金星の火山活動は「休止しているだけで止まっていない」、活動中の場所が初めて特定される
金星ができたのは約46億年前であり、火山活動は過去には活発だったものの、現代における活動規模がどれぐらいなのかははっきりとわかっていませんでした。しかし、新たに研究者が、金星で火山活動が起こっている場所を特定し、「金星の火山活動は終わったのではなく、休止しているだけ」であることを示しました。
Corona structures driven by plume–lithosphere interactions and evidence for ongoing plume activity on Venus | Nature Geoscience
https://www.nature.com/articles/s41561-020-0606-1
The Venus 'ring of fire' | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-07/ez-tv072120.php
Scientists discover volcanoes on Venus are still active
https://phys.org/news/2020-07-scientists-volcanoes-venus.html
研究を行ったのはメリーランド大学とチューリッヒ工科大学・地球物理学研究所の研究チーム。論文の共著者である地質学教授のLaurent Montesi氏は「特定の構造を示して『これは古代の火山ではなく、休止しているだけの活動中の火山です』と示すことができたのは、これが初めてです」「この研究は私たちの持つ『ほとんど活動していない惑星』という金星の見方を、『内部は激しく動き、活火山を育てている』という風に変えています」と研究について述べました。
惑星の表面にはコロナと呼ばれるリング状の構造物が点在しています。コロナは惑星の深部にあるプリュームという高熱の物質が地表に上がってきたときに形成されるもの。地球でもハワイ諸島には同様にして形成された「マントルプリューム」が存在します。プリュームは惑星内部が熱くないと生まれないため、「金星は、内部が冷たい火星や水星よりも、地表が新しいのではないか」とこれまでも研究者は考えてきました。
以下が金星上のコロナ。
一方で、金星のコロナは古代の活動の名残だろうとも考えられてきました。金星は気温が低いため、惑星内部の地質学的活動がスローダウンし、内部の物質も固まっているだろうと推測されたためです。
新しい研究では、3Dシミュレーションを使用して、プリュームによってコロナの構造がどのように変化するかが調査されました。この結果、「コロナの地形がプリュームの衝突する場所の地層の厚さや硬さに左右されること」、そして「コロナの地形は地下のマグマの活動と直接関係していること」が示されました。
さらに、上記の観察から、金星に存在する100以上のコロナが「現在進行形で上昇し溶けた物質を運ぶプリュームの上に作られたもの」と「すでに冷却され不活性になったプリュームの上に作られたもの」の2つに分類できることがわかりました。
この分類に従って全てのコロナを金星上にプロットしたところ、「活動中のプリュームの上で形成されたコロナ」は金星の南半球で帯状に分布していることがわかりました。活動中のプリュームは37個で、全体のごく一部ではあるものの、地球における環太平洋火山帯のようなものだと考えられています。
今回の研究は、惑星内部の仕組みを理解する重要な手がかりとなるとのこと。2032年には欧州宇宙機関(ESA)が金星の地質学的調査を目的としたEnVisionというミッションを行う予定となっていますが、今回の研究結果はミッションにおいて重点的に調査すべき場所の特定に役立つとみられています。
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