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「世界最悪のインターネット犯罪の巣窟」がオランダの片田舎に存在するとの報道


オランダの日刊紙・NRC Handelsbladが、オランダのウォルメルという小さな街にある、「世界最悪のホスティング会社」について報じています。

The cesspool of the internet is to be found in a village in North Holland - NRC
https://www.nrc.nl/nieuws/2021/04/02/the-cesspool-of-the-internet-is-to-be-found-in-a-village-in-north-holland-a4038369

NRC Handelsbladが「世界最悪」と名指しするホスティング会社のEcatelは、バルトロメウス・ヨハネス・K、通称バップ(Bap)という男性が2002年5月13日に設立したColinksという会社を前身としています。オランダが安定した国で、電気や通信のインフラもしっかりしているということに目をつけたバップは、ハーグ出身のライネル・ファン・Eという10代の男性を技術担当として採用し、オランダで事業を開始しました。


2人が始めたホスティングサービスは、あたかも大家が住人に部屋を貸すように、サーバーやネットワークを間貸しするというもの。借り手は、ホスティングサービスからレンタルしたサーバーを使ってオンラインビジネスを展開したり、そのネットワークをまた別の人に転貸したりします。ホスティング自体は違法性のないサービスですが、時には海賊版サイトの運営や違法なデータのやりとりに利用されることもあり、そうしたホスティングサービスは「防弾ホスティング」と呼ばれています。

無数のペーパーカンパニーとともに、イギリス・ケント州の住所でEcatelを設立したバップとライネルは、ウォルメルにあった保険会社のビルを居抜きして自前のデータセンターを構え、本格的に防弾ホスティング事業を開始しました。イギリスのセキュリティ専門家であるJart Armin氏によると、政治家や活動家の脅迫を行っているオランダの急進的右翼団体「Vizier op Links」をはじめ、ハッキングや児童ポルノの取引といった犯罪活動の多くがEcatelのホスティングサービスを拠点としているとのこと。またArmin氏は、ロシアの大規模なサイバー犯罪組織である「Russian Business Network」がEcatelのサービスを利用していることも突き止めました。


しかし、Armin氏がオランダ警察のハイテク犯罪チームにEcatelの情報を提供しても、状況はまったく改善していないとのこと。これは、オランダの法律では、ホスティング会社が利用客の通信を追跡してはならないことになっているのが原因です。このため、自社のホスティングサービスが犯罪の温床になっていることをEcatelが知っていたとしても、しらを切ることができるのだそうです。

もちろん、違法性のあるデータが取引されているとの通報を受ければ、ホスティングサービス側も対処せざるを得ません。しかし、Ecatelは1日に受理する通報数を制限したり、削除申請文書の形式に細かい注文をつけたりすることで、のらりくらりとやり過ごしているとのこと。また関係者の中には、「オランダの捜査当局はバップらに悪意があることを証明するような本格的な捜査に乗り気ではない」と証言する人もいます。


オランダのオンライン児童虐待対策専門センター(EOKM)のスタッフはNRC Handelsbladの取材に対し、「バップとライネルの2人に、児童ポルノ画像に写っている子どもが未成年だということの証明をさせられることがしょっちゅうあります。それに、我々のメールがスパムフォルダーに入っていたり、メールアドレスがブロックされたりすることもよくあります。Ecatelのサイトには、通報用のフォームが用意されていますが、このフォームが受け付ける通報は1日5件しかないので、仕事になりません」と話しました。

また、デルフト工科大学のミシェル・ファン・イーテン教授は「児童ポルノ、サイバー攻撃、スパム、フィッシングなどの活動に関与しているホスティングサービスのリストを警察に提供していますが、何の役にも立っていません。なぜなら、警察が事を起こすには、企業が悪質なデータの除去を意図的に怠っていることの証明が必要だからです。ホスティングサービス側が通報に対処しているように見せかけつつ、裏でクライアントを助けるようなことをしていても、その立証は困難を極めます」と述べました。

2020年9月にはついに、欧州刑事警察機構(ユーロポール)の働きかけを受けたオランダ財政調査局(FIOD)がEcatelの強制捜査を実施し、バップとライネルらも尋問を受けることになりました。しかし、これはあくまで脱税容疑での事情聴取に過ぎなかったので、両名はすぐに釈放されたとのこと。それ以来、バップらはウォルメルのデータセンターに姿を現さないようになったそうです。

NRC HandelsbladはEcatelに対し、防弾ホスティング業者7社を強制捜索したというオランダ当局の発表についてのコメントを求めましたが、バップとライネルは書面で「それが当社や我々と関係があると思った根拠は何ですか?」とだけ回答し、捜査については言及しませんでした。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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