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呼吸困難・熱なし・胸の痛みというCOVID-19症状を持つ人が「何を経験し、恐怖をどのように遠ざけたのか」をつづる


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者は増加傾向にありますが、医療圧迫の問題もあり、体調が悪くても1人自宅でただ耐えている人も存在します。ほとんど外出せずに過ごしていたにも関わらず「熱なし・胸の痛み・呼吸困難」という症状を2週間近く抱えることになったジョシュア・ワイスバーグさんが、体調不良の中で何を感じ、襲い来る恐怖とどのように戦っているのかをつづっています。

Fear and beauty: two weeks living with COVID-19 – Hierarchy of Seeds
https://joshuaweissburg.com/2020/04/12/fear-and-beauty-two-weeks-living-with-covid-19/

2020年4月4日、ワイスバーグさんは39歳の誕生日を迎えた土曜日の朝に、胸の苦しさを感じながら起床しました。起床直後のワイスバーグさんは呼吸1つ1つが難しく、熱はありませんでしたが、「誰かが夜の間に自分の肺を旧型に差し替えたような感覚で、変な呼吸でした」とのこと。その後、乾いたせきが出始め、肺に痛みが走ったことから、ワイスバーグさんはウイルスに感染したと悟りました。

ワイスバーグさんが暮らしているコロラド州ボルダー郡では当時、新型コロナウイルス感染症の症例が150件報告されていました。ワイスバーグさんはそれ以前の2週間にわたってほとんど家から出ず、散歩をしたり、食料品店に行ったり、テイクアウトの食べ物を取りにいくついでにランニングするだけの生活を送っていました。手洗いはしっかりと行い、顔を触らないようにしていたワイスバーグさんは、ウイルスに感染してしまったことを悟り、まず最初に怒りが沸いてきたそうです。


症状が出始めてから3日が経過しても、胸の苦しさは取れませんでした。呼吸の不快さから、ワイスバーグさんは短く呼吸するようになったとのこと。トイレに行くためにベッドから起きると心拍数は安静時に比べて35%増加し、元に戻すには慎重に呼吸を繰り返す必要があったといいます。

その後、友人の1人がCOVID-19の患者と会話したと聞き、その患者の症状を聞いたところ、ワイスバーグさんの症状と酷似していることが判明しました。自分のこれから経験するであろうことを先に経験している人の話は大きな助けになったとワイスバーグさんは述べています。また、救急救命室の友人から病院に行くタイミングを含めたガイドラインを教えてもらい、「もし酸素が取り入れられないならばすぐに病院に行くべきだ」という助言を受けたとのこと。


通常時であれば体調不良になれば病院に行くワイスバーグさんですが、医療システムへ負荷をかけてしまうことを恐れて3日間は病院にいくという決断ができませんでした。自分の体や社会、コミュニティの弱さを目の当たりにし、行動のガイドラインも相談する専門家も存在しない状況で自信を失い、自分の状況が人工呼吸器が必要なほど悪いのか、そうでないかが判断できなかったためです。

しかし、その後、友人の助けを借りてワイスバーグさんは救急救命室に運ばれることに。自分では気づかないうちに症状は一線を越えていたのです。

救急救命室に到着した時、ワイスバーグさんは医療関係者に対して申し訳のない気持ちでいっぱいだったとのこと。トリアージを行う看護師からできる限り離れ、つま先を見つめながら質問に答えていたワイスバーグさんでしたが、患者用のIDを作るため近づいてくれと言われて少し前に出ると共に腕をできるだけ突き出しながら顔を背けました。看護師に深刻な声で「息をしないで」と言われて何かルールを破ったかと思ったワイスバーグさんが顔をあげると、看護師はウインクをすると共に冗談っぽく笑ったそうです。その瞬間、ワイスバーグさんは涙が次から次へとあふれてきたと語っています。

その後、看護師は血中酸素濃度・血圧・病歴といったワイスバーグさんの情報を集め、「宇宙飛行士のような」スーツに身を包んだ医師が呼吸困難と痛みのレベルを評価しました。医師は「あなたは正しい行いをしました」とワイスバーグさんに告げ、「現時点では酸素は必要ないので、吸入器とせきの薬を渡します。症状が続き、午後に悪化するようであれば、呼吸がひどくなる前にすぐに来てください。ではこれで家に帰れますよ」と語りました。


到着してから30分程度に帰宅したワイスバーグさんでしたが、救急救命室に行ったことで最も有益だったのは「自分がサポートされている」と実感することができたことだと語っています。家で医療圧迫の記事を読んでいた時の孤独・絶望・悲しみではなく、病院では人の優しさを感じられたといいます。

ワイスバーグさんが経験した身体的な症状は痛み・圧迫感・うずき・動悸(どうき)などでしたが、頭の中では孤独や無力感、恐怖などがよぎり続けたそうです。ワイスバーグさんは恐怖の例として「想像上の虎の話」を挙げています。これは、頭の中で虎を描くことに夢中になった女性が、鋭い牙や爪を鮮明に思い浮かべるうちに、虎に対する恐怖で鼓動が速くなり恐怖におののくようになったという話。女性が再び平静を取り戻したのは「虎に食べられる可能性はない」と考えることではなく、「この虎は想像上のものだ」考えたことがきっかけでした。


虎の例から学んだワイスバーグさんは、自分が頭の中で「新型コロナウイルスを必要以上に恐ろしいもの」としていることに自覚的になり、できる限りイメージを抱かないように試みました。しかし、この試みは逆効果で、より鮮明に新型コロナウイルスについて想像を膨らましてしまうことにつながったとのこと。これは「禁止されるとかえってやりたくなる」というカリギュラ効果の1つであるため、ワイスバーグさんは路線を変更。自分の体が感じていることに注意を向けると、恐怖の想像が止まることに気づいたワイスバーグさんは、体が感じていることに集中するようになります。

それでも恐怖が収まらない時、ワイスバーグさんは自問自答を行うようになりました。「人工呼吸器が必要か?」という問いに「わからない」と答え、「なぜ人工呼吸器を保証する必要があるのか?」という問いに「生き延びる可能性が高まるから」と答え、「病院で人工呼吸器をつけて病院で横になると死ぬ可能性はないのか?」という問いに「死ぬ可能性はある」と答えました。

さらに、「39歳の誕生日から数日で死ぬことの、何が耐えられないのか?」という問いに、ワイスバーグさんは「自分が何者なのか、最近気づいたばかりであり、ようやくオートパイトロットから抜け出して自分で目的地に向かうようになったのに、これで運転が終わるなんて耐えられない」と答えました。そして、「自分が何者かについて、何を学んだのか?」という問いに対し、「呼吸できていることや、戦っている体に感謝できること。自分を心配して食事を作ってくれる友人や、スープを送ってくれる姉、ウインクを送ってくれる看護師に感謝できること。自分が人々の優しさに見合う人間だと示し、家族に愛していると伝えられること」と答えることで、自信を取り戻すことができたとのこと。ワイスバーグさんは「恐怖と戦おうとする限り心は恐怖に捉えられる」として、まずは自分の心と体に思いやりを持つことが大切だと述べました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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