「新型コロナウイルス感染症などあらゆる難病を治癒する液体」と称して業務用漂白剤を販売した新興宗教団体に政府が激怒
アメリカ食品医薬品局(FDA)が、新興宗教団体のGenesis II Church of Health and Healing(健康と癒やしのジェネシスII教会)が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などあらゆる病気に効く」と称して業務用漂白剤を販売するのをやめさせるように連邦裁判所に訴え、ジェネシスII教会に対して販売の差し止め命令が下されました。
UNITED STATES DISTRICT COURT SOUTHERN DISTRICT OF FLORIDA CASE NO.: 1:20CV21601
(PDFファイル)https://www.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.flsd.569990/gov.uscourts.flsd.569990.1.0_2.pdf
Coronavirus (COVID-19) Update: Federal judge enters temporary injunction against Genesis II Church of Health and Healing, preventing sale of Chlorine Dioxide Products Equivalent to Industrial Bleach to Treat COVID-19 | FDA
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/coronavirus-covid-19-update-federal-judge-enters-temporary-injunction-against-genesis-ii-church
“Church” claims bleach is coronavirus-curing “sacrament,” faces wrath of FDA | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2020/04/church-of-bleach-ordered-to-stop-selling-bleach-as-covid-19-cure/
健康と癒やしのジェネシスII教会(以下、ジェネシスII教会)は、「私たちは世界に『健康を取り戻す』ことを目的としており、『崇拝の目的ではなく人類に奉仕する目的で結成された非宗教的な教会』です」と述べています。創設者は新興宗教団体・サイエントロジーの元信者であるジム・ハンブル氏で、「アンドロメダ銀河からはるばる地球にやってきた10億年前の神」を自称し、ジェネシスII教会の大司教を務めています。
また、ジェネシスII教会は、20年近くにわたってMiracle Mineral Solution(MMS、奇跡のミネラル溶液)と称する液体を、4オンス(約120ミリリットル)で11ドル(約1200円)から15ドル(約1650円)という価格で販売していました。ジェネシスII教会はウェブサイト上で「MMSは新型コロナウイルス感染症の治癒・緩和・予防に役立つ」「MMSはアルツハイマー病や自閉症、脳がん、エイズ、多発性硬化症など、他の難病も治すという証言もある」と主張。ジェネシスII教会はMMSの中身が28%の亜塩素酸ナトリウム水溶液であることを明らかにしており、「MMSにレモンやライムの汁などの酸を加えて飲むことで体内の病原体が死滅する」とうたっていました。
亜塩素酸ナトリウムは業務用の漂白剤や酸化剤として使われる物質で、ごく少量であれば食品添加物や消毒剤にも使われるものですが、多量に摂取すると人体に害を与えます。また、亜塩素酸ナトリウム水溶液にクエン酸を混ぜると、パルプの漂白やプールの殺菌に使われる二酸化塩素が発生。二酸化塩素は新型コロナウイルスの除菌をうたう製品にも使われることがありますが、その有効性は疑問視されている上に、生体への毒性も指摘されています。
FDAはMMSに対して以前から懸念を表明しており、2019年8月には「MMSは危険で、命に関わる副作用があります。MMSを摂取したことで重度のおう吐や下痢、脱水症状、致命的なレベルの低血圧、急性肝不全を訴えるケースが複数報告されています」と警告していました。
一方、ジェネシスII教会はFDAから2020年4月8日に最終警告が送られた際に「私たちの聖なるMMSは、どんな使い方でも危険性はなく、『FDAやアメリカ環境保護庁(EPA)が承認するさまざまな製品と同様に』命を脅かすものではない」「MMSが漂白剤であるという指摘には異議を唱える。MMSは、食料品店で買えるような、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする漂白剤とは同じではない」と反論していました。
しかし、今回のCOVID-19パンデミックにもジェネシスII教会が乗じてきたため、FDAは訴訟に踏み切った模様。FDAは声明の中で「新型コロナウイルスの大流行と全国的な緊急事態体制のまっただ中で、『フロリダ州に拠点を置く非宗教的な存在』である被告は、COVID-19の救済策として消費者に強力な業務用漂白剤を販売し、危機を悪用している」と主張しています。
連邦裁判所による販売差し止め命令後、ジェネシスII教会のウェブサイトからMMSを購入することができなくなっています。ジェネシスII教会は「MMSは販売しているのではなく、寄付と引き換えに配布しているに過ぎない」と主張し、「『我が国は緊急事態宣言にあるのでFDAの訴訟は正しい』とは二度と言わないでほしい。神の命令を無効化するような緊急事態などあり得ない。特に宗教活動の自由に関しては!」と述べました。
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