バイデン政権がAIチップ輸出の新規則を発表、NVIDIAなどは「アメリカの競争力を削ぐ」として反発
アメリカのバイデン政権が「AIが急速に安全保障と経済力、両方の中心になりつつある」として、「AIの拡散に関する暫定最終規則」を発表しました。主要同盟国およぼパートナー国18カ国へのAIチップ輸出に制限はありませんが、国によっては入手可能な計算能力総量に上限が設けられることになります。なお、NVIDIAやOracleなど、業界企業からは反発の声があがっています。
FACT SHEET: Ensuring U.S. Security and Economic Strength in the Age of Artificial Intelligence | The White House
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2025/01/13/fact-sheet-ensuring-u-s-security-and-economic-strength-in-the-age-of-artificial-intelligence/
Biden's administration proposes new rules on exporting AI chips, provoking an industry pushback | AP News
https://apnews.com/article/biden-ai-artificial-intelligence-chips-computer-trade-4495b5b4a48e856dc612e7abe3e47d20
Commerce unveils global AI export controls
https://www.axios.com/pro/tech-policy/2025/01/13/ai-chip-export-restrictions-nvidia-biden
US Further Restricts Nvidia AI Exports, Caps GPU Purchases for Select Nations
https://uk.pcmag.com/ai/156245/us-further-restricts-nvidia-ai-exports-caps-gpu-purchases-for-some-nations
暫定最終規則のキーとなる項目は以下の6つです。
1:18の主要同盟国およびパートナー国へのAIチップ販売には制限は適用されず、アメリカの国家安全保障および外国政策上の利益と一致する強固な技術保護体制と技術エコシステムを有する国・地域は、シームレスにAIチップの大規模購入ができる。
2:大学や医療機関、研究機関が主に必要とする、1700基の高度GPUに相当する計算能力のAIチップはライセンスなしで取り扱い可能で、国ごとのチップ上限にもカウントしない。
3:セキュリティの高さと信頼基準を満たした上で、アメリカの主要同盟国またはパートナー国に本社を置く事業体は、信頼性の高さを示す「世界認定エンドユーザー(UVEU)」というステータスを取得可能。UVEUがあれば、世界各国のAI計算能力の最大7%(チップ数十万基相当)を導入することができる。UVEUは永続的かつグローバルに与えられる。
4:同様のセキュリティ要件を満たした上で、懸念国ではない国に本社を置く事業体は「国家認定エンドユーザー」のステータスを申請し、今後2年間で最大32万基のGPUの計算能力を持つAIチップを購入可能。
5:主要同盟国以外に本社を置く認定エンドユーザー以外の事業体も、1カ国あたり最大5万基のGPUの計算能力を持つAIチップを購入可能。
6:AIの開発、配備、利用に関して価値観を共有する国際的エコシステムを育むための政府間協定に署名した政府は、輸出規制やクリーンエネルギー、技術安全保障への取り組みでアメリカと連携することで、輸入可能なAIチップ数をGPU最大10万基の計算能力分まで倍増させられる。
なお、「18の主要同盟国およびパートナー国」オーストラリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン、スウェーデン、台湾、イギリスを指します。
この暫定最終規則について、NVIDIAやOracleなどからは、アメリカの競争力を損ない、イノベーションを損なうものだという反発の声が出ています。
企業が規則を準拠するために1年の猶予期間が設けられているほか、ジーナ・レモンド商務長官は「次の政権に意見を集める機会を与えるため」として120日間の意見募集期間を設けていると説明。「次期政権が、意見を受けて規則を変更する可能性について、私は期待しています」と述べたとのことです。
・関連記事
ロシアがアメリカの禁輸品であるNVIDIAのAIチップを搭載したサーバー460億円相当をインド経由で輸入していたことが判明 - GIGAZINE
「TSMCの半導体がHuaweiのAIチップに使われていた」という報道の直後にTSMCが中国企業「SOPHGO」への出荷を停止、SOPHGOが仲介して半導体を作らせていた可能性が浮上 - GIGAZINE
TSMCがHuaweiのAIチップを製造していたことが判明、アメリカの輸出規制に抵触する可能性 - GIGAZINE
国家安全保障上の理由から主に中東で国ごとのAIチップ販売数に上限を設けることをアメリカ政府が検討中か - GIGAZINE
量子コンピューティングや半導体製品を含む重要技術に関する新たな輸出規制案をアメリカ政府が発表、日本・オランダ・その他の同盟国と調整中 - GIGAZINE
・関連コンテンツ