サイエンス

Nature誌が選ぶ「科学を変革したコンピューター技術10選」


天文学から動物学に至るまで、現代の偉大な科学的発見にはコンピューターが必要不可欠なです。科学誌「Nature」が「科学を変革したコンピューター技術10選」を発表しています。

Ten computer codes that transformed science
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00075-2

◆1:プログラミング言語のパイオニア「FORTRAN」
最初期のコンピューターは決してユーザーフレンドリーなものではなく、パンチカードを使用して手作業でコードを入力していました。コードの記述には複雑なプログラミング言語の知識が必要でしたが、1950年代にIBMによって開発されたFORTRANの登場により、プログラミング言語で記述されたプログラムをコンピューターが実際に処理できる言語に容易に変換することが可能になりました。

◆2:高速フーリエ変換
1805年、カール・フリードリヒ・ガウスによって考案された高速フーリエ変換と呼ばれるアルゴリズムは、時間と共に変化する複雑な信号を高速で処理することを可能にします。このアルゴリズムは、複雑な電磁波の性質を理解するために周波数を関数に置き換えて可視化する必要がある電波天文学をはじめとする科学分野で、デジタル信号処理や画像分析などに広く使用されています。


◆3:生物学的データベース
昨今の大規模なゲノムやタンパク質のデータ分析、データ保存のシステムはバイオインフォマティクスのパイオニアであるマーガレット・デイホフ氏の研究に端を発しています。1960年代に生物学者がタンパク質のアミノ酸配列解析に着手したとき、デイホフ氏らはデータをパンチカードに記録、エンコードしたことによって、データベースの検索を容易にしたといいます。現在では1971年に稼働が開始した蛋白質構造データバンクや、1982年に稼働が開始したGenBankなど、さまざまな分野でデータセットが使用されています。

◆4:大気循環モデル
第二次世界大戦の末期、コンピューターのパイオニアであるジョン・フォン・ノイマンは弾道軌道と兵器設計に使用されていたコンピューターを使って天気予報の改革に取り組みました。それまで天気は経験と勘によって予測されていましたが、ノイマンは天気のデータを「大気モデル」「海洋モデル」などいくつかのモデルごとに構築し、コンピューターで分析することで予測精度を高めていきました。


◆5:BLAS
科学技術上の問題などを解決するための技術Basic Linear Algebra Subprograms(BLAS)は主に数学的演算に使用されるもので、1979年に開発されました。この技術により、ベクトルと行列の演算が標準化されて足し算レベルに容易になったとNatureは述べています。

◆6:NIH Image
1980年代にアメリカ国立衛生研究所(NIH)の脳画像検査室で働いていたウェイン・ラスバンド氏は、X線フィルムをコンピューターで表示・分析するためのプログラムを考案しました。NIH Image呼ばれたこのプログラムはMac OSのみで動作しましたが、後にNIHによってImageJと呼ばれる高度な画像処理システムへと進化を遂げ、現在では他のOSでも使用されています。

◆7:BLAST
1978年、マーガレット・デイホフ氏はDNAやタンパク質の一次構造の類似性や関連性を特定するための「ポイントアクセプトミューテーション」というシステムを考案しました。これは後により高速・高精度に進化したBLASTとなり、当時の遺伝子生物学の分野に革新をもたらしたとNatureは述べています。

◆8:arXiv
1980年代後半、科学者の研究内容は狭いコミュニティ内だけで共有されるのが一般的でした。しかし1991年、ロスアラモス国立研究所で働いていた物理学者ポール・ギンスパーグ氏は研究内容を広く共有できる新たなシステムを考案します。このシステムは科学関連の論文や記事を登録者に向けて配信するもので、物理学コミュニティに限定されていたそれはその後全ての学問向けに公開され、1998年にarXiv(アーカイブ)と名前を変えて発展を続けます。2021年時点ではおよそ180万報もの論文が記録されており、全て無料で公開されています。


◆9:IPython Notebook
プログラミング言語の1つであるPythonはソースコードないし中間表現を逐次解釈しながら実行するインタプリタ型のもの。物理学者のフェルナンド・ペレス氏は、「1行ずつ実行されるこの言語は科学研究に必要なモジュールのプリロードやデータの視覚化などに適していない」と考え、独自のシェルIPython」を考案しました。このシェルは後に「IPython Notebook」と名前を変えてオープンソース化され、データサイエンスの分野に革命を起こしたとNatureは述べています。

◆10:AlexNet
人工知能(AI)は「1つの体系化されたルールを使用するもの」と「機械学習により情報処理を行えるもの」の2つに大別されます。トロント大学の大学院生であったアレックス・クリゼフスキー氏とイリヤ・サッツケバー氏は2015年、機械学習による画像認識プログラム「AlexNet」を開発、大量の画像をプログラムに分類させるコンテスト「ImageNet」当時最高のアルゴリズムでもおよそ25%のエラーを排出していたものを、AlexNetは15%のエラー率に収めることに成功しました。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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