サイエンス

3000人に1人は「太りにくい遺伝子」を持っている可能性があると判明


世の中には痩せようと必死に努力しても痩せないという人もいれば、反対に何もしなくても痩せることができる人、あるいは太りたいと思っているのに太れない人などいろいろな人がいます。こういった違いを決定づけている可能性のある「太りにくい遺伝子」が、研究により発見されました。

Sequencing of 640,000 exomes identifies GPR75 variants associated with protection from obesity | Science
https://science.sciencemag.org/content/373/6550/eabf8683.full


Massive DNA study finds rare gene variants that protect against obesity | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2021/07/massive-dna-study-finds-rare-gene-variants-protect-against-obesity

製薬会社・リジェネロンの遺伝学研究所に所属するパーサ・アクバリ氏らは、アメリカ・イギリス・メキシコの64万5626人を対象に、遺伝子の塩基配列中の遺伝情報がコードされている部分、エクソンに着目して解析を実施しました。エクソーム解析と呼ばれるこの手法は、全ゲノム解析よりも低コストで効率良く疾患関連遺伝子を同定できるもので、アクバリ氏らはこれにより肥満に関連する遺伝子内の突然変異を突き止めました。

解析の結果アクバリ氏らは、BMIに関連する16の遺伝子のうち、Gタンパク質共役受容体の細胞表面に発現する5つが体重に影響を与え、これら全てが空腹と代謝を調節する脳領域である視床下部で発現することを突き止めました。


さらに、5つの遺伝子うち「GPR75」という部分の変異がBMIに大きく影響を与えることもわかり、このGPR75のコピーを不活化する突然変異を持っている人の体重は、持っていない人と比較して平均5.3kg体重が軽く、肥満である確率は半分だったとのこと。また、GPR75の複製を阻害したマウスと通常のマウスの両方に高脂肪食を与えたところ、GPR75の複製を阻害したマウスは体重が44%軽く、インスリン感受性も高いことが分かりました。

アクバリ氏らは「マウスの体重変化はエネルギーの消費、摂取、どちらへの影響の結果なのかは分かりませんが、GPR75がエネルギーバランスの制御に関与しており、その複製を阻害すると体重が減少するということが今回立証されました」と述べています。ただし、アクバリ氏らは「GPR75を不活性化する変異体を持っている人は3000人に1人だけ」と推測。「GPR75が創薬において着目される可能性があるのでは」と期待しています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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