サイエンス

木材に圧力を加えて発電する技術は木材を腐らせるだけで効果が55倍になると判明


2021年3月10日、チューリッヒ工科大学材料科学者であるJianguo Sun氏らが、木材に圧力を加えて発電を行う技術は、木材を腐らせることで効果の向上が期待できるとする研究論文を発表しました。

Enhanced mechanical energy conversion with selectively decayed wood | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/7/11/eabd9138

Wooden floors rotted by fungi generate electricity when walked on | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2270527-wooden-floors-rotted-by-fungi-generate-electricity-when-walked-on/


木材の細胞壁は、主にセルロースヘミセルロースリグニンで構成されています。さらにセルロースはアモルファス(非晶質)領域と結晶領域で構成されており、結晶に圧力がかかると、結晶を構成している原子の電荷に偏りが生じて結晶の表面に電荷が現れます。この現象を圧電効果と呼び、木材以外にもキチンや骨でこの効果が示されることが分かっています。木材に圧力をかけると圧電効果によって発電できることは数十年前から明らかになっているものの、木材自体の剛性が高く、発電効率が悪いため、木材をそのまま使用した発電は非効率だと見なされてきました。

そこで、Jianguo氏らは木材を腐らせ、木材の剛性を低くすることで発電効果を高められるのではないかと期待し、腐らせた木材で圧電効果を確かめる実験を行いました。


Jianguo氏らがバルサ材を白色腐朽菌を用いて腐らせた結果、木材内のリグニンとヘミセルロースが急速に崩壊して重量がほぼ半減し、剛性も低くなり、圧縮性が改善されました。この状態で圧電効果を発生させたところ、15mm×15mm×13.2mmの木材から、0.87ボルトの電圧と13.3ナノアンペアの電流が得られたとのこと。これは木材を腐らせる前と比べて55倍の出力だとJianguo氏らは述べています。

Jianguo氏らはこの技術を、高齢者が転倒したことを検出し信号を送る床といった新しい技術の開発に役立てられるのではないかと期待しており、圧電効果を利用した木材製品の商品化について企業と話し合っているとのこと。「さまざまな人間の活動を通じて発電を行う、新しい建物の設計技術の可能性を開く」と、研究チームは論文内で述べています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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