同じ結果を確認したそうです。
心筋梗塞を起こした新生児マウスの心臓を撮影した以下の画像では、毛細血管由来の細胞が緑色、既存の動脈由来の細胞が赤色で示されています。黄色い矢印は別々の冠動脈が血液を送る領域の境界を越えて伸びた側副動脈です。矢印で示された側副動脈の大部分が緑色であることから、新しい側副動脈が主に毛細血管由来の細胞で構成されていることが分かります。

また、研究チームが遺伝子操作で毛細血管由来の新しい側副動脈を選択的に除去したところ、心筋梗塞による心筋の損傷範囲が広がったとのこと。毛細血管由来の側副動脈を失うと損傷が悪化したことから、これらの側副動脈が損傷部への血流を保ち、心臓の修復を助けていることが判明しました。毛細血管内皮細胞の動脈化は新生児のマウスだけでなく、成体のマウスでも確認されたそうです。
さらに、研究チームは血管の成長を促すタンパク質「VEGF-A」を短期間だけ体内で増やす修飾mRNAをマウスに投与しました。その結果、成熟した側副動脈の形成が促され、損傷部周辺の血流が改善したほか、心筋の傷痕が小さくなって心機能も向上。一方、VEGF-Aを長期間増やし続けた条件では、十分に成熟した動脈が作られなかったと研究チームは報告しています。
ただし、一連の実験はマウスで行われたもので、人間の心臓でも同じ仕組みが働くのかや、VEGF-Aを一時的に増やす方法が人間にも安全に使えるのかは確かめられていません。
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in サイエンス, Posted by log1b_ok
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