キリンが頭を動かしても低血圧で気絶しないのはなぜなのか?
首の長い動物の代表格「キリン」は、脳に血液を送るためにさまざまな身体機能が構築されています。キリンがどのような仕組みで体内の血圧を維持しているのか、いくつかの研究により明らかになっています。
The Cardiovascular Secrets of Giraffes | Science | Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/science-nature/cardiovascular-secrets-giraffes-180977785/
キリンの頭は、成体であれば地上約6メートルにまで到達します。キリンの脳の血圧を、大型哺乳類の正常な血圧である110/70に維持するためには、心臓の血圧を220/180に保つ必要があります。このような血圧の場合、キリンは不整脈や心不全を発症してもおかしくありません。
進化生物学者のバーバラ・ホロウィッツ氏らが行った研究では、キリンの心臓は高い血圧を維持するために左心室が分厚くなっているにもかかわらず、硬化や線維症などの症状はみられないことが判明しています。また、別の研究の結果、キリンが線維症に関する、タンパク質の機能を変化させると予測される5つの特殊な遺伝子を持っているということも分かっています。ホロウィッツ氏らは「キリンの心臓の鼓動のリズムは他の哺乳類とは異なるため、血液が心室に充満する周期が異なるのではないか」と推測しています。
人間の身に起こる高血圧の症状の1つとして、血管から組織内に水が押し出されることにより発生する脚などのむくみがあります。キリンの脚がむくみを起こさない理由として、生物学者のクリスチャン・アルクヤー氏の研究により、キリンは高密度の結合組織をもって組織を圧縮しており、体液がたまるのを防いでいるということが分かっています。また、アルクヤー氏は「キリンは膝の近くの動脈を使い、下肢の血圧を下げているのでは」とも推測しています。
また、キリンが水を飲む際に頭を下げ、再び頭を上げた際に、血圧低下により気絶することはありません。この理由については、「ワンダーネットと呼ばれる毛細血管の塊に1リットル以上の血液を蓄え、逆流防止の弁も活用して脳への血液流入・流出量を調節しているから」とのこと。
ホロウィッツ氏ら生物学者は、キリンの体の構造の研究を進めることで、人間の高血圧などの治療法を導き出せるのではないかと考えています。
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