女性の皮膚をはいで3冊の本を作ったのはどんな人物なのか?
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人類はかつて、羊やヤギなどの皮から作った羊皮紙で本や手紙を書いてきましたが、時には人の皮をはいで作った「人皮装丁本」が図書館の蔵書で発見されたり、オークションで競りにかけられたりしたこともあります。そんな人皮装丁本の中でも特に貴重な、「材料となった人物」が判明している3冊の本について、アメリカの司書で人皮装丁本の専門家でもあるミーガン・ローゼンブルーム氏が解説しました。
Seeking the Truth Behind Books Bound in Human Skin - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/dark-archives-human-skin-books
アメリカ・フィラデルフィア医師協会のムター博物館には、3冊の人皮装丁本が収蔵されています。この本が作られるきっかけとなったのは、1868年にフィラデルフィア総合病院にメアリー・リンチという貧しい女性が結核で入院したことです。フィラデルフィア総合病院は、孤児院や救貧院が併設された貧しい人のための病院で、そこで提供される医療の内容も、裕福な人向けの医療とはまるで異なったものでした。
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by THE COLLEGE OF PHYSICIANS OF PHILADELPHIA
看護師や家族の看病もむなしく、リンチは体重がわずか60ポンド(約27kg)になるまでやせ衰えてしまい、1869年1月にこの世を去ります。リンチの検視を担当した若い医師のジョン・ストックトン・ハフは、後に医学誌に発表した論文の中で「結核に冒された女性の肺を観察するため胸部を切開したところ、大胸筋に珍しいレモン型の嚢胞(のうほう)があることに気付きました」と報告しました。
そして、ハフが嚢胞を顕微鏡で観察したところ、その内部は大小さまざまなミミズ状の生物でいっぱいになっていました。これが、フィラデルフィアで最初に報告された旋毛虫症の症例です。当時、生殖医療と寄生虫学に関心を抱いていたハフは、解剖中のリンチの太ももから皮膚を採取すると、それを保管することにしました。
フィラデルフィア総合病院に入院していた患者とは対照的に、裕福な家庭出身の医師だったハフは、8000冊に上る希書の収集で有名なコレクターでもありました。フィラデルフィア総合病院での経験を基に、女性の健康問題の専門家となったハフは、リンチが死亡してから数十年後に3冊の本を製本して自らのコレクションに加えます。この3冊の本こそ、ハフが数十年間保管していたリンチの皮膚で作った人皮装丁本です。
ハフが製本したのは、1680年に出版された「Les nouvelles découvertes sur toutes les parties principals de l’homme, et de la femme」、1650年に出版された「Recueil des secrets de Louyse Bourgeois」、1789年に出版された「Speculations on the Mode and Appearances of Impregnation in the Human Female」で、いずれも女性の健康や出産をテーマにした医学書です。出版年から分かるとおりどれもハフ自身の著書ではありませんが、ハフは本に「Mary L……」と記入しており、これがメアリー・リンチの皮膚で製本された本であることを物語っています。
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by THE COLLEGE OF PHYSICIANS OF PHILADELPHIA
ハフが馬の暴走により馬車から投げ出され56歳で死亡すると、その蔵書の大半はハフの母校であるペンシルベニア大学とフィラデルフィア医師協会に寄贈されました。ハフがリンチの皮膚で作った3冊の本も、この時フィラデルフィア医師協会に寄付されました。
人皮装丁本についてローゼンブルーム氏は、自著「Dark Archives」の中で「人の皮で本をつづる医師というと、孤独なマッドサイエンティストが不気味な地下で本を作っているイメージを浮かべるかもしれません。それは理解できますが、当時フィラデルフィアで人皮装丁本を作っていたのはハフだけではありませんでした。昔の医療倫理や患者の意思、遺体の扱い方を、現代に生きる私たちの肌感覚と一致させることは難しいことなのです」と記しています。
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in メモ, Posted by log1l_ks
You can read the machine translated English article Who made the three books with the skin o….