サイエンス

ゾウの鼻は時速540kmもの速度で水を吸い込めることが判明、吸引される水の速さは新幹線の1.5倍以上


長い鼻が特徴的のゾウは、1日に200kgもの草や木を食べ、水も100リットル以上飲んでいます。まるで人間の手のように器用に扱えるゾウの鼻には、時速540kmもの速さで水を吸い上げられる吸引力まで備わっていることが、ジョージア工科大学のアンドリュー・シュルツ氏らの研究により明らかになりました。

Suction feeding by elephants | Journal of The Royal Society Interface
https://royalsocietypublishing.org/rsif/doi/10.1098/rsif.2021.0215

Elephants inhale water at 330 mph | Live Science
https://www.livescience.com/elephant-trunks-are-supersuckers.html

シュルツ氏らは「ゾウの鼻の構造を、物をつかむロボットに応用できるのでは」と考え、動物園の獣医師と協力し、ゾウが水槽の水を鼻で吸い上げる様子を観察しました。水槽は29.9cm×29.9cm×48cmのものが使われ、水槽の中には水を19リットルと、水の流れを分かりやすくするために50gのチアシードが入れられました。

観察の結果、ゾウはわずか1.5秒で3.7リットルもの水を吸い上げることができたとのこと。シュルツ氏らはゾウが水を吸い込む速度を時速540kmと推定しており、これは時速320kmの新幹線の1.5倍以上の速さに相当します。また、ゾウが水を吸い込んでいる様子を超音波を用いて観察したところ、ゾウは筋肉を収縮させて鼻孔を最大30%拡張し、鼻腔(びくう)の容積を64%増加させていたことも分かったとのこと。さらに複数回の実験の結果、ゾウは最大5.5リットルの水を鼻の中に蓄えることができることも分かりました。実験の様子は以下の動画で確認できます。

Elephant Trunks Inspiration for New Robots - YouTube


シュルツ氏らの実験により、チアシードは鼻孔を中心に吸い上げられることが分かりました。


シュルツ氏は「ゾウの鼻腔は吸い込んだ水の量より小さいと考えていたため、超音波画像で鼻孔が広がる様子を見るまで、どんなふうに水を吸い上げているのか理解できませんでした」「ゾウは、吸う水の量を元の鼻腔容積の110%である5.5リットル以下に保ちたいと考えているようです」と語っています。


さらに、シュルツ氏らが「ゾウは食べ物によって鼻を使うしぐさを変えるのか」を確かめています。この調査で、シュルツ氏らがカブに似た根菜のルタバガを2cm角に切って平らなプレートの上に置いたところ、ルタバガの数が10個未満の場合は鼻で直接拾い上げたのに対し、10個を超える場合は鼻で吸い上げることが分かったとのこと。また、吸い上げる際には「掃除機の音がした」とシュルツ氏らは述べています。次に、薄いトルティーヤチップスを使った実験では、ゾウはチップスをほとんど割らずに拾うことができたとのこと。

シュルツ氏らは「ゾウは特殊な呼吸器系により、素早い吸引力やチップスを拾い上げるような穏やかな吸引力の両方を使い分けることができます。ロボット工学の分野では物体をつかむために吸引という方法が使われていますが、今回の研究は、ロボットの設計の新たなヒントとなる可能性があります」と述べています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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