2020年04月01日 06時00分メモ

日本が公開する新型コロナウイルス感染症レポートは何が問題なのか？

厚生労働省は新型コロナウイルスの感染情報を日々発信していますが、この情報が非常に分かりづらいという問題点があります。ダッシュボードで可視化したデータを公開している国も存在するなか、日本の情報の問題点ををエンジニアのSangwhan Moonさんが指摘しています。

Japan's COVID-19 Reports - 140KBs of Unadulterated Incompetence
https://stdio.sangwhan.com/wtf-japan-covid-19-report/

Moonさんは厚生労働省が公開する「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年3月27日版)」とその英語版で使用されているデータについて言及。まずMoonさんはレポートで使われているテーブルがテキストベースではなく画像であり、代替テキストも用意されていないために、読み上げソフトなどを使って音声で情報が得られないという点を指摘しています。

そして、Moonさんはテーブルが擬似階層であることも分かりづらさを増す要素になっていると述べています。

このテーブルを分解すると、以下のレベルにわかれています。

レベル1：
PCR検査陽性、PCR検査済み
レベル2：
無症状、症状あり、症状確認中、死亡
レベル3：
症状あり／退院済み、症状あり／要入院・治療、症状なし／退院済み、症状なし／要入院・治療
レベル4：
そのほか

このテーブルからPCR検査陰性は除外されていますが、その値は「PCR検査実施人数－PCR検査陽性者」で求められると考えられます。しかし、理想をいえば「PCR検査実施人数」をレベル0に設定し、「PCR検査陽性」と「PCR検査陰性」がレベル1になっているべきだったとのこと。

また上記の表でレベル2は「PCR陽性」(1349人)＝症状なし陽性(131人)＋症状あり陽性(1191人)＋確認中(27人)で構成されています。このとき、レベル2、レベル3、それ以降において死者数は含まれません。このため、レベル3つまり「陽性／有症状者」(1191人)は、「症状あり／退院済み」(319人)＋「症状あり／要入院・治療」(828人)で計算されるものの、合計が1147人になってイコールとなりません。

このテーブルの分かりづらさは、他のチャートと併せてみると、さらに増します。厚生労働省のレポートでは、なぜか世界各国の発生数を記した長い表の下に……

都道府県別の感染状況の表があります。「なぜ世界の感染状況の下に日本各地の表があるのかはわからない」とMoon氏はコメント。表を見てみると、例えば東京都は患者数／227人、現在は入院等／194人、退院数／28人、死亡者／5人となっていますが、今回は患者数227人に死亡者数を含みます。最初の要約表に死亡者数を含まず都道府県別の表に死亡者数を含む理由については不明とのこと。

そして、この都道府県別の総計を見てみると、患者数／1191人、現在は入院等／828人、退院数／319人、死亡者／46人となっていますが、828＋319＋46＝1193で、1191人という数にはなりません。最初のテーブルでPCR検査陽性／症状ありの患者が1191人と示されていましたが、前述したように、ここに死亡者数は含まれないため、死亡者数を含む各都道府県の患者数とは矛盾が生じます。

一方で、各都道府県の患者数を示すチャートには「無症状病原体保有者を除く」と書かれています。このことに留意して最初のテーブルをもう一度確認すると、PCR検査陽性(1349人)－PCR陽性／無症状(131人)－確認中(27人)＝1191人になります。このように、一見しただけではグラフが読み取れないという点が問題だとMoonさんは指摘しているわけです。